朱夏の日光に栄える森

琴里 美海

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第四拾四話

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 館に着いて、色葉ちゃんに手紙で怒られた事を伝えた。

「怒られたんだ。」
「うん、怒られた。」

 何だかんだ一ヶ月も経っていたんだなぁ。そりゃまぁ怒られても仕方が無いね。今回ばかりは私が悪いよ。

 別に荷物がある訳じゃ無いから、私は少しして出発する事にした。
 出発するとなったら、色葉ちゃんが見送ってくれた。

「それじゃあ行ってくるね。」
「行ってらっしゃい!」

 私は空を飛ぶと、そのまま境界線を越え、陸上から出て海の上を飛び、随分と懐かしい大陸が見えてきた。
 大陸の、それも私の生まれた国に到着すると、大きく深呼吸をした。いやぁ、実に懐かしい空気だ。あの国の空気とは全く違う空気だ。やっぱり国が変われば空気も変わるね。因みにどちらも好きな匂いだ。
 あの世の仲間達の所へ行くと、何故か随分と忙しそうだった。

「あぁ恵風戻ったか!!最近人間達の願いの量が多すぎて追い付かないんだ!!!」
「あ、はーい。」

 成程、詰まり私は相変わらずの使いっ走りらしい。

(出世したい。)

 なんて、四神にこれ以上出世なんて物があるとは思えないけどね。
 私は大きく深呼吸をした。その瞬間、願いの声が一気に脳内に流れ込んで来た。あ、この感じ久しぶりだなぁ。向こうの国に行ってから全くそんな声聞いてなかったから。
 それにしても随分と多いな。それに作物を育てる神は、四神の中だと数が限られてくるから、そりゃ呼ばれるよね。

 何だかんだと願いを叶え続けて、気が付いたら何年と月日が経っていた。
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