Boys Summer Love!

hosimure

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「…まっ、別にいいよ」

「えっ、ホント!?」

「アンタ、長くいる予定?」

「とりあえず夏休みいっぱいはいる予定だから、1ヶ月はいるかな?」

「そのぐらいなら、オレも平気だから」

「ありがとう! じゃあ早速お夕飯持って来るね!」

僕は意気揚々と部屋を出た。

夜の屋敷は怖いけど、明かりで人のいる所が分かるのは良いな。

戻る中、僕はそう思った。

でもふと、何でこんなに嬉しい気持ちになっているのか、不思議に思った。

あのうるさい人達から逃れられるから?

それとも…由月と一緒にご飯を食べられるから?

…そのどっちのような気がする。

由月とは恋人にはなれないけれど、良い友達で良い従兄になりたいと思った。

どうやら伯母が言った通り、少しは僕に興味を持ってくれているみたいだし、手ごたえはある!

僕は笑顔で広間に戻って、伯母に由月と今後一緒に食事することを決めたことを伝えた。

すると伯母は目を真ん丸くした。

「あらまあ…。本当に雅貴くんのことを気に入ったのね」

まあ多少はお姉さん達の同情もあるだろうけど、そこは伏せておいた。

「ありがとう。でも御膳は重いから、わたしも手伝うわ」

「ありがとう!」 

伯母は由月の部屋の前まで来ると、笑顔で去って行った。

伯母は由月に懐かれているみたいだし、声ぐらいかければいいのに…。

でも他の子供達の手前、あんまり由月ばかり甘やかすこともできないのかもしれないな。

そう思いながら、僕は声を出した。

「由月、ご飯持って来たよ」

「ああ」

由月は襖を開けてくれた。

「母さん、戻ったんだな」

「うっうん。食事中に抜け出してきちゃったから」

そう言えば由月は足音で人が分かるんだったな。

「…これから料理は自分で運ぶ」

「えっ?」

「母さんの手を煩わせてばかりもいられないからな」

そう言って伯母が持ってきたお膳を持って、部屋の中に入った。

僕も慌てて中に入る。

「由月はさ、伯母さんのことは好きなんだよね?」

「ついでに弟や妹も。親父や姉貴達は正直好きじゃない」

「でも伯父さんも悪気があるワケじゃないと思うよ? 由月に立派な跡継ぎになってほしいんじゃ…」

「今更跡継ぎなんて大層なことを言っても、所詮この家と畑と田んぼ土地ぐらいなんだ。そう重いもんじゃないのに、あのバカ親父は…」

「でっでもホラ、昔は知名度あったんだろう? 金や温泉が取り放題だったって聞いた」 

「それで調子付いて取りまくったから、今じゃこんな生活なんだけどな」

…おっしゃる通りです。

「それをあのバカ親父はいつまでも過去の栄光にしがみ付きやがって…。考えが古臭いんだよ」

「でも一応、歴史ある家系だし…」

「最近じゃ、一般の家系図と大して変わらないさ」

いや、由月のご家族は一般とは激しくかけ離れている…とは言えなかった。

僕だって、同じ失敗を二度も繰り返したくはない。

「それより食おうぜ。冷める」

「ああ、うん」

伯母の料理は美味しかった。

僕の両親は共働きで、手料理はあまり食べていなかった。

だから久し振りの手料理に、心が温まる。

「何ニヤニヤしてんの?」

「へ? あっああ、伯母さんの料理美味しいなって」

「フツーじゃないの?」

「そうかな? 僕は美味しく感じられるけど」

「ふーん」

素っ気無いながらも、僕を気にかけてくれることに、嬉しさを感じていた。

そこでふと思う。

この心の温かさは、伯母の料理が美味しいからだけだろうか?

それとも…由月が一緒にいるから? 


僕は答えを出せないまま、由月と夏休みを過ごした。

由月はいつも夏休みは昼・夜逆転の生活を送るらしいけど、僕の相手をする為に朝から起きる生活を続けた。

相変わらず食事は僕と2人っきりだけど、外へ遊ぶことも多く、伯父と伯母は安心しているようだった。

母はどうやら言いたいことをすっかり言い尽くしてしまったらしく、大人しく田舎生活を送っている。

父は田舎が珍しいらしく、伯父にいろいろ聞いたりして、楽しんでいた。

僕は山で遊んだり、川で遊んだり、畑で野菜や果物を取って食べたりと、田舎を満喫した。

その中で思ったことだけど、由月は別に周囲の人間に苦手に思われているワケじゃないみたいだ。

独特な雰囲気と、ちょっと気難しい性格のせいで、近寄りがたいと思われているらしい。

まあ僕もちょっとそう思うけど、話してみれば親しみやすいし、優しい。

一緒にいて楽しいと思える。

由月みたいなタイプ、今まで周りにいなかったせいか、ずっと側にいて、彼のことを知りたいと思った。

夏休みも半分を過ぎる頃には、僕は彼の部屋で寝泊りするほど、仲が良くなった。 


3歳の歳の差なんて感じないぐらい、僕と由月は親しくなっていった。

だけど…楽しい時間はあっと言う間に過ぎて、終わりを迎える。

最後の日、お昼には帰ることになった。

けれど由月は起きてこなかった。

朝、僕が起きる頃にはまだ布団で寝ていた。

時間も早かったし、僕は声をかけずに部屋から出た。

荷物はすでに玄関先に置いていたし、このまま帰ることは可能だけど…。

僕は出て行く前に、由月の部屋に向かった。

「由月? 起きてる?」

襖の前で声をかけるも、返事は無い。

そっと開けて見ると、まだ布団の中だった。

「由月、入るよ」

声をかけて、中に入る。

由月の背中を見ながら、座った。

顔は隠していて、様子が分からない。

でも起きてはいるみたいだ。

「由月…。僕は帰るけど、また来年の夏休みに来るから」

「…冬休みは来ないのか?」

返事をしてきたことに驚いた。

「うっうん。冬休み、ウチの学校短いんだ。それに父さんの実家に行かなきゃだし…。こっちは大雪が降るみたいだから、行くのも帰るのも大変みたいなんだ」

…自分で言っててなんだけど、言い訳がましいな。

「…確かに雪はヒドイからな」 
そう言って由月はゆっくり起き上がった。

「来年の夏休み、絶対にウチに来る?」

不安げに揺れる眼で、僕を見る。

「もっもちろんだよ! 両親を説得してでも、必ず来るから」

「そっか…。なら良い」

そう言った彼は、少し微笑んでいた。

「あっ、そうだ。ケータイ持ってる?」

「うっうん」

両親が共働きで側にいてくれることが少ないので、携帯電話は持たされていた。

「ちょっと貸して」

「うん、どうぞ」

由月は僕の携帯電話を受け取ると、素早く操作した。

「―よし。オレのケータイ番号とメアド、それにパソコンのメアドも入れといたから」

「あっありがとう」

手馴れているなぁ。

パソコンもそうだけど、彼は機械に強いみたいだ。

「オレは基本的にヒマだから、いつでも連絡して」

「うん! 必ずするよ!」

「じゃあ、約束」

由月は小指を立てて出した。

「うん、約束。必ず連絡するよ」

僕は自分の小指を絡ませた。

そして彼を部屋に残して、僕は邸を出た。

絶対に来年も彼に会いに来ようと、心に決めて。
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