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第21話 決着と残った謎
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これまでの付き合いでワンは新の情報を十分に得ている。チャージが完了する前に仕留めるべく、突進してきた。
打撲中の肉体は思うように動いてくれず、体当たりをまともに受けて吹き飛ばされる。その隙にワンは祐希子を抱えて逃げようとした。
「そうはいくかよ!」
ワンを邪魔するように尻もちをついたままでジュエルガンを撃ち、再度意識をこちらに向けさせるとすぐに立ち上がり、次のをチャージする。
しかし、このところの戦闘続きのせいで、早くも弾とする宝石が尽きつつあった、
「くそっ! ただでさえ貧乏だってのに! 助けたら祐希子はしばらくただ働きだ!」
猿ぐつわの下でむーむーと何やら言っているが無視をする。あれだけの元気があれば大丈夫そうなので、新にとっての最優先はワンの退治となる。
新に正体を知られたワンは、今後は遠慮なく襲ってくるだろう。祐希子を完全に自分の物とするまでは。
新も満身創痍だが、ワンも先日の戦闘の影響と先ほど受けたダメージによって本来の力を発揮できないようだった。だからこそ、祐希子を連れて逃げたがっている。
「そう嫌わないで、決着をつけようぜ、ワン公」
「ドウシテ、ワタシの邪魔をスルネ! 取引先のヨシミでタスケテヤロウと思ったノニ、残念ネ。次は確実に殺すヨ」
血走ったようにワンの目が赤くなる。危険な輝きだ。一回り太くなった爪が伸びる。まるで各指にショートソードでも生えたかのようだった。
「ワタシはダンナのチカラを知ってルネ。ケド、ダンナはワタシのチカラを知らナイ。情報不足は致命的ネ。あの世で後悔スルヨ!」
向けた指から勢いよく爪が発射される。五本同時に投げナイフを放たれたような攻撃を、身体能力は普通の人間の新が回避するのは不可能だった。
倒れ込むようにして直撃を避けるのが精一杯で、腕や足の皮膚を容赦なく切り裂かれた。景品交換所内の畳の上で、新は苦痛に悶える。
一瞬だけだったが、マズいと理解した時にはもう遅い。見せてしまった隙を、妖魔であるワンが見逃すはずもなかった。
「コレデ終わりネ。縁がアッタラ、来世でも情報屋をしてアゲルネ」
見下ろすワンの顔が収穫に歪み、新しく生えた爪が新の命を奪うべく眼前に迫る。倒れた際にジュエルガンは手から離れた。助かるすべはもうない。
新がちくしょうと叫ぶ前に、何かが上に乗った。それは芋虫みたいにして、近付いてきた祐希子だった。
気づいたワンが慌てて腕の動きを止める。祐希子の背中に、爪が突き刺さる寸前だった。
愕然とするワンが祐希子に目を奪われている間に、畳の上を転がって新はジュエルガンを拾う。
新の動きに気づいたワンが再び爪を繰り出そうとするも、視界の隅に映る祐希子を気にして動きが遅れた。
先ほどの新の苦悶が致命的な隙となったように、ほんの僅かでも迷いや躊躇いは身を亡ぼす原因になる。
ほぼ同時のタイミングで攻撃動作に入ったにも関わらず、実際に攻撃を行えたのは新だけだった。
突き出した左手に退魔の力を帯びた宝石が弾丸としてめり込む。祐希子の祖父から貰ったもので威力は抜群だった。
ミサイルでも撃ち込まれたかのごとく左半身が吹き飛び、人間とは決定的に違う緑の血液を垂れ流しながら、ワンはどうと横向きに倒れた。
目の半分が閉じられ、怪我をしている右肩から指にかけて痙攣を繰り返す。ワンの命が長くないのは、医療の専門家でなくともわかった。
「……どうして、最後に俺を攻撃しなかった」
膝立ちになった新は、祐希子の猿ぐつわと縄を外しながらワンに尋ねた。
「ユキ……コ……サン、ハ……殺セ、ナイ、ヨ……ダッテ、ワタシ……初めて、スキ……ナッタ……カラ。綺麗デ、可愛い顔、ネ。薄気味悪い、バケモノ、ニハ……憧れ、ネ……。マイニチ、ミテ、イタ……カッタ……ハンブン、ヨウマノ、ワタシ……モ……コンナフウニ……ダレカヲ……オモ、エル……ナン……テ……」
途切れ途切れだった言葉が、とうとうそこで終了した。新が祐希子の縄を解く少し前にワンは息絶えた。
情報屋として利用しながら妖魔と見抜けなかったのは、彼自身が言っていた通り、半分は人間の血が入っていたからなのだろう。人間の世界に紛れ込んで生活していたのも、自分はこちら側なのだと思いたかったのかもしれない。
「……バカ野郎が。本気で惚れたってんなら、他にやりようがあっただろ。情報屋なんだから、好みの物を探してプレゼントしてみたりよ」
殺すしかなかったとはいえ、後味の悪さも残る。見知った顔が死ぬのは――それも自分の手で――とても気分がいいとは言えなかった。
新と並んで立ち上がった祐希子は縛られた痕の残る手首を摩りながら、息絶えたワンを見下ろす。
「アタシ、言うほど綺麗じゃないよ。どうして、そこまで惚れてくれたんだろ」
「さあな。一目惚れだって言ってたけどな。誰かを好きになるのは理屈じゃない。そんな感じだろ」
「……うん。もう聞こえないだろうけど、一応返事しておくね。ごめんなさい。アタシ、好きな人がいるんだ」
申し訳なさそうな祐希子が、せめてワンの墓を建ててやりたいと言った。
頷こうかと思った時、背後で人の気配を察した。新が振り返ると、そこには賛王へ行ったはずの千尋が立っていた。
「そこの二人、大丈――って、どうしてお前がここにいるっ!」
※
首根っこを掴まれ、強制的に事務所へ連れ戻されたあと、新と祐希子は取り調べのごとき詰問を受けていた。
「現地の警察官からパチンコ店の駐車場で妖魔の仕業と思われる爆発があったと通報を受け、賛王の探索を部下に任せて戻ってみれば……この愚弟が!」
全身打撲中の新の襟首を、向かい合ってソファに座っていた千尋が力任せに掴みあげる。二人の間にあるテーブルが揺れ、今にも倒れそうな音を立てた。
仲裁したのは新の隣に座らせられている祐希子ではなく、事務所の留守を預かってくれていた里穂だった。
「ちょっと落ち着くしィ。チッピーが新にとどめさしてどうするワケ?」
「ぐ……!」
仕方なしに千尋は新から手を離したが、納得していないのは態度にありありと出ていた。
「三つの王が何を意味するか知っていたのなら、最初から私に教えていればよかっただろう! だからお前は愚弟と呼ばれるんだ。心配をかけるな!」
「いや、そうは言うがな。ワンは情報屋だ。警察の動きで自分が容疑者かどうか即座に判断するだろ。雲隠れされたら、探しようがなくなる。それに俺の思い過ごしで、賛王が本命の可能性もあった。そちらを疎かにするわけにはいかないだろ。ついでにいえば、俺以外にワンとコンタクトをとれる奴は身近にいなかったろ」
「それはそうだが……」
「ひとまず祐希子も無事だったんだ。向こうでの傷を癒すために、あの場に留まってくれていたのも幸いした。運が良かっただけと言えなくもないがな」
どこかでボタンが掛け違っていれば、祐希子はワンの手に落ちていた。乱雑に扱わなかったかもしれないが、未来を知るのは不可能だ。今は幸運を喜ぶしかない。
「それに謎も残ってる」
「淑女の涙か」
千尋の言葉に新は同意を示す。ワンが祐希子と一緒に持ち去ったと思われる宝石が、景品交換所のどこを探しても見つからなかった。
ワンはそこを根城としていたらしく、他の住居は発見できていない。祐希子は取り戻せたが、淑女の涙は忽然と姿を消したままだった。
だがあの場から持ち出せた人物は限られている。千尋の協力で、タクシーの運転手にも話を聞いてもらえることになっていた。楽観的かもしれないが、近いうちに見つかるだろうと新は思っていた。
「いいだろう。ひとまずはそれで納得してやるが、次はないぞ。せめて私には自分の意図を説明しておけ。独断で動かれるとフォローもできん。里穂もだ! 新が事務所から出たなら保護者である私に連絡をすべきだったろう」
「チッピー、ちょっと過保護すぎじゃね」
「黙れ。侮辱罪の現行犯で逮捕するぞ」
「マジで!? 里穂、前科者になんの!? 超ウケる!」
大笑いする里穂を前に、処置なしと千尋は顔をしかめる。絡んだ相手が悪かった見本である。
「あ、そうだ。忘れてた。マスターから連絡きてさ。新に頼まれてた件、わかったってさ」
「そうか。じゃあ、行ってみるか。強引に動いたせいか、体の痛みも多少はマシになってるみたいだしな」
「里穂も店戻るから、そこまでは面倒見てあげるしィ」
「童貞の面倒は見てくれないのか」
「前金で三千万ね」
「百パーセントオフのサービス付きで頼む」
毎度恒例となるやりとりをして外に出ようとする新に、当たり前のように祐希子と千尋がついてくる。
「祐希子はともかく、姉貴は大丈夫なのかよ。ワンの後始末とかあんだろ」
「後処理だけだからな。部下に任せてある。問題が発生すれば、電話をかけてくるはずだ」
その通りとばかりに事務所内へ電子音が響く。しかし、鳴ったのは千尋のスマホではなかった。
「あれ、俺だ。しかも依頼人からか」
電話をかけてきたのは、淑女の涙の捜索を依頼してきた玖珠貫玲子だった。新が電話に出るなり、彼女は申し訳なさそうな声で謝罪してきた。
「一体、どうしたんですか?」
「はい。私の依頼のせいで、錦鯉さんが怪我をなさったとのことで……タクシーの謎の爆発が原因とニュースではおっしゃっておりましたが大丈夫なのでしょうか?」
打撲中の肉体は思うように動いてくれず、体当たりをまともに受けて吹き飛ばされる。その隙にワンは祐希子を抱えて逃げようとした。
「そうはいくかよ!」
ワンを邪魔するように尻もちをついたままでジュエルガンを撃ち、再度意識をこちらに向けさせるとすぐに立ち上がり、次のをチャージする。
しかし、このところの戦闘続きのせいで、早くも弾とする宝石が尽きつつあった、
「くそっ! ただでさえ貧乏だってのに! 助けたら祐希子はしばらくただ働きだ!」
猿ぐつわの下でむーむーと何やら言っているが無視をする。あれだけの元気があれば大丈夫そうなので、新にとっての最優先はワンの退治となる。
新に正体を知られたワンは、今後は遠慮なく襲ってくるだろう。祐希子を完全に自分の物とするまでは。
新も満身創痍だが、ワンも先日の戦闘の影響と先ほど受けたダメージによって本来の力を発揮できないようだった。だからこそ、祐希子を連れて逃げたがっている。
「そう嫌わないで、決着をつけようぜ、ワン公」
「ドウシテ、ワタシの邪魔をスルネ! 取引先のヨシミでタスケテヤロウと思ったノニ、残念ネ。次は確実に殺すヨ」
血走ったようにワンの目が赤くなる。危険な輝きだ。一回り太くなった爪が伸びる。まるで各指にショートソードでも生えたかのようだった。
「ワタシはダンナのチカラを知ってルネ。ケド、ダンナはワタシのチカラを知らナイ。情報不足は致命的ネ。あの世で後悔スルヨ!」
向けた指から勢いよく爪が発射される。五本同時に投げナイフを放たれたような攻撃を、身体能力は普通の人間の新が回避するのは不可能だった。
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一瞬だけだったが、マズいと理解した時にはもう遅い。見せてしまった隙を、妖魔であるワンが見逃すはずもなかった。
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新がちくしょうと叫ぶ前に、何かが上に乗った。それは芋虫みたいにして、近付いてきた祐希子だった。
気づいたワンが慌てて腕の動きを止める。祐希子の背中に、爪が突き刺さる寸前だった。
愕然とするワンが祐希子に目を奪われている間に、畳の上を転がって新はジュエルガンを拾う。
新の動きに気づいたワンが再び爪を繰り出そうとするも、視界の隅に映る祐希子を気にして動きが遅れた。
先ほどの新の苦悶が致命的な隙となったように、ほんの僅かでも迷いや躊躇いは身を亡ぼす原因になる。
ほぼ同時のタイミングで攻撃動作に入ったにも関わらず、実際に攻撃を行えたのは新だけだった。
突き出した左手に退魔の力を帯びた宝石が弾丸としてめり込む。祐希子の祖父から貰ったもので威力は抜群だった。
ミサイルでも撃ち込まれたかのごとく左半身が吹き飛び、人間とは決定的に違う緑の血液を垂れ流しながら、ワンはどうと横向きに倒れた。
目の半分が閉じられ、怪我をしている右肩から指にかけて痙攣を繰り返す。ワンの命が長くないのは、医療の専門家でなくともわかった。
「……どうして、最後に俺を攻撃しなかった」
膝立ちになった新は、祐希子の猿ぐつわと縄を外しながらワンに尋ねた。
「ユキ……コ……サン、ハ……殺セ、ナイ、ヨ……ダッテ、ワタシ……初めて、スキ……ナッタ……カラ。綺麗デ、可愛い顔、ネ。薄気味悪い、バケモノ、ニハ……憧れ、ネ……。マイニチ、ミテ、イタ……カッタ……ハンブン、ヨウマノ、ワタシ……モ……コンナフウニ……ダレカヲ……オモ、エル……ナン……テ……」
途切れ途切れだった言葉が、とうとうそこで終了した。新が祐希子の縄を解く少し前にワンは息絶えた。
情報屋として利用しながら妖魔と見抜けなかったのは、彼自身が言っていた通り、半分は人間の血が入っていたからなのだろう。人間の世界に紛れ込んで生活していたのも、自分はこちら側なのだと思いたかったのかもしれない。
「……バカ野郎が。本気で惚れたってんなら、他にやりようがあっただろ。情報屋なんだから、好みの物を探してプレゼントしてみたりよ」
殺すしかなかったとはいえ、後味の悪さも残る。見知った顔が死ぬのは――それも自分の手で――とても気分がいいとは言えなかった。
新と並んで立ち上がった祐希子は縛られた痕の残る手首を摩りながら、息絶えたワンを見下ろす。
「アタシ、言うほど綺麗じゃないよ。どうして、そこまで惚れてくれたんだろ」
「さあな。一目惚れだって言ってたけどな。誰かを好きになるのは理屈じゃない。そんな感じだろ」
「……うん。もう聞こえないだろうけど、一応返事しておくね。ごめんなさい。アタシ、好きな人がいるんだ」
申し訳なさそうな祐希子が、せめてワンの墓を建ててやりたいと言った。
頷こうかと思った時、背後で人の気配を察した。新が振り返ると、そこには賛王へ行ったはずの千尋が立っていた。
「そこの二人、大丈――って、どうしてお前がここにいるっ!」
※
首根っこを掴まれ、強制的に事務所へ連れ戻されたあと、新と祐希子は取り調べのごとき詰問を受けていた。
「現地の警察官からパチンコ店の駐車場で妖魔の仕業と思われる爆発があったと通報を受け、賛王の探索を部下に任せて戻ってみれば……この愚弟が!」
全身打撲中の新の襟首を、向かい合ってソファに座っていた千尋が力任せに掴みあげる。二人の間にあるテーブルが揺れ、今にも倒れそうな音を立てた。
仲裁したのは新の隣に座らせられている祐希子ではなく、事務所の留守を預かってくれていた里穂だった。
「ちょっと落ち着くしィ。チッピーが新にとどめさしてどうするワケ?」
「ぐ……!」
仕方なしに千尋は新から手を離したが、納得していないのは態度にありありと出ていた。
「三つの王が何を意味するか知っていたのなら、最初から私に教えていればよかっただろう! だからお前は愚弟と呼ばれるんだ。心配をかけるな!」
「いや、そうは言うがな。ワンは情報屋だ。警察の動きで自分が容疑者かどうか即座に判断するだろ。雲隠れされたら、探しようがなくなる。それに俺の思い過ごしで、賛王が本命の可能性もあった。そちらを疎かにするわけにはいかないだろ。ついでにいえば、俺以外にワンとコンタクトをとれる奴は身近にいなかったろ」
「それはそうだが……」
「ひとまず祐希子も無事だったんだ。向こうでの傷を癒すために、あの場に留まってくれていたのも幸いした。運が良かっただけと言えなくもないがな」
どこかでボタンが掛け違っていれば、祐希子はワンの手に落ちていた。乱雑に扱わなかったかもしれないが、未来を知るのは不可能だ。今は幸運を喜ぶしかない。
「それに謎も残ってる」
「淑女の涙か」
千尋の言葉に新は同意を示す。ワンが祐希子と一緒に持ち去ったと思われる宝石が、景品交換所のどこを探しても見つからなかった。
ワンはそこを根城としていたらしく、他の住居は発見できていない。祐希子は取り戻せたが、淑女の涙は忽然と姿を消したままだった。
だがあの場から持ち出せた人物は限られている。千尋の協力で、タクシーの運転手にも話を聞いてもらえることになっていた。楽観的かもしれないが、近いうちに見つかるだろうと新は思っていた。
「いいだろう。ひとまずはそれで納得してやるが、次はないぞ。せめて私には自分の意図を説明しておけ。独断で動かれるとフォローもできん。里穂もだ! 新が事務所から出たなら保護者である私に連絡をすべきだったろう」
「チッピー、ちょっと過保護すぎじゃね」
「黙れ。侮辱罪の現行犯で逮捕するぞ」
「マジで!? 里穂、前科者になんの!? 超ウケる!」
大笑いする里穂を前に、処置なしと千尋は顔をしかめる。絡んだ相手が悪かった見本である。
「あ、そうだ。忘れてた。マスターから連絡きてさ。新に頼まれてた件、わかったってさ」
「そうか。じゃあ、行ってみるか。強引に動いたせいか、体の痛みも多少はマシになってるみたいだしな」
「里穂も店戻るから、そこまでは面倒見てあげるしィ」
「童貞の面倒は見てくれないのか」
「前金で三千万ね」
「百パーセントオフのサービス付きで頼む」
毎度恒例となるやりとりをして外に出ようとする新に、当たり前のように祐希子と千尋がついてくる。
「祐希子はともかく、姉貴は大丈夫なのかよ。ワンの後始末とかあんだろ」
「後処理だけだからな。部下に任せてある。問題が発生すれば、電話をかけてくるはずだ」
その通りとばかりに事務所内へ電子音が響く。しかし、鳴ったのは千尋のスマホではなかった。
「あれ、俺だ。しかも依頼人からか」
電話をかけてきたのは、淑女の涙の捜索を依頼してきた玖珠貫玲子だった。新が電話に出るなり、彼女は申し訳なさそうな声で謝罪してきた。
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