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苦渋の決断だった。

利実は今でも妹のように思っているが、ここまで被害を出されては、いつまでも黙っているわけにはいかない。

それに利実がこうなってしまったのには、オレ達が引き金になってしまったのは自覚していた。

利実のことを、自分達が構ってやれるときだけ構っていた。

けれど都合がつかない時は、利実の気持ちも考えてやらず、突き放すように離れていった。

特に受験の時と、大学に入ってばかりの頃は、忙しくて話をすることすら難しかった。

それが利実の暴走に拍車をかけてしまったのだろう。

利実をここで見放すのは、オレ達の勝手になる。

だがオレ達は疲れてしまった。

大学内では味方はなく、同情する連中はいるものの、関わってこようとはしない。

グループにいる女性・2人など、最近では家から出て来なくなってしまった。

軽いノイローゼになってしまったらしく、休学している。

利実とは何度か話合ったが、その場で良い返事をするだけで、行動は改めてくれなかった。

最早、利実にはオレ達の言葉は何一つ届かないのだろう。

ゆえに全員で決めた。

今後一切、関わらないことを。 

そして告げた。

オレが電話で、利実に言った。

すると必死の声で、すがってきた。

けれどここで情けをかけては、元のもくあみだった。

だから心を鬼にして、考えを変えないことを言った。

するとしばらく沈黙した後、せめて最後に全員で旅行がしたいと言い出した。

それを他の仲間に告げると、別れの旅行としてならば…という答えになった。

その電話の後、利実は大学に顔を出すようになった。

今まで借りていたお金を全て返済し、男達とも縁を切った。

それに勤めていた店も辞め、外見も昔のように可愛らしい格好になり、メイクも控え目になった。

真面目になったと周囲の評判は上がったものの、オレ達の心の中は混乱していた。

二年前、オレ達が利実と話し合った直後の反応とよく似ていたからだ。

高校生の時も、注意すると利実は真面目な態度を取るようになった。

だからこそ、オレ達も安心してしまったのだ。

しかし今はもう違う。

オレ達もあの頃のままではないのだ。

事態が収拾してきたおかげで、仲間の2人が大学へ復帰した。

2人も旅行には参加する意思を見せ、しばらくは穏やかな日々を過ごした。 
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