23 / 45
第弐拾参話
しおりを挟む
焦げ臭い。この臭いは間違い無く火が何かを焼く臭いだ。
私と朱夏はお互いを見て、すぐに臭いのした方へ走った。
暫く走って行くと、森が山の麓の方から灯りが見えた。
「これは………」
確かこの方向は朱夏のいた村がある方とは違う。もしかしてだけど、先程の男性が居る村でもあるのか。男性の話していた内容からして、明らかに妖怪だとかに友好的じゃない。
「おい恵風これ如何すりゃ良いんだ!!?」
「如何と言われても。」
結構な火の量だ。少しだったら私が強風を吹かせれば消えるかもしれないけど、この量だったら余計に火の勢いを強めてしまう。だからと言って、このまま森の中にいたら、焼死しかねない。
一瞬朱夏の生まれた村に行こうかと思ったけど、それは朱夏が嫌がるだろう。
「あ、そうだ。」
前に色葉ちゃんが言っていた事を思い出した。
「森の妖怪側に逃げよう。」
「え、向こうに?」
妖怪側には境界線を越えただけで簡単に出入り出来るけど、実は殆ど別の世界に行っている様な物なんだ。だから人間側の森で火事が起きても、とある事が起きなければ妖怪側はほぼ無傷らしいんだ。
それを説明して、私は朱夏の手を引いて森の中を走った。
妖怪側に飛び込んだ瞬間、私は朱夏を抱えて空を飛んだ。
薄暮の館の前へ降りると、すぐさま館の中に飛び込んだ。結構な音がして、驚いた様子の色葉ちゃんが走って来た。
「如何したの!?」
朱夏を降ろすと、色葉ちゃんに外での事を説明した。それを聞いた色葉ちゃんは、相当焦った様子で館から出て行った。色葉ちゃんの事は気になるけど、今は館の中で大人しくしている事にした。
「なぁ、本当に大丈夫かな。」
客間で色葉ちゃんが帰ってくるのを待っている間、朱夏がそう聞いてきた。大丈夫だとは思うけど、それにしても色葉ちゃんは一体何をあんなに焦っていたんだろう。妖怪側の森の中は、今何か起きている様子でもないし。
結構時間が経って館の扉が開く音が聞こえると、私は立ち上がって玄関へ向かった。開いた扉の向こうには、明らかに何かあったと分かる、愕然とした様子の色葉ちゃんが立っていた。
「い、色葉ちゃん?」
私が声を掛けると、色葉ちゃんはゆっくりと私を見た。
「恵風、如何しよう…………」
一言そう言った瞬間、色葉ちゃんの瞳から大粒の涙が流れ始めた。
突然の事で驚いた私に色葉ちゃんが飛び付いた。
「森が、森が…………音葉がぁ…………」
「え?」
初めて聞く名前が出て来て私は困惑した。この子が泣いている理由は一体何なんだろう。だけど結構な長い時間一緒にいて、色葉ちゃんの涙を私は初めて見た。それ程にこの子にとっては相当な事が起きたんだ。
朱夏が様子を見に来ると、泣いている色葉ちゃんを見付けて、驚いて駆け寄って来た。
「おい如何したんだよ!!」
「いや、私も何が何だか。」
私は今は色葉ちゃんの背を擦る事しか出来なかった。
私と朱夏はお互いを見て、すぐに臭いのした方へ走った。
暫く走って行くと、森が山の麓の方から灯りが見えた。
「これは………」
確かこの方向は朱夏のいた村がある方とは違う。もしかしてだけど、先程の男性が居る村でもあるのか。男性の話していた内容からして、明らかに妖怪だとかに友好的じゃない。
「おい恵風これ如何すりゃ良いんだ!!?」
「如何と言われても。」
結構な火の量だ。少しだったら私が強風を吹かせれば消えるかもしれないけど、この量だったら余計に火の勢いを強めてしまう。だからと言って、このまま森の中にいたら、焼死しかねない。
一瞬朱夏の生まれた村に行こうかと思ったけど、それは朱夏が嫌がるだろう。
「あ、そうだ。」
前に色葉ちゃんが言っていた事を思い出した。
「森の妖怪側に逃げよう。」
「え、向こうに?」
妖怪側には境界線を越えただけで簡単に出入り出来るけど、実は殆ど別の世界に行っている様な物なんだ。だから人間側の森で火事が起きても、とある事が起きなければ妖怪側はほぼ無傷らしいんだ。
それを説明して、私は朱夏の手を引いて森の中を走った。
妖怪側に飛び込んだ瞬間、私は朱夏を抱えて空を飛んだ。
薄暮の館の前へ降りると、すぐさま館の中に飛び込んだ。結構な音がして、驚いた様子の色葉ちゃんが走って来た。
「如何したの!?」
朱夏を降ろすと、色葉ちゃんに外での事を説明した。それを聞いた色葉ちゃんは、相当焦った様子で館から出て行った。色葉ちゃんの事は気になるけど、今は館の中で大人しくしている事にした。
「なぁ、本当に大丈夫かな。」
客間で色葉ちゃんが帰ってくるのを待っている間、朱夏がそう聞いてきた。大丈夫だとは思うけど、それにしても色葉ちゃんは一体何をあんなに焦っていたんだろう。妖怪側の森の中は、今何か起きている様子でもないし。
結構時間が経って館の扉が開く音が聞こえると、私は立ち上がって玄関へ向かった。開いた扉の向こうには、明らかに何かあったと分かる、愕然とした様子の色葉ちゃんが立っていた。
「い、色葉ちゃん?」
私が声を掛けると、色葉ちゃんはゆっくりと私を見た。
「恵風、如何しよう…………」
一言そう言った瞬間、色葉ちゃんの瞳から大粒の涙が流れ始めた。
突然の事で驚いた私に色葉ちゃんが飛び付いた。
「森が、森が…………音葉がぁ…………」
「え?」
初めて聞く名前が出て来て私は困惑した。この子が泣いている理由は一体何なんだろう。だけど結構な長い時間一緒にいて、色葉ちゃんの涙を私は初めて見た。それ程にこの子にとっては相当な事が起きたんだ。
朱夏が様子を見に来ると、泣いている色葉ちゃんを見付けて、驚いて駆け寄って来た。
「おい如何したんだよ!!」
「いや、私も何が何だか。」
私は今は色葉ちゃんの背を擦る事しか出来なかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる