crazy antique shop【マカシリーズ・19】

hosimure

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ミナに連れられて、マカは家具売り場に到着した。

「ここのソファとかランプとか、ステキじゃない?」

確かにミナが言う通り、ソファやランプは美しい皮張りだった。

安心するような肌の色をしており、一切模様や刺繍がされていない。

そのシンプルさが、不思議な魅力を持つ。

だが、マカの眉尻が上がる。

「…ミナ、これは…」

「やあやあ、こんにちは」

マカの声を遮り、店内に1人の中年男性が入ってきた。

高そうなスーツを着た中年男性は、上機嫌でカガミに話しかける。

「店主、今日は新製品が入ったとの事で来たのだが…」

「ええ、あちらの家具ですよ」

カガミがそう言って指した方向に、マカとミナがいることをはじめて男性は気付いた。

「おや、失礼。お嬢さん達が先客だったんだね」

「いっいえ、見に来ただけですから!」

ミナは慌てて家具から離れ、マカの背後に隠れた。

「ステキなアンティークショップがあると言われて、見学に来ただけですからお気になさらないでください」

そう言ってマカはミナを連れて、家具売り場から引いた。

「すまないね。楽しみにしていたもので」

カガミの案内で、男性は家具売り場に来た。

「こちらのランプとソファが最近、入荷したものなんですよ。いかがです?」

「おおっ…! コレは素晴らしい手触りだ!」

男性はうっとりした様子で、ランプとソファの手触りを楽しんだ。

「よし! いただこう!」

「ありがとうございます」

2人が会計に向かっている間、ミナはこっそりため息をついた。

「あ~あ、売れちゃったぁ」

「なぁに? 欲しかったの?」

「結構ステキだったから。でもスッゴク高いんだもん。見るだけでいいや」

「そうしなさいな。ミナには可愛い家具の方が似合うわよ」

「えへへ、そうかな?」

笑顔のミナに、マカも笑顔で返す。

「もちろん。…ああいう家具は、もうちょっと大人になってからね」

「そうだね。ちょっと早い気がするし。う~ん…。でもあのお人形は、ちょっと本気で欲しいカモ」

「人形…」

「うん、でもお人形の方が家具より高いし、人気があるからすぐ売れちゃうの。入荷し辛い商品だから、嬉しい悲鳴だって、カガミさんが言ってた」

「そう…ね。確かに手に入れるのは難しいかもね」

マカはぎゅっと唇を噛んで、カガミの方を向いた。

男性は上機嫌でカードで支払っていた。

しかし会計の途中で、カガミはショーウィンドウに飾っていた人形を紹介する。

すると男性は興奮し、3体とも購入した。

「あっ、あ~。お人形まで持ってかれたぁ」

「お人形じゃなくても」

マカはミナに満面の笑顔を見せた。

「私がぬいぐるみを作ってあげるわ。可愛いウサギとクマの」

「えっ!? ホント? 嬉しい!」

「じゃあ今日はもう帰りましょう。買わないのにいつまでもここにいたら、お店の邪魔になるわ」

「そうだね。マカ、可愛いの作ってね♪」

「もちろん!」

2人は会計を邪魔しないように、こっそり店を出た。

しかし店を出る瞬間、赤眼のマカと意味ありげに微笑むカガミの視線は、確かに絡み合った。



店を出てしばらくしてから、マカは口を開いた。

「…ねぇ、ミナ」

「なにぃ?」

「あのお店、行くのやめない?」

「えっ! 何で?」

「だって高そうな商品ばかり置いてるし、お金持ちの人しかお客さんになれないんでしょ? 私達みたいな女子高校生が行っても、お店の邪魔になるだけよ」

「それはそうかもしれないけど…」

「店長のご好意に甘えちゃダメよ。もう十八になるんだから」

「…分かったぁ。マカがそう言うなら」

「ありがと、ミナ」


駅でミナと別れ、マカは従兄の経営するアンティークショップを訪れた。

「…相変わらずここは客がいなくて落ち着くな」

「ヒドイ言い様ですね。マカ」

苦笑する店主ことソウマに、マカはため息をついて見せる。

「ライバル店が出ているんだから、少し経営方法考えたらどうだ?」

「ああ、あの街外れの…。でもあっちとこっちでは取り揃えているモノが違いますしねぇ」

そう言って苦笑するソウマ。

マカは肩を竦め、思い出していた。

あの人形と家具のことを。

「そうだな。ここの商品はあくまでも成分は物からできているが…」

カガミの姿を思い浮かべ、マカは険しい表情になった。

「あの店の商品の材料は、全て人間だからな」


【終わり】

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