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ミナに連れられて、マカは家具売り場に到着した。
「ここのソファとかランプとか、ステキじゃない?」
確かにミナが言う通り、ソファやランプは美しい皮張りだった。
安心するような肌の色をしており、一切模様や刺繍がされていない。
そのシンプルさが、不思議な魅力を持つ。
だが、マカの眉尻が上がる。
「…ミナ、これは…」
「やあやあ、こんにちは」
マカの声を遮り、店内に1人の中年男性が入ってきた。
高そうなスーツを着た中年男性は、上機嫌でカガミに話しかける。
「店主、今日は新製品が入ったとの事で来たのだが…」
「ええ、あちらの家具ですよ」
カガミがそう言って指した方向に、マカとミナがいることをはじめて男性は気付いた。
「おや、失礼。お嬢さん達が先客だったんだね」
「いっいえ、見に来ただけですから!」
ミナは慌てて家具から離れ、マカの背後に隠れた。
「ステキなアンティークショップがあると言われて、見学に来ただけですからお気になさらないでください」
そう言ってマカはミナを連れて、家具売り場から引いた。
「すまないね。楽しみにしていたもので」
カガミの案内で、男性は家具売り場に来た。
「こちらのランプとソファが最近、入荷したものなんですよ。いかがです?」
「おおっ…! コレは素晴らしい手触りだ!」
男性はうっとりした様子で、ランプとソファの手触りを楽しんだ。
「よし! いただこう!」
「ありがとうございます」
2人が会計に向かっている間、ミナはこっそりため息をついた。
「あ~あ、売れちゃったぁ」
「なぁに? 欲しかったの?」
「結構ステキだったから。でもスッゴク高いんだもん。見るだけでいいや」
「そうしなさいな。ミナには可愛い家具の方が似合うわよ」
「えへへ、そうかな?」
笑顔のミナに、マカも笑顔で返す。
「もちろん。…ああいう家具は、もうちょっと大人になってからね」
「そうだね。ちょっと早い気がするし。う~ん…。でもあのお人形は、ちょっと本気で欲しいカモ」
「人形…」
「うん、でもお人形の方が家具より高いし、人気があるからすぐ売れちゃうの。入荷し辛い商品だから、嬉しい悲鳴だって、カガミさんが言ってた」
「そう…ね。確かに手に入れるのは難しいかもね」
マカはぎゅっと唇を噛んで、カガミの方を向いた。
男性は上機嫌でカードで支払っていた。
しかし会計の途中で、カガミはショーウィンドウに飾っていた人形を紹介する。
すると男性は興奮し、3体とも購入した。
「あっ、あ~。お人形まで持ってかれたぁ」
「お人形じゃなくても」
マカはミナに満面の笑顔を見せた。
「私がぬいぐるみを作ってあげるわ。可愛いウサギとクマの」
「えっ!? ホント? 嬉しい!」
「じゃあ今日はもう帰りましょう。買わないのにいつまでもここにいたら、お店の邪魔になるわ」
「そうだね。マカ、可愛いの作ってね♪」
「もちろん!」
2人は会計を邪魔しないように、こっそり店を出た。
しかし店を出る瞬間、赤眼のマカと意味ありげに微笑むカガミの視線は、確かに絡み合った。
店を出てしばらくしてから、マカは口を開いた。
「…ねぇ、ミナ」
「なにぃ?」
「あのお店、行くのやめない?」
「えっ! 何で?」
「だって高そうな商品ばかり置いてるし、お金持ちの人しかお客さんになれないんでしょ? 私達みたいな女子高校生が行っても、お店の邪魔になるだけよ」
「それはそうかもしれないけど…」
「店長のご好意に甘えちゃダメよ。もう十八になるんだから」
「…分かったぁ。マカがそう言うなら」
「ありがと、ミナ」
駅でミナと別れ、マカは従兄の経営するアンティークショップを訪れた。
「…相変わらずここは客がいなくて落ち着くな」
「ヒドイ言い様ですね。マカ」
苦笑する店主ことソウマに、マカはため息をついて見せる。
「ライバル店が出ているんだから、少し経営方法考えたらどうだ?」
「ああ、あの街外れの…。でもあっちとこっちでは取り揃えているモノが違いますしねぇ」
そう言って苦笑するソウマ。
マカは肩を竦め、思い出していた。
あの人形と家具のことを。
「そうだな。ここの商品はあくまでも成分は物からできているが…」
カガミの姿を思い浮かべ、マカは険しい表情になった。
「あの店の商品の材料は、全て人間だからな」
【終わり】
「ここのソファとかランプとか、ステキじゃない?」
確かにミナが言う通り、ソファやランプは美しい皮張りだった。
安心するような肌の色をしており、一切模様や刺繍がされていない。
そのシンプルさが、不思議な魅力を持つ。
だが、マカの眉尻が上がる。
「…ミナ、これは…」
「やあやあ、こんにちは」
マカの声を遮り、店内に1人の中年男性が入ってきた。
高そうなスーツを着た中年男性は、上機嫌でカガミに話しかける。
「店主、今日は新製品が入ったとの事で来たのだが…」
「ええ、あちらの家具ですよ」
カガミがそう言って指した方向に、マカとミナがいることをはじめて男性は気付いた。
「おや、失礼。お嬢さん達が先客だったんだね」
「いっいえ、見に来ただけですから!」
ミナは慌てて家具から離れ、マカの背後に隠れた。
「ステキなアンティークショップがあると言われて、見学に来ただけですからお気になさらないでください」
そう言ってマカはミナを連れて、家具売り場から引いた。
「すまないね。楽しみにしていたもので」
カガミの案内で、男性は家具売り場に来た。
「こちらのランプとソファが最近、入荷したものなんですよ。いかがです?」
「おおっ…! コレは素晴らしい手触りだ!」
男性はうっとりした様子で、ランプとソファの手触りを楽しんだ。
「よし! いただこう!」
「ありがとうございます」
2人が会計に向かっている間、ミナはこっそりため息をついた。
「あ~あ、売れちゃったぁ」
「なぁに? 欲しかったの?」
「結構ステキだったから。でもスッゴク高いんだもん。見るだけでいいや」
「そうしなさいな。ミナには可愛い家具の方が似合うわよ」
「えへへ、そうかな?」
笑顔のミナに、マカも笑顔で返す。
「もちろん。…ああいう家具は、もうちょっと大人になってからね」
「そうだね。ちょっと早い気がするし。う~ん…。でもあのお人形は、ちょっと本気で欲しいカモ」
「人形…」
「うん、でもお人形の方が家具より高いし、人気があるからすぐ売れちゃうの。入荷し辛い商品だから、嬉しい悲鳴だって、カガミさんが言ってた」
「そう…ね。確かに手に入れるのは難しいかもね」
マカはぎゅっと唇を噛んで、カガミの方を向いた。
男性は上機嫌でカードで支払っていた。
しかし会計の途中で、カガミはショーウィンドウに飾っていた人形を紹介する。
すると男性は興奮し、3体とも購入した。
「あっ、あ~。お人形まで持ってかれたぁ」
「お人形じゃなくても」
マカはミナに満面の笑顔を見せた。
「私がぬいぐるみを作ってあげるわ。可愛いウサギとクマの」
「えっ!? ホント? 嬉しい!」
「じゃあ今日はもう帰りましょう。買わないのにいつまでもここにいたら、お店の邪魔になるわ」
「そうだね。マカ、可愛いの作ってね♪」
「もちろん!」
2人は会計を邪魔しないように、こっそり店を出た。
しかし店を出る瞬間、赤眼のマカと意味ありげに微笑むカガミの視線は、確かに絡み合った。
店を出てしばらくしてから、マカは口を開いた。
「…ねぇ、ミナ」
「なにぃ?」
「あのお店、行くのやめない?」
「えっ! 何で?」
「だって高そうな商品ばかり置いてるし、お金持ちの人しかお客さんになれないんでしょ? 私達みたいな女子高校生が行っても、お店の邪魔になるだけよ」
「それはそうかもしれないけど…」
「店長のご好意に甘えちゃダメよ。もう十八になるんだから」
「…分かったぁ。マカがそう言うなら」
「ありがと、ミナ」
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「ヒドイ言い様ですね。マカ」
苦笑する店主ことソウマに、マカはため息をついて見せる。
「ライバル店が出ているんだから、少し経営方法考えたらどうだ?」
「ああ、あの街外れの…。でもあっちとこっちでは取り揃えているモノが違いますしねぇ」
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マカは肩を竦め、思い出していた。
あの人形と家具のことを。
「そうだな。ここの商品はあくまでも成分は物からできているが…」
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「あの店の商品の材料は、全て人間だからな」
【終わり】
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