黎明の天泣

琴里 美海

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第壱拾七話

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 再び明るくなると一瞬匂いがした。それは暁光さんの家の匂いではなく、完全に知らない場所の匂いだった。
 鶴さんの振り袖から顔を出そうとしたけど、鶴さんがそれを防いでしまって出られなかった。

「随分と荒い出迎えじゃのう、白鳥よ。」
(え、白鳥さん?)

 如何して白鳥さんが?と言うか出迎えってどう言う事なんでしょうか。

「久しぶりね鶴、相変らずね。本当に昔からいけ好かない所は変わってないわね。」

 あれ、先日来た時と口調が全くと言って良い程違う気が。そんな事より如何して鶴さんが目の前にいるんですか。あれ、いや私達が白鳥さんの前に来たって言った方が正しいんじゃ。ん?いや連れて来られた?

「見事に見計らったのう。まさか暁光がおらず、完全に油断していたこの時を狙うとは思っておらんかった。」
「ふん。」

 凄い勢いで襖が開閉する音が聞こえると、鶴さんは大きく溜め息を吐いて私から少し離れた。

「氷柱、大丈夫かえ?」
「あ、はい。あの此処って…………」
「まぁ察しはついておるだろうが、白鳥の住処じゃ。」

 はい、そんな気しかしていませんでした。
 再び凄まじい開閉音が聞こえて襖の方を見た。

「あれ、誰それ。まぁ良いや。」

 そう言って私と鶴さんの目の前に投げたのは、傷だらけになっている雀さんだった。

「雀さん!!?」
「雀!!!」

 私は慌てて雀さんの肩を揺すった。

「ったく、そいつ帰って来たのは良いものの、全然情報渡さないんだよ。情報屋の癖に情報渡さないってどう言う事なのよ。」

 そう言って雀さんを睨んで来た。

(雀さん……………)

 如何してこんなになるまで黙っていたんですか。
 鶴さんは立ち上がると私達の前に立った。

「それで、妾を此処に連れ来たのじゃ。」
「そんなのあんたを此処に閉じ込めておくからに決まってるでしょ。」
「何故じゃ。」
「あんたが居なくなればきっと暁光様はあたしの事見てくれるでしょ。」

 酷く歪んだ感情を持っている人を暁光さんは見てくれるとは思えないんですが。と言うより肝心の暁光さんは今一体。
 そんな事を考えていると、白鳥さんが大きく溜め息を吐いた。

「取り合えずあんたは此処に閉じ込めさせてもらうから。勿論人質だっているし。」
「ふむ。」

 鶴さんは少し困った様子で考え事をしていた。

「………………まぁ、仕方が無いのう。それで?何処に閉じ込める気なんじゃ?」

 鶴さんがそう質問すると、白鳥さんはこっちに歩いて来て雀さんの服を掴んだ。

「取り合えず付いてきなさい。」
「あ、雀さん。」

 白鳥さんは雀さんを引き摺って部屋から出て行った。その後ろを鶴さんは付いて行った。

「あの、鶴さん。」

 私も慌てて後を付いて行こうとしたけど、白鳥さんに止められた。

「氷柱、そなたは此処で大人しくしておれ。」
「え、いや、私は……………」
「今の所白鳥は何も知らぬ。其れなら下手に動かぬ方が良いじゃろう。」

 そうなのかもしれないけど、だけど不安しか無い。だけど鶴さんなりの心配の仕方だと思い、取り合えず言う通りに部屋の中で大人しく待っている事にした。
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