ケータイ電話の都市伝説【マカシリーズ・1話】

hosimure

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「つーかさ。ミナ、大丈夫なの?」
 近くにいたクラスメートが恐る恐る声をかけてきた。
 いつもならミナがいる時にしか話しかけてこないのだが、ミナの変化に少なからず戸惑っているようだ。
「ミナ、最近ずっとケータイばっか見てるでしょ?」
「それってさ、例のサイトのヤツなんでしょう?」
「ヤバくない? だってあのサイトってさ…」
 マカはクラスメート逹が語る都市伝説を黙って聞いていた。
 昼休みが終わるギリギリになって、ミナは戻ってきた。
 だがその顔色は真っ青だった。


 ―そして放課後。
「ミナ、例のサイト教えて」
「え?」
 マカはケータイ片手に、ミナに話しかけた。
「私も見てみる。効果を調べてみたい」
「でっでも、マカに【解放】するところなんて…」
「無いことは無いんだ。だから試してみたい」
 はっきりと言われ、真っ直ぐに見つめられてはイヤとは言えない。
「…分かった」
 ミナは自分のケータイを取り出し、例のサイトを画面に出して、マカに渡した。
「ありがと」
 マカは両手で二つのケータイを操作した。
 一分も経たないうちに、ミナのケータイを差し出した。
「今日はどうする? 一緒に帰るか?」 
「う…うん」
 その帰り道、二人の間には沈黙しかなかった。
 いつもならミナが話しかけて、マカが淡々と答える光景が繰り広げられるはずだったが…。
「ねぇ、マカ」
「何?」
「怒ってる?」
「何を?」
「…サイトのこと」
「別に。ミナがやりたかったことなら、黙ってやってても文句は言えまい」
「でも…怒っているように見える」
「気のせいだろ」
 しかしどことなく暗雲が漂っているように見えるのは気のせいではないだろう。
 マカが自覚しているのかどうか分からないが、結構ヤキモチをやく。
 ミナが他の友達と仲良くしたり、マカに黙って何かするとかなり不機嫌になる。
「ねっねえ、マカが【解放】したいことって何?」
「ミナは?」
「あっあたしは…」
 言い詰まっているミナを横目に、マカは黙々と歩く。
「…ああ、そうだ。ミナ、例のサイトの噂、最後まで知っているのか?」
「最後?」
「例のサイト、【解放】するものを制限しないらしいな。だから【解放】されたものは中毒症状が出るらしい。【解放】されたくてたまらなくなるらしい」
「中毒って…」
「症状としては、ずっとサイトを見てしまうらしい」 
 マカは振り返り、ミナの眼を真っ直ぐに見つめた。 
「ミナ、昼休み。教室飛び出した後、何していたんだ?」
「何って…」
 ミナの顔色はすでに白かった。
 そのままミナの家の前まで来たので、話しは中断した。


「…何って…」
 ミナはぼんやりと言葉を繰り返した。
 今はもう夜。そろそろ寝る時間だ。
 しかし眠気が無い。
 マカの言葉が頭から離れないのだ。
 このサイトの悪いウワサはある程度知っていた。
 でも今更止めるワケにはいかなかった。
「マカにやっと近くなったのにっ…!」
 ギリッと唇を咬んだ。
 マカは成績優秀者として、そしてあの人離れした雰囲気によって、一目置かれた存在だった。
 それが口数少なく、取っ付きにくい性格でもだ。
 そんなマカが、自分と親しくしてくれる理由が分からなかった。


 出会いは入学式の時。
 クラスに入って、マカと眼が合った。
 それだけでマカの方から近づいて来てくれた。
 それ以来、親友と呼べるぐらいまで仲良くなったつもりだった。
 しかし不安は募るばかり。
 マカに一度、何故『自分』だったのか尋ねてみた。
「一緒にいるのが楽だから。ミナは純粋だから」
 …と、的をえない返答だった。 
 マカは『自分』に『何』も求めていない。
 そう思うと悲しくて、情けなかった。
 だから望んだ。

―情けない『自分』からの【解放】を―

 なのにマカは認めてくれない。
 勉強もスポーツも、成績が上がった。
 意見をはっきり言うようになって、周囲の評判も良くなった。
 なのにマカは喜んでくれない。
「足りない…のかな?」
 まだ【解放】が足りない。だからマカは満足してくれない。
「…なら」
 手に持っていたケータイを手慣れた操作で例のサイトを開いた。
 パスワードを入力すると、画面が変わった。
 真っ黒の画面に浮かぶ、青白い魔法陣。
 サイトに登録すると、質問メールが日に一度届いた。
 他愛のない質問だった。 
 だがある日、自分は選ばれたというメールが届いた。
 そのメールにあったパスワードは、【解放】する為の魔法のパスワード。
 サイトにアクセスし、パスワードを入力すると見れるこの魔法陣。
 この魔法陣を見ていると、自分の中から何かが溢れ出してくる。
 すると何にでも自信を持てるようになった。
 不思議なことに、見れば見るほど気分が良くなる。

―あたしは選ばれた。【解放】するにふさわしい者として…―
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