命が進むは早瀬の如く

琴里 美海

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第弐拾四話

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 …………………………………………そうだね。でも朱夏、君も言っていたじゃないか。私は顔に出やすいって。だから『また離れなきゃいけない』って気持ちも、『朱夏に会えて嬉しい』って気持ちも、どちらも出てしまったんだよ。

 それから。私は神様なんだから、そんな簡単な願いも叶えられなきゃ駄目じゃないか。それに嫌いになんてなれないよ。

 だって、大好きな君が大好きだった場所なんだから。

 あ、そうだ朱夏、君にだって言われたくないよ。

 周りが見えなくなる直前に、私はちゃんと見たんだから。



 君だって涙を我慢していたんじゃないか。



 だって、君だって、涙を流していたのを私はちゃんと見たんだからね。
 君だって、少し見ない間に随分と涙もろくなったじゃないか。

 あぁ本当に、人間だったらこう言う時、神様に言うって事が出来るのに、神様はそれが出来ないんだから。



 だから神様である私は、人間に言おうかな。



 朱夏を産んでくれて有り難う。



 それから朱夏、こちらこそ、私の事を嫌わないでいてくれて有り難う。
 朱夏、私は君を…………………



 愛してる。


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