花粉症の男性が出会った植物

hosimure

文字の大きさ
2 / 4
血を求める植物

2

しおりを挟む
あの男も日本語が上手かったが、肌の色は黒かった。

それに顔の半分しか見ていないが、日本人としての顔立ちではない。

さしずめ自国の植物を売りに、出稼ぎに来た外国人か。

まあそんなヤツがいたって、不思議じゃないがな。

それに植物は日本に輸入するとき、検査を受けているだろうし。

多少妙なところがあっても、買った本人に影響がなければ良いんだ。

オレは説明書に書いていた通り、水をコップ一杯用意した。

そしてちょっとイヤだったが、針で指先を刺し、一滴の血をまぜ、植物に与えた。

今はもう深夜だ。陽が当たっていなければ、良いだろう。

オレはその日、そのまま眠った。

植物の成長のことを思い浮かべながら…。

自分がどんな恐ろしいことをしたのか、考えもしないで…。



翌日、起きて見ると植物の異変に気付いた。

昨夜、葉っぱは淡い色だったのが、今ではハッキリとした緑色になっていた。

「コレ…栄養のおかげ、か?」

にしても、あまりに激変過ぎる気が…。

でもまあ、悪いことじゃないよな?

オレは気がかりになりながらも、会社に出勤した。

そして帰り道、あの男へ会いに行こうと思い、裏道を歩いた。

しかし、男はいなかった。

「今日は来なかったのかな?」

路上だし、そういうこともあるだろう。

オレは家に真っ直ぐに帰った。

そして水をやろうとした。

しかし予想以上に針を深く刺してしまい、血は3滴ほど水に入ってしまった。

「やばっ…。でも説明書には多くやるなって書いてないよな?」

改めて、説明書に眼を通す。


【④お客様が与えられた血の量に応じて、植物の成長は変わります。お客様のご希望を受け、美しい姿を見せてくれます】

「…なら、平気か」

オレは大して考えず、水をやった。

「この調子の成長なら、そろそろつぼみの一つか二つ、見ても大丈夫そうだな」

買った時に咲いていた花は、すでにしぼんでいた。

他のつぼみはまだ、葉っぱと同じ色をしていて、触ると固かった。

けれど昨夜よりは格段にふくらんでいる。

「…どんなふうに咲き誇るのかな?」

昨夜の一輪の花では、花粉症は起きなかった。

けれどあの花はあまりに小さ過ぎる。

この植物の形態であれば、小さな可愛らしい花がたくさん咲くのだろう。

その時が楽しみだ―そう思っていた。

この時までは。


しかしまたもや翌朝、びっくりした。

あれほど固かったつぼみは、今や色を変え、柔らかそうにふくらんでいた。

「そんなまさかっ!」

おそるおそる触れてみると、確かに柔らかい感触。

鼻を近付けると、甘い匂いがかすかに漂ってきた。

「…血が、栄養になっているのか」

にわかには信じられなかった。

しかし現実は目の前にある。

オレは不思議な高揚感を感じた。

この植物は、まるで血を分けた我が子のようだ。

おかしな言い方かもしれないけれど、オレの血を栄養とし、ここまで成長するなんて、自分の子供とも言える。

オレはしかし、心残りがありながらも、会社へ向かった。

収入を得なければ、オレが生きていけないから…。

けれど本心を言えば、この植物の側にずっといたかった。

成長を一時も眼を離さず、見つめ続けていたかった。


オレは仕事が終わると、走って家に帰った。

植物は朝見た時よりも、少しつぼみがふくらんでいた。

オレは買ってきたミネラルウォーターを開けた。

今までは水道水だったけれど、植物用の水もあるのだ。

途中、花屋で買ってきた。植物に良いと思って。

コップいっぱい分そそぎこむと、今度はカッターで指を切った。

ボタボタ…

透明な水が、赤い血がまじり、濁る。

けれどそれを植物にそそぎこむ。

「これで元気になってくれよ♪ お前がどんな成長した姿を見せてくれるのか、楽しみだ!」

翌朝、起きて見ると、予想が的中した!

花が咲いていたのだ!

淡いピンク色の、可愛らしい花々が咲いていた!

そして柔らかくも甘い匂いが、部屋に満ちていた。

けれど花粉症の症状は起きない。

どうやらあの男が言った通り、本当に相性が良いみたいだ。

オレとこの植物は。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

意味がわかると怖い話

邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き 基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。 ※完結としますが、追加次第随時更新※ YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*) お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕 https://youtube.com/@yuachanRio

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...