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息子は早熟で天才のようです
しおりを挟む私は5歳の息子を持つ26歳の若ママだ。デキ婚の末、若く未熟だった私達夫婦はすぐに離婚してしまった。
その為今は元旦那から振り込まれる養育費とパートで生活をしているのだ。普通なら5歳の幼い子供を育てながら仕事をするのは大変ねぇと周りから言われる事だろう。だが、私はそう言われる事は少なかった。なぜなら…。私の息子、なつめは異様に早熟だったのである!
「母上。お仕事お疲れ様。トイレ掃除と晩ご飯の準備して出来ていますよ。」
そう言う頼もしい子供は私の息子(5歳)だ。
「あら!危ないから料理までしなくても良いのに、でも嬉しいわ!ありがとう、なつめ!」
私は喜びなつめの頭をよしよしと撫でる。
「あ、当たり前なのです。母上は僕のために一生懸命働いているのですから。」
なつめは照れ臭そうに頬を染めてそう言う。
(見た目はこんなにあどけない男の子だっていうのに…)
「あっ、そうだ!お手伝いのお礼に、はいっこれ。まだ5歳だから一回お手伝い毎に10円ね!好きなお菓子でも買ってね⭐︎」
私はお財布から10円玉を2個だし小さい手にそっと渡した。
「母上!ありがとうございます!!期待に添えるよう、この10円玉を有意義に使います!」
(期待…?)
返事に少し違和感はあったが息子の喜ぶ姿を見て私も嬉しかった。
「さて!晩ご飯を食べて寝ましょうか!」
「はいっ!母上!」
そして、この日からお手伝いの度に息子に10円玉を渡すようになったのである。
数ヶ月後…。
「ねえ、なつめ?」
「なんですか?母上。」
「そういえば、お小遣いってなにに使ってるの?お菓子を買ってる様子もないし、全部貯金してるのかしら?」
私は数ヶ月間のお小遣いの使い道が気になって尋ねてみた。
「お小遣いなら全部で1200円集まってたんだけどね、今は100万円になったんだよ!」
そう言うとなつめは部屋からジェラルミンケースを持ってくると広げ、大量の札束を見せてきた。
「…え?は?ちょっと?」
私は驚きの余り気絶してしまったのである。
「はっ!母上えええ?!」
・°・°・°・°・
「なつめ。これは盗んできたものだったり、悪い事して手に入れた物ではないわよね?」
私はなつめを正座させて問い詰めた。
「…はい。これは盗んで来たわけでも悪い事して手に入れた訳でもありません。」
「じゃあ、これはどうやって手に入れたのか説明しなさい?」
「はい、母上。隠しててごめんなさい。実は…」
なつめが話し始めた。
それは手に入れたお小遣いをどうやって有意義に使えるか、家のパソコンで色々調べていた時だ。
あるお金持ちの家族が応募していた記事があった。内容は、5歳の娘が誘拐にあった後心を閉ざしてしまったので、5歳程の話し相手募集との事だった。
ちょうどそのお金持ちの家は電車で往復1000円くらい。報酬もあるようだし、女の子も救えて報酬で母上も楽してあげれるから一石二鳥!と考えた。
「そうして母上が仕事の間にその女の子のお家まで行ってきたんだけど、他の応募者は失敗続きだったのに僕は一発で心を開かせる事に成功したんだ!」
なつめは嬉しそうに話す。
「彼女の名前は西園寺かな。かなちゃんって言うんだ。かなちゃんは5歳の割に落ち着いていて賢い子だったよ。」
(お前が言うか!)
と突っ込みたくなったが堪えた。
「そう…。そう言う理由で成功したから報酬に100万円も頂いたのね。でもね、なつめはまだ5歳、非力なの。お願いだから危ない真似はもうしないと誓って?」
なつめはハッとして、
「そうだね。僕はちっさくて非力だ。100万円持ったまま大人に連れ去られてた可能性だってあったんだな…」
と答えたが「お金じゃなくてなつめ自身が心配なの」と間髪入れずに説教した。
なつめは反省してこれから一人で勝手にどこかへ行かないと誓ってくれた。
(ふぅ。とりあえずなつめの口座を作ってあげよう。)
大量の札束を横目にそう思ったのである。
続く。
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