夏の思い出

なるなる

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夏の思い出

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 夏休みのある日、僕は防波堤の端に座る綺麗な女の人を見つけた。その人はいつも同じ朝顔の浴衣を来て、いつも同じ場所に座っている。

 「こんにちは!何してるんですか?」
ある日思い切って声を掛けたのだが、その人はこちらを向いて微笑むだけだった。
僕はなんとか話したくて、自己紹介から学校の事や今流行っている事、最近の天気の事なんかを必死に話し続けた。
すると根負けしたのか、女の人はくすくすと笑い始めた。

「変な子ね、知らない人に話しかけちゃダメって学校で言われてるんじゃないの?」
「うん、でもお姉さんいつもいるから気になっちゃって!なんでいつもここにいるの?」
「私はここで人を待ってるの」
「そうなんだ! じゃあ僕も一緒に待つよ!」

 この日から僕はおもちゃやお菓子を持ってお姉さんに会いに行く様になった。
お姉さんはいつも綺麗だった。でもいつも笑顔に影があった。僕にはそれがなぜかわからなかったけど、お姉さんの本当の笑顔が見たくていつも大袈裟におもしろい話しをしていた。

 ある日、おじいちゃんが僕を迎えに来た時、お姉さんを見て驚いた。
「も……もしかして千代ちゃんかい?」
「千代は私の祖母です。健太郎さんですか?」
「あぁ、千代ちゃんにそっくりだ……どうして私の名前を?」
「実はあなたを探していました。祖母はもう長くない。最後にあなたに会いたがっているのです。一緒に来てもらえますか?」

 おじいちゃんは僕にすぐ戻るから先に帰る様促すと、迎えに来た黒塗りの車に乗ってどこかへ行ってしまった。

 翌日おじいちゃんが帰ってくると、その日からお姉さんが現れる事はなくなった。

 10年後、たまたま実家に帰省した僕が防波堤に行くと、あの時のお姉さんが白いワンピース姿で座っていた。
「久しぶりね」
お姉さんはラムネの中に入ったビー玉の様に、とてもキラキラとした目で笑っていた。
「実はあの時、最愛の人に振られてしまって……。最後に祖母の願いを叶えてあげようって思っていたの。でもあの時出会った不思議な少年のおかげでこうして今もここにいられる。ありがとね!」
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