夕餉添えの贄

琴里 美海

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第参拾八話

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 薄ら雪の積もる山の中で、私は麓の村が見える所に立って景色を眺めていた。とは言っても雪のせいで殆ど何も見えませんが。
 あれから、暁光さんがいなくなってからもう何年も経ちました。私もそれなりに背が伸びて、一応大人になりました。

「暁光さん………………」

 寂しいです。

 背後から音が聞こえると私はすぐに振り返った。其処には黒い人の形をした何かが、不気味に笑いながら私を見ていた。

「ッ!!」

 私は腰を抜かしてその場に尻餅を突いてしまった。
 ソレは少しずつ私に近付いて来ると、私はすぐに逃げた。だけど腰を抜かしている状態で逃げても、全然逃げられない。
 腕を引っ張られると私は目を強く瞑った。
 パァン、と軽い音が聞こえると腕を掴まれる感覚が消え、私は恐る恐る目を開いた。
 目の前には真っ白い髪の少女が立っていた。

「氷柱ちゃん大丈夫ずらか?」
「槿花さん。」

 瑞光さんにお薬を飲まされてから相当美味しそうになったのか、ほぼ毎日の様にさっきの様な妖かしに襲われるようになり、何時も槿花さんに守ってもらっています。雀さんと鳩さんがいる時はお二人も助けてくれます。だけど皆さんの負担を増やしてしまっている為に申し訳無くて仕方が無い。
 槿花さんは私に手を差し出すと、私はその手を掴んで立たせてもらった。

「えっと、怪我とかはしてないずらね。良かったずら。」

 槿花さんは大分大人らしくなって、前の様に外で遊ぼうと強請って来る事な無くなった。少し寂しい気がしますが。

「一緒に帰るずらよ。」
「あ、はい。」

 槿花さんは私の手を引っ張って家へ向かった。
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