科学と魔術の交差点

昼顔 ロカ

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第4話 末永く爆発してろ!

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    昨日はホントに散々な一日だった。でも…

    一昨日、研究対象だった『神殿』を奪われたために俺を拉致って脳みそを弄くろうとしていた『神殿』の研究をしていた研究所のトップ(らしい)であるオリガ=リバキナとキスしてしまった俺は何故か赤面して気絶していたオリガを蘭と一緒に例の研究所まで運んだ後、帰路についた。

「クッソー!なんだってファーストキスがあんなマッドサイエンティスト感溢れる年上の女なんだよー!」
『年上というのは関係あるのでしょうか?』
    その後家ではしばらくの間パソコンでネトゲをしながらながら『神殿』と会話していた。
「多ありだ!いいか、俺の好みは同年齢~マイナス二歳までだ!年上なんか興味無ぇんだよぉお!」
『私の主人こんなのか~。やだな~』
「んだとこの役立たず!オリガ戦で活躍0だった癖に!」
『あなたが私の知識を使いこなせてないだけです~。というかオリガへの対応を考えなくてはいけないのでは?』
「考えたくないからこうして関係ない話してるんじゃーん。俺陰キャだからこーゆーときの対応わからんのよ~」
『ふむ…では私が手助けしましょうか?ただの特殊な電子ファイルとはいえ参考にされた人格は女性ですし』
「ケッ、誰がお前みたいな役立たずのアドバイスを聞くかよ」
『また役立たずって言ったー!』
「君は独り言が好きなのかい?変わってるねぇ~」
    突如聞き覚えのある声が聞こえてきた。聞こえてきた方向を向くと俺の部屋のドアにオリガが寄りかかっていた。
「ッ!!何しに来た!」
「えっと…まず誤解しないでほしいんだけどねー。僕はもう君の脳みそをどうこうしようなんて考えてないよ~。今はそれより気になる研究対象が生まれたからね~」
    オリガは何を考えているか分からない笑みと共にそう答えた。当然答えに納得できるわけもなく…
「何しに来たか聞いているんだ。俺の脳が目的じゃないなら何故だ」
『そーだそーだー』
    なんかうるさいのが入り込んできたので黙らせる。
「黙れ」
『わかりましたよ…呼ばれるまで喋りません…』
「おおっ、今の脳に直接響く声。これが『神殿』か~。やっぱキミの脳みそ貰おうかな~、なんちゃって」
「要件を」
「君を夜這いしに来たんだよ~☆」
    …………は?
「なのに君ってばずっと虚空を見ながら陰キャがどーとか役立たずーとか独り言言ってるんだもの。今午前1時だよ~?全く」
「いや待て。は?なんでお前が俺を夜這いしに来んの?俺そんなフラグ立てた覚え………あるな」
    今日の…いや昨日のか。昨日のキスの記憶が鮮明に蘇る。視界一面の(顔だけなら)美少女。唇の柔らかい感触……なんかクラクラしてきた。ヤバい駄目だ!考えるな!
「でしょ~?キミにファーストキスを奪われてからずっとキミのことで頭いっぱいでさ~。だからキミのこと調べもしたよ~?」
    俺のことを、調べた?
「例えば~…身長166.6cm、体重51.0kg。12月31日生まれ15歳。お気に入りの服を何枚もストックするタイプで公立魔科ましな高校1年生。現在夏休み真っ最中。成績は上の下。父親は四年前に死亡。母親は二年前から仕事でベガスへ。兄弟と妹はおらず、姉は7年前に独立して横浜へ。ファーストキスは昨日の僕とのキス…ってことくらいは調べてあるよ~。でもまだまだ調査中だよ☆」
「キッッショ!!さっきお前とのキスを思い出してクラクラしてた自分を殴ってやりたい!」
「ま、そんな訳だから。これからもガンガンアタックしていくからよろしくね~♡」
「二度と来んなああアァァ」

    その翌日、予告通りオリガのアタックは凄まじく、ある時は偶然をよそおい服にコーヒーをぶっかけて洗濯するからと服を剥ぎ取られそうになり、またあるときは路地に入った瞬間後ろから襲いかかられた…
「もー無理。限界。死にそう」
「アッハハハハハ!ハァ、ハァ、わ…笑い死ぬ…もう無理。ハハハハハハ!」
    限界に達した俺は蘭を誘ってカフェで『神殿』も加えて話し合いを始めたのだが…このアマァ。
『警察に相談されては?』
    俺だって何度もそれは試みている。しかし、
「なんでか交番行こうとすると毎回、流石に可哀想だ、とか思っちまうんだよなー」
「ハァ、ハァ、よ…良かったじゃん…念願の彼女だよ?」
「俺の理想は同年齢かちょい年下だって言ってんだろ!」
『「ハァー。多少妥協しろよ~(しましょうよ~)』」
「何故ハモ…る……」
    俺は突っ込もうとして顔を上げた瞬間、硬直した。理由は明白だ。そこに…
「ヤッホー」
「あ…あ……あぁァァァ!!」
    俺は全力で逃げ出した……

    ひ…ヒロが逃げたせいでシンちゃん(『神殿』のこと)との会話もできなくなっちゃった上にこのストーカーと二人っきりになってしまった…
「って訳で~。なーんでこんなに逃げられるか分からないんだよねー」
「理由は明白だと思うんだけど……」
    取り敢えず会話してみて分かったことがいくつかある。
    その一。この人めっっっちゃ純情!なんかすっごい応援したくなる!
    その二。この人努力の方向性が違う…監視カメラのハッキング。盗聴盗撮etc…もっと違うところで努力して!
    とか考えているとオリガが話しかけてきた。
「てゆーかー、僕ずっと気になってたんだけどー。キミは弘クンにどんな感情を抱いているの?もし恋敵だったら性格、顔、ウエスト、ヒップ。どこをとってもバスト以外勝てないんだけどー」
「ん?今触れてはいけないとこに触れたな?いくらなんでも許さないぞ?あと、私はヒロに『幼馴染みの恋人』以上の感情は持ってないよ?安心してアタックして!」
「そっか良かっ……た…?ってあれ?」
「どうしたの?」
「も…元恋人って?」
「………あ。言うなって言われてたの言っちゃった…」
「ハアアアァァァァ?」
「ご……ごめんねー…」
    後でヒロから説教だなー…と私が遠い目をしていると…
「ま…まーいい。言いたいことは山ほどあるが一旦保留してやる。それよりも、弘クンは今どこだー?キミが弘クンのことを想ってないならもう気兼ねはない。さっさと次の作戦だ」
「あ、それならいい作戦があるよ?」
「フム…聞かせてもらおう」
「えっとね…」

    あいつからも逃げれたし家でのんびりゲームでもしようと思っていたら
    ピンポーン
    と、インターホンが鳴った。俺は押した相手が蘭であることを確認するとドアを開けた。開けてしまった…そこにいたのは…
「さっきぶりだねー。僕だよー」
「ヤッホー。連れてきちゃいましたー」
    何故かとてつもなく仲が良くなっている蘭とオリガだった……
    リビングに移動して全員が席に座ると俺はこう切り出した。
「なんでいんの?」
「キミに会いたかったから!」
    俺は頭を抱え、蘭を睨むと、蘭は
「だってヒロがこの人の話聞かないんだもん。一回ちゃんと話したほうがいいよ。お見合いみたいな感じで」
「話すもなにm…」
「お願いします!一回チャンスをください!」
    俺が言いかけた言葉を引っ込めたのはオリガだった。俺はその熱意に負け、
「……ハァー。分かったよ」
    と了承した。するとオリガは一気に表情を明るくした。
「ありがとうございます!」
「じゃあ私は帰るねー」
    ハァ。これから地獄のお見合いか~……やだな~…
「改めまして自己紹介するねー。私はオリガ=リバキナ。年は15。7月7日生まれでー…」
「15歳?!」
「な…何か問題が?」
「いやない!大丈夫。続けてくれ」
    ど…同年齢だったとは…三歳くらい上だと思っていた…
「それじゃー。7月7日生まれで身長175.2cm、体重54.4kgー。ネトゲとハッキングと化学実験。あとキミが大好き!あと胸はHカップ!これ以上の情報は特に無いかな…あ、キミのことは知ってるから大丈夫だよ!」
「そんなお見合いある?」
「じゃあ告白タイムね。よく聞いててね~?」
    どうせだから真面目に聞いてやるかと思い、改めて正面を見ると、とても真剣な顔をしたオリガがいた。俺は不謹慎にも
(可愛い)
    と、素直に思った。そして恥ずかしくなって目を逸らした。すると、オリガの告白が始まった。
「弘クン。僕は、弘クンが大好きです。最初はただの偶然から始まったこの恋だけど、今は違う。好きになるだけの理由を見つけた。話してみたら面白かった。やってるゲームが同じだった。こんなチャンスをくれた。そして何より、嬉しかったのは!」
    その告白が止まった。何事かと思い、逸らした視線を再び向けると、
    オリガは、
    それでなんとなく分かった。分かってしまった。きっとオリガはこれまでも何回か同じように人を好きになっている。だが、恐らく全ての恋が結ばれることなく散ったんだと思う。あの異常なまでの調査もその過去のせいだと思う。だから多分怖いんだ。また散るんじゃないか。また散ったら立ち直れるか。その未来を想像して、涙を流しているんだ。俺にはその痛みは想像できない。だから、待つ。オリガの覚悟が決まるまで、何時間でも、何日でも。そして、高かった日が完全に沈んだ頃、オリガは口を開いた。
「何より嬉しかったのは!僕を、拒絶しないでくれたこと。警察に突き出さなかった。危害を加えて突き放さなかった。たったそれだけだけど、僕にとっては、何万回でもキミに恋できる、大事な大事な理由なんだ。だから、だから!」
    ついにメインの一言が来る。そしてもう返事は決まっていた。確かにオリガはちょっと変だ。異常に執着してくるし、ウザいし、恋のために犯罪行為も平気でやるとてつもなく変な奴だ。だけど!

    

「僕と!付き合ってください!!河流弘さん!」
「結婚を前提にお受けします。オリガ=リバキナさん」

    その後は二人共緊張と疲れですぐ寝込んでしまい、翌日起きるとオリガはまだ寝ていた。
    全く昨日は散々な一日だった。でも、最高の一日だった。
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