上 下
7 / 7

夜想曲

しおりを挟む
コウガとシキはマノンの影に包まれ、場所を移動した。



「ここは…」



「山の中、か?」



「そうだよ」



マノンの声に、2人は慌てて振り返った。



シキはマノンの顔を見て、警戒した。



「貴様っ、マノンか!」



刃を向けるシキに、マノンは笑顔を向ける。



「ヤダなー。命の恩人に、刃なんて向けないでよ? 大丈夫、ボクはキミ達を喰らうつもりは全然無いから」



「なら何故助けた?」



「強いて言うなら、姉さんへの嫌がらせ? 姉さん、いっつも澄ました顔してるからさ。たまには怒らせたくて」



楽しそうにクスクス笑うマノン。



「ああ、安心して良いよ。もう用は無いから、二人とも好きな所に行きなよ」



「信用できるか!」



「ん~。でもボクとやり合っても、シキ、キミは勝てないデショ? お互い体力のムダになるだけだよ」



「しっシキ…」



シキは不安そうな顔をしているコウガを見て、渋々刃を下ろした。



「そうそう♪ このままどこにでも行きなよ。姉さんの力にならないんなら、ボクはキミ達を巻き込まずに済むし」



「…本当に俺達には関わらないんだな?」



「うん。と言うか、興味ないから。じゃあね」



ヒラヒラ手を振るマノンは、闇に溶けて消えた。



静寂が訪れた時、コウガはシキの腕を掴んだ。



「シキ、オレを連れてって!」



「何を言い出すんだ? お前はこのまま元の生活に…」



「ムリ。アイツら死んだし、オレが疑われる。それに…オレはここに思い残すことなんて無いんだ」



切なく語るコウガを、シキは無言で見た。



「だからシキと生きたい。邪魔になったら、シキが喰い殺してよ」



「…そうだな。非常食用に、連れて行くのも悪くはないな」



シキはコウガの手を掴んだ。



「オレと来い。コウガ」



「…うん! シキ。キミとならどこまでも」





【終わり】


しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...