大雪の中咲く一輪華

琴里 美海

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第弐拾八話

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 見た目や性格に似合わず、暁光の淹れる茶は実に美味である。それに暁光の作る料理もこれまた絶品であり、一度食べるとついまた食べたくなってしまう。

「やはり美味じゃのう。それにしても茶だけで良かったと言うのに。」
「良いんだよ、どうせ来るだろうと思ってたから。」

 確かに群れから完全に離れた妾が行く所等、後は暁光の家くらいじゃからのう。いい加減にまた鳥の姿を見せてくれても良いと思うだが、中々見せてはくれぬのじゃ。

「で?一日泊まったんだろ?何かしたのか?」
「うむ、ちと機を織ってのう。」
「機ねぇ、つーかお前機織れるんだな。」
「失敬な、妾はある程度の事はこなせる。」

 家事も出来れば芸事だって出来る、この様な口調で話すと何故か勘違いされるが、妾は別に箱入り娘等ではないのじゃ。幼い頃から空を眺めてはおるが、人の子と同じ様に雨の中泥だらけになりながら遊んだ事だってあるのじゃ。

「んで?出来たもんは如何したんだよ。」
「彼にあげたに決まっておろう。売って生活の足しにする様にも言うた。」
「へー、自分の羽で作ったもんをよく売る様に言えるよな。」
「彼が生活しやすくなるのであれば、妾はそれで構わぬ。」

 決して嘘は言ってはおらぬのに、暁光は妾を疑っておる。全く、裏等無いわ。これは妾の本心じゃ。それに、この場において妾が嘘を吐く理由と利益があるとは思えぬ。
 今頃霰は町へ行き、商人に布を売っておるのかのう。あれは中々の出来であったから、結構な値段が付くのではないだろうか。まぁ、そうでなくとも少しでも霰の下に金が入り、生活が楽になるのであればそれで良かろう。

「のう暁光、今日は泊まっていっても良いかのう。」
「何言ってんだお前、何時も宿として使ってるくせに。」

 随分と嫌そうな顔をして暁光がそう言うと、妾はそんな顔をさせている事が楽しくて笑った。
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