妹の友達と付き合うために必要なたった一つのこと

玄城 克博

文字の大きさ
3 / 36
一章 友達

1-2 妹を作る方法

「……くっそ、やっぱりダメだあのバカ親共、俺と友子ちゃんは息子の夢を嘲笑うような親にはならないようにしよう」

 思い立ったが吉日、どうせ朝になったのだから、と朝食の準備をしている母親と新聞を読んでいる父親へと今すぐ妹を作るように直談判しにいったものの、結果は芳しいものではなかった。今は高齢出産も流行っている事だし、まだ頑張れば産めない年でもないだろうに、話すらまともに聞いてくれないのは親としてどうかと思う。

「いや、友子ちゃんって誰だよ」

「俺の話をまともに聞いてくれるのはお前だけだ、友希。俺は本当にいい弟を持った!」

「まともには聞いてねぇ、って、抱きついてくんな気持ちわりぃ!」

 感動を体全体でぶつけるも、ツンデレ気味に引き剥がされる。これで友希が妹だったら文句ないのだが、そこまでは流石に贅沢と……

「……なぁ、友希。タイ旅行しないか? 旅費と手術費は俺が出すから」

「旅行も手術もしねぇよ!」

「ちっ、弟も駄目か。家族揃って冷たいな、なんでだ、冬だからか? 夏のタイ旅行ならいいのか? 夏のハワイ旅行をプレゼントすれば父さんも母さんもハッスルするのか?」

「……親のそういう話やめろよ、リアクションに困る」

「俺もそう思う。でもな、大きな目的の前には乗り越えなくてはならない壁があるんだ」

 そう、俺は妹の友達と付き合わなくてはならない。そのためには、実の母親の股ぐらからかわいい妹が飛び出してくるのが一番てっとり早いとおもったのだが。

「とりあえず、部屋片付けろよ。こんなの見られたらまた怒られんだろ」

「それよりも俺は一刻も早く友子ちゃんと……」

「それにしても、こんな部屋じゃ女の一人も誘えねぇだろうが」

「あぁ、それもそっか」

 流石は友希だ。伊達に彼女持ちというわけではない。友子ちゃんに見られても嫌われないよう、いつもより余計に部屋を片付けなくては。

「……で、何かあったのかよ? いつにも増して何言ってるかわかんねぇけど」

 渋々、といった様子ではあるが、友希も部屋に散らばった半紙の塊を拾い集める手伝いをしてくれる。

 年の一つしか違わない弟は、むしろほとんど友達のような存在だが、少なくとも俺の友人の誰よりもよくできている。

 顔以外まったく似ていないだの、上がいかれてると下はしっかりするだの、弘人の改良版だのと知人からは散々に言われるが、それを否定するのも難しいくらいに友希は何でもできて性格もいい。口調がやや乱暴なので、時たま誤解される事もあるが。

「友希、恋をした事はあるか?」

 大方部屋が片付き、手を止めた友希に問いかける。俺はこれから雑巾と掃除機をかけてエロ本とパソコンのフォルダを隠さなくてはならないが、そこまで付き合わせる気はない。

「恋ぃ? まぁ、一応まだ優子と付き合ってはいるけど」

「そっか……友子って、読みようによってはゆうことも読めるな」

「だから、その友子ってのは誰なんだよ。兄貴はそいつに恋でもしたのか?」

「正確に言えば、する、かな。そこも楽しみではある」

「はぁ?」

 友希の口から、間の抜けた声。出来のいい弟にしては察しが悪い。

「見ただろう、この俺の思いの籠った素晴らしい書を」

「……その、『妹の友達と付き合う!』って奴か?」

「そう、その通り。俺は妹の友達と付き合う! と、そう決めたわけだ」

「決めたも何も……だから妹を生めってか」

「妹の友達と付き合うには、まず妹がいるからな。それがわからないほどバカじゃないさ」

「いや、バカだろ」

 友希が呆れた目を向けてくる理由だって、一応はわかる。俺はバカじゃないのだから。そう、断じて俺がバカだなんて事があるわけがない。

「バカじゃないやい、バカじゃないやい!」

「あー、もう、わかった、わかったから暴れんな」

 どうやら弟にも納得してもらえたようだ。

「まぁ、兄貴の目的? は一応わかったけど、どうしてまたそんな無茶言い出したんだ?」

「無茶じゃないやい、できるんだい、妹の友達と付き合うんだい!」

「あー……めんどくせぇ」

 友希の口から、本音がそのまま零れ出したような呟き。

 まずい、弟に見放されては頼れるのは頭スカスカの友人連中だけになってしまう。

「友希、お前はどんな女が好みだ?」

「お、おぅ? どんな女って、そりゃあ、顔が良くて優しくて胸がある女だけど」

「友希、それと同じだ。友希、俺はな、妹の友達な女の子が好みなんだよ、友希」

「ちょいちょい名前呼ぶなよ。後、やっぱり何言ってるかわかんねぇ」

「これを見るんだ、友くん」

「せめて名前で呼べ」

 ベッドの上の一冊の本を手渡すと、友希はそれを素直に受け取る。

「……って、これエロ漫画じゃねぇか」

「エロ漫画とは失礼な。……いや、これは本当にエロ漫画だった。まぁ、こっちでもお互い色々と膨らませることになる以外に問題はないから話を続けよう」

「問題しかねぇな……」

 眉をひそめながら、友希はエロ漫画の表紙を舐めるように眺めていく。

「とりあえず今は表紙だけで抑えてくれ。後で貸してやるから」

「いや、いらねぇけど。要するにあれか、エロ漫画に感化されたってだけか?」

「エロだけじゃなくて、普通の漫画もだけどな」

 いらないと言うので、友希の手から『妹の友達と押入れで……』を取り上げてベッドの上に戻す。後で貸してくれと言ってももう遅い。

「とにかく、これらの作品を通して俺は妹の友達という立場のかわいい女の子が好きなんだ、と気付いたわけだ」

「はぁ、なるほど。やっぱ聞いて損した、二度寝するわ」

「いやいや、待って、真剣なんだってホントに。ふざけてるわけじゃなくて」

 本気で部屋を出て行こうとする友希を、腰に縋りつくようにして止める。

「あー、わかったわかった。そうだな、兄貴は真剣なんだよな。でも残念ながら俺にはどうしようもねぇから。それこそ母さんと父さんにしかどうにもなんねぇよ」

「くそぅ、このリアリストめ! 夢を忘れた男に先はないぞ!」

「夢ばっか見てるよりマシだっつうんだよ。兄貴もとりあえず寝ろ、どうせ昨日から寝てねぇんだろ? 寝れば少しは忘れっから」

「甘いな、友希。忘れないためにこうして書に残したんだよ」

「あぁ……本当にめんどくせぇ」

 またしても呆れられてしまいそうだが、このまま帰してもそれは同じ。友希には今ここで如何に俺が真剣かを語って聞かせてやる必要がある。

 頑なに腰にしがみ付いていると、友希はやがて小さく溜息をついた。

「じゃあ――」

『弘人ー、友希ー、ゆずちゃん達が来たわよー』

 何か言いかけた友希の言葉は、間の抜けたインターホンの音と扉越しに聞こえた母親の声に中断される。

「ほら、離せって、柚木の事だからすぐ――」

「ひろ兄、明けましておめでとうっ……って、とも兄!?」

 階段を駆け上る音と、勢い良く開け放たれた扉の音、そしてそこから飛び込んで来た従妹の元気のいい新年のあいさつに再び弟の言葉は遮られてしまう。

「二人でそんな格好で……まさかとも兄、ひろ兄を捨てたの!?」

「そうなんだよ、柚木。ひどいだろ、友希が俺を見捨てようとするんだ」

「そんな、二人がそういう関係だったなんて……ひろ兄のバカっ!」

「えっ、俺!? なんで俺の方が怒られてんの!?」

 仲間にしようとした少女は、なぜか俺を罵倒しながら詰め寄って来る。

「はぁ……本当にめんどくせぇな」

 追い詰められたベッド際、拘束から逃れた友希の先程よりも深い溜息が、柚木の肩越しに小さく聞こえた。
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

**俺、東大院生の実験対象にされてた。**同居している美人家庭教師のやばい秘密

まさき
恋愛
 俺は今、東大院生の実験対象になっている。  ある雨の夜、アパートの前にずぶ濡れの美女が立っていた。  「家庭教師です。住まわせてください」  突然すぎる申し出に困惑しながらも、なぜか断れなかった。  桐島咲楽、東大大学院生。成績は天才、料理は壊滅的、距離感はおかしい。毎日転ぶ、焦がす、なぜか距離が近い。そのくせ授業は鬼のように丁寧で、俺のことを誰よりもよく見ていた。  偏差値42だった俺の成績は、気づけば上がっていた。でも、それより気になることがある。  咲楽さんが、研究ノートに何かを書いている。「被験者」という文字が、見えた気がした。  距離が近いのは、データのためか。褒めてくれるのは、実験のためか。でも、あの顔は。あの声は。  「データじゃなくて、私がそう思っています」  嘘をついているような顔じゃなかった。  偏差値42の俺に、東大院生の美女が押しかけてきた。ドタバタな毎日の中で、俺の心臓が休まる暇がない。これはドキドキなのか、心配なのか。それとも、もう恋なのか。  不器用な天才と、鈍感な高校生の、やばい同居生活。

地味男はイケメン元総長

緋村燐
青春
高校一年になったばかりの灯里は、メイクオタクである事を秘密にしながら地味子として過ごしていた。 GW前に、校外学習の班の親交を深めようという事で遊園地に行くことになった灯里達。 お化け屋敷に地味男の陸斗と入るとハプニングが! 「なぁ、オレの秘密知っちゃった?」 「誰にも言わないからっ! だから代わりに……」 ヒミツの関係はじめよう? *野いちごに掲載しているものを改稿した作品です。 野いちご様 ベリーズカフェ様 エブリスタ様 カクヨム様 にも掲載しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。