朱夏の日光に栄える森

琴里 美海

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第弐話

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 そんな日々を過ごしていたある日。その日は単なる宴会だった。私以外の青龍や四神達もいて酒を飲んでいた。とは言っても、私はそんなに酒には強くないから、少ししか飲んでいなかったんだけどね。

「そう言えば、あの鳳凰は今どうなっているんだ?」

 誰かのそんな一言から、視線が一斉に私に向く。別に私は彼の保護者じゃないのに、如何してそう瑞光と言えば私、と言う考えになるのかな。まぁ彼の名付け親だし、それに何だかんだ一緒にいる事が多いから、仕方が無いと言えば、うん、仕方が無いね。

「うーん、特に何も変わらずだよ。」

 私の一言を聞いて他の者達から溜め息や落胆の声が漏れる。いや、あの、そんな事するなら、自分達で何とかして。私は彼の保護者じゃないよ。

「聞いた所によると、彼に届く願いは殺しの物ばっかりらしいけど、それは本当?」
「本当だよ。そもそも殺しの願いから生まれているんだから、当たり前っちゃ当たり前だよ。」

 まぁ、本人は望んで叶えている節があるけど。

「それにしても如何したものか。」
「いっそ別の国に移してみたら?隣の島国とか、八百万の神がいるし、人間達の信仰心も強いみたいだから、何か変わるんじゃないかな。」

 あ、誰だか分からないけど、結構好き勝手な事言ってる。と言うか、それってつまり、この国で好き勝手されると面倒だから、他国に押し付けようって、そう言う考えなんじゃないのかな。
 私以外のその場の皆が賛成している。あぁ、瑞光がこの場に居なくて良かったよ。居たら何かしら問題を起こしそうだ。
 それにしても、例え八百万の神の国だとしても、他国の神を受け入れるなんて、そんな事をするんだろうか。

「じゃあついでにこの国の神の信仰も集めようか。」

 ほらもう、また勝手な事ばっかり言って。

「四神の中から一柱ずつで良いか。あ、恵風、お前強制な。」
「え!!?」

 唐突にそんな事を言われて、私は持っていた湯飲みを落としそうになった。

「何をそんな驚いているんだ。」
「お前以外に誰が瑞光の面倒を見るんだ。」

 うん、知ってた。と言うかそれ以外の理由が全く思い付かなかったから。あぁ、少し前の他人事の様に話を聞いていた自分に一言、君は当事者だって言ってあげたいよ。

 そんな訳で、私は瑞光と共に島国へと渡る事になった。
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