光輪学院高等部・『オカルト研究部』

hosimure

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最後の封印

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榊は一人、廊下を歩いていた。

耳が痛くなるほどの静けさがある。

プレートを両手に持ち、真剣な顔で歩く。

彼が向かっているのは、鐘のある場所だ。

本校舎の中心部は、鐘がある部屋までふき抜けになっている。

鐘の音を良く響かせる為に、そういう構造になっているのだと、前部長から聞いていた。

鐘のある部屋まで来ると、制服の胸ポケットから金色の鍵を取り出し、鍵穴に差し込んだ。

がちゃ……

本来ならば、鐘を鳴らすもの以外は持たない鍵。

しかしオカルト研究部の部長だけは、この鍵を代々受け継いでいた。

「……最後の封印にかかせない物だからね」

榊は苦笑し、扉を開け、中へと入る。

木製の螺旋階段が眼に映る。

外の薄い光が、階段をわずかながらに照らし出している。

榊は階段を上り始めた。

ギシギシ……

上るたびに、木の音が鳴る。

……まるで封印を拒んでいるかのように。

そして階段を上ると、一つの鉄製の扉の前に出る。

榊は再び鍵を取り出す。今度は銀の鍵だ。

同じように鍵穴に差し込み、扉を開けた。

 ビュオッ……!

生温い風が、体を包み込んだ。

「……そんなに拒絶しても、もう遅いよ。封印はもうすぐ終わる」

誰に言うまでも無く、榊は呟いた。

外は相変わらず月の無い、薄闇の空。

榊の目の前に、学校の鐘がある。

1メートル近くある金色の鐘。

この鐘には<力>が込められていて、鳴らすごとに邪気を払う<力>を発揮する。

代々オカルト研究部部長が語り継いできた歴史。

この鐘の秘密は、他の部員達は知らない。

鳴らす者は、創立者の血縁者。

この土地に邪気が満ちぬよう、そして結界の力を強くさせる為に、鳴らす。

だが……120年という歳月はあまりに長過ぎた。

血は薄くなり、同時に<力>も弱くなってしまった。

しかし彼等は一生懸命に、祈りを込めて鳴らしている。

だが力及ばず……封話部ことオカルト研究部に力を借りている形になってしまった。


「理事長も悪い人ではないんだけどなぁ」

創立者の血を引く理事長と、部員達の間にはどうも亀裂が入っている。

板挟みになっている榊だが、どちらも言い分も分かる。

力が及ばずイラだっている理事長と、望まぬ力を得て生まれついた部員達。

そこには深い溝が出来ても仕方が無いというもの。

榊は鐘の真下に来た。

そこには床から生えたような、短い石の階段があった。

鐘の中を見上げれば、闇が口を開けているように見える。

榊は深く息を吸い、石の階段を上る。

そして鐘の内側に、首まで入った。

中の錆び臭さに、思わず榊の顔が歪む。

けれど勇気を振り絞り、プレートを鐘の内部にはめ込んだ。


闇の中で、プレートをはめ込む場所など見つけられない。

けれどこの鐘は特殊。

邪気を封じたレンズをはめこんだプレートならば、どこからどう入れようと、鐘にはめ込めるのだ。
 
そしてはめ込んだ後、榊は闇の中に手を伸ばした。

すると榊の手に、細い紐が握られた。

紐を掴んだまま、榊はゆっくりと階段を下りた。

「さて……」

榊は数回深呼吸をすると、緊張した面持ちで、紐を大きく引っ張った。

 キーンゴーンカーンゴーン……

鐘の音が、周囲に響き渡った。

すると鐘は金色に輝き出し、その光は音色と共に辺りに散らばった。

学院中に、光が音色と共に広まる。

「始まった……!」

神無月は身構えた。

光は自分の目の前に集まり、一つの十字架の形になり、そして――封印の場に突き刺さる。

同じように、四ヶ所の封印の場では、新たな十字架が形成された。

すると五個の十字架は光の柱と化し、空に伸びる。

鐘の音が響き渡る中、光はやがて学院全てを飲み込み、5人はその眩しさに目を閉じた。


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