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「それはそれで問題なんじゃ…」
「バカな女に引っ掛からないことは、良いことだろう? まあ任せておけよ」
そう言うと、四人がトイレから出てきた。
「んじゃ、そろそろバスに戻るか」
休憩時間は終わりに近付いていた。
席替えをしても、全員暗い面持ちのまま。
他の乗客達も静かになってしまい、何だか申し訳ない気分だった。
あんな騒ぎを起こしたんだ。
素直に旅を楽しむことは、難しいだろう。
しかし運が良かったのか、今日はこのまま目的の旅館へ着き、そのまま自由行動に入る。
夕飯までは時間があるし、各々自由に動く。
オレは利実を近くの森に呼び出した。
ここは旅館から近いが、木が多く、広い。
多少騒いでも平気だろう。
「利実、お前いい加減にしろ。お前がこの旅行で最後にするというから、みんな参加したんだぞ?」
「分かってる…。でもヒドイんじゃないの? いきなりグループから抜けろなんて!」
あ~あ、すっかり逆ギレだよ。
「それだけヒドイことを繰り返してて、オレ達に迷惑かけといて、よくそんなことを言えるな。大学でどれほどオレ達の身がせまかったか、想像できるか?」
教授達や生徒達から睨まれるのはいつものこと、嫌がらせを受けたのも数多くある。
大学でできた友達もほとんど去った。
大学を辞めろまで言われたが、必死に耐えてきた。
「特にあの2人はノイローゼにまで追い込まれたんだ! 本当だったら慰謝料請求されてもおかしくないんだぞ?」
「何よ! お金だったら払うわよ!」
「ああ、それが手切れ金となれば、最高だな!」
嫌味ったらしく言うと、利実の表情が強張った。
オレは冷静さを取り戻す為に、深呼吸した。
「…なぁ、もうオレ達に頼らなくったって、お前1人で大丈夫だろう? 仕事も勉強もできるし、友達や彼氏だって作れる。守る存在が必要な歳じゃないだろう?」
「でもっ! …アタシを見捨てなかったのは、あなた達だけなのよ」
利実の目から、大粒の涙が溢れる。
「それも今回の旅行までだ。終わればオレ達はお前との関係を全て断ち切る」
「っ!?」
「甘やかし過ぎたことは、オレ達のせいだと素直に詫びる。だが調子に乗り過ぎたのは、お前自身の身から出た錆びだ」
オレはきっぱり言い放った。
ここで言いよどめば、利実の思う壺だったから。
「そんなのっ…勝手過ぎるわよ! アタシのことさんざん甘やかしといて、手に負えなくなったらポイ捨てするの?」
「勝手は分かっているさ。でもお前には何度も忠告した。だが返事ばかり良くて、お前は何も変わろうとしなかっただろう?」
「変わったじゃない! 真面目になったわよ!」
「それも今だけだろう? 時が経てばお前はまた同じことを繰り返す。それはクセというより、病気だ。だから突き放す。それがその病気を治す、一番の薬だと思ったからな」
「ヒドイ…!」
「恨んでくれて結構。オレ達も同じ強さでお前を恨んでいるからな」
涙を流しながら睨まれても、すでに罪悪感など感じない。
「今後お前がどんなバカをやらかそうとも、オレ達は一切関与しない。だから好き勝手に生きるといい」
「何で…和城がそんなこと言うの?」
「オレが一番強く思っているからだ」
弱っていく仲間を見るのは辛かった。
自分がどんなに責められようとも、仲間の苦しむ姿を見続けるよりマシだった。
そもそも利実をグループに入れることを許可したのはオレだった。
全てのはじまりは、オレの責任だと言える。
「何でっ…。あっアタシはずっと…」
利実は強く手を握り、顔を上げた。
「ずっと和城のことが好きだったのに!」
「はあ?」
「ずっと…高校に入ってから、和城を一目見て好きになったの! だからグループに入りたかった!」
また唐突な話だな…。
軽い頭痛がしてくる。
「アタシのこと見てほしくて、一緒にいたのに!」
「一緒にはいただろう?」
「それはグループの仲間としてじゃない! アタシと2人っきりで会ってはくれなかった!」
確かにそれは言えてる。
オレはそもそも女という存在が苦手だった。
キライではない。苦手なんだ。
だから利実に関わらず、女と2人でいることはできなかった。
「だからっ…だからバカなことをし続けた! そうすればその時だけは、あなたはアタシのことを思ってくれるからっ…!」
「でもその感情は負のものだ。それで満足してしまった時点で、恋愛感情じゃなくなったんじゃないのか?」
「そっそれは…!」
言葉に詰まるところを見ると、利実も少しは感じていたらしい。
振り向いてくれないオレに対し、憎しみを抱いていることを。
「お前のオレへの気持ちに気付けなかったことは素直に謝る。…だがそれとお前の仕出かしたことの重さは全く違う」
「バカな女に引っ掛からないことは、良いことだろう? まあ任せておけよ」
そう言うと、四人がトイレから出てきた。
「んじゃ、そろそろバスに戻るか」
休憩時間は終わりに近付いていた。
席替えをしても、全員暗い面持ちのまま。
他の乗客達も静かになってしまい、何だか申し訳ない気分だった。
あんな騒ぎを起こしたんだ。
素直に旅を楽しむことは、難しいだろう。
しかし運が良かったのか、今日はこのまま目的の旅館へ着き、そのまま自由行動に入る。
夕飯までは時間があるし、各々自由に動く。
オレは利実を近くの森に呼び出した。
ここは旅館から近いが、木が多く、広い。
多少騒いでも平気だろう。
「利実、お前いい加減にしろ。お前がこの旅行で最後にするというから、みんな参加したんだぞ?」
「分かってる…。でもヒドイんじゃないの? いきなりグループから抜けろなんて!」
あ~あ、すっかり逆ギレだよ。
「それだけヒドイことを繰り返してて、オレ達に迷惑かけといて、よくそんなことを言えるな。大学でどれほどオレ達の身がせまかったか、想像できるか?」
教授達や生徒達から睨まれるのはいつものこと、嫌がらせを受けたのも数多くある。
大学でできた友達もほとんど去った。
大学を辞めろまで言われたが、必死に耐えてきた。
「特にあの2人はノイローゼにまで追い込まれたんだ! 本当だったら慰謝料請求されてもおかしくないんだぞ?」
「何よ! お金だったら払うわよ!」
「ああ、それが手切れ金となれば、最高だな!」
嫌味ったらしく言うと、利実の表情が強張った。
オレは冷静さを取り戻す為に、深呼吸した。
「…なぁ、もうオレ達に頼らなくったって、お前1人で大丈夫だろう? 仕事も勉強もできるし、友達や彼氏だって作れる。守る存在が必要な歳じゃないだろう?」
「でもっ! …アタシを見捨てなかったのは、あなた達だけなのよ」
利実の目から、大粒の涙が溢れる。
「それも今回の旅行までだ。終わればオレ達はお前との関係を全て断ち切る」
「っ!?」
「甘やかし過ぎたことは、オレ達のせいだと素直に詫びる。だが調子に乗り過ぎたのは、お前自身の身から出た錆びだ」
オレはきっぱり言い放った。
ここで言いよどめば、利実の思う壺だったから。
「そんなのっ…勝手過ぎるわよ! アタシのことさんざん甘やかしといて、手に負えなくなったらポイ捨てするの?」
「勝手は分かっているさ。でもお前には何度も忠告した。だが返事ばかり良くて、お前は何も変わろうとしなかっただろう?」
「変わったじゃない! 真面目になったわよ!」
「それも今だけだろう? 時が経てばお前はまた同じことを繰り返す。それはクセというより、病気だ。だから突き放す。それがその病気を治す、一番の薬だと思ったからな」
「ヒドイ…!」
「恨んでくれて結構。オレ達も同じ強さでお前を恨んでいるからな」
涙を流しながら睨まれても、すでに罪悪感など感じない。
「今後お前がどんなバカをやらかそうとも、オレ達は一切関与しない。だから好き勝手に生きるといい」
「何で…和城がそんなこと言うの?」
「オレが一番強く思っているからだ」
弱っていく仲間を見るのは辛かった。
自分がどんなに責められようとも、仲間の苦しむ姿を見続けるよりマシだった。
そもそも利実をグループに入れることを許可したのはオレだった。
全てのはじまりは、オレの責任だと言える。
「何でっ…。あっアタシはずっと…」
利実は強く手を握り、顔を上げた。
「ずっと和城のことが好きだったのに!」
「はあ?」
「ずっと…高校に入ってから、和城を一目見て好きになったの! だからグループに入りたかった!」
また唐突な話だな…。
軽い頭痛がしてくる。
「アタシのこと見てほしくて、一緒にいたのに!」
「一緒にはいただろう?」
「それはグループの仲間としてじゃない! アタシと2人っきりで会ってはくれなかった!」
確かにそれは言えてる。
オレはそもそも女という存在が苦手だった。
キライではない。苦手なんだ。
だから利実に関わらず、女と2人でいることはできなかった。
「だからっ…だからバカなことをし続けた! そうすればその時だけは、あなたはアタシのことを思ってくれるからっ…!」
「でもその感情は負のものだ。それで満足してしまった時点で、恋愛感情じゃなくなったんじゃないのか?」
「そっそれは…!」
言葉に詰まるところを見ると、利実も少しは感じていたらしい。
振り向いてくれないオレに対し、憎しみを抱いていることを。
「お前のオレへの気持ちに気付けなかったことは素直に謝る。…だがそれとお前の仕出かしたことの重さは全く違う」
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