1 / 1
染色
しおりを挟む
その少女は編み物が好きでした。
毛糸でいろいろな物を作るのが好きでした。
周囲の人からの評判も良く、少女は嬉しく感じました。
大人しい少女にとって、編み物は唯一の特技だったのです。
そして少女はさまざまなものを作り上げてきましたが、ある日、それだけでは物足りなくなってきました。
やがて彼女は、毛糸に自分で色を染めようと思いました。
連休を利用して染物を学びに行き、みるみる腕を上げていきました。
最初、少女は毛糸を染めるのに花や草、植物を使っていました。
しかしやがて、虫を使った染色まで始めました。
虫はフンや、鍋で煮た汁を使ったりします。
虫から出た色とは思えないぐらいの美しい色を出すのです。
少女はすっかりその色の虜になってしまいました。
しかし周囲の人からは気味悪がられてしまうので、植物中心に染物を続けていました。
幸い少女の近所には小高い山がいくつかあり、植物が豊富にありました。
少女はそこへよく、1人で材料を採りに行っていました。
ところがある日、警察の人から呼び止められました。
何でもここ最近、行方不明になる人や動物が多いらしいのです。
夜中に1人で出歩いていた人や、外で飼っていたペットなどが失踪してしまう事件が立て続けに起こっていると言うのです。
物騒なので、1人ではあまり出歩かないようにと言われました。
少女は頷いたものの、それでも材料は欲しかったのです。
少女は山の中で空き小屋を見つけ、そこで染物をしていました。
しかし警察の人の目もあることから、昼と夜に分けて行くことにしました。
昼間はまだ人気の多い時に行って、陽が沈む前には家に帰ります。
そして深夜、こっそりとまた小屋へと向かい、作業を続けました。
そのかいあり、少女の染物の腕はプロ級になりました。
染めた毛糸で編み物をし、作品を作り上げていきました。
あまりにも作品の数が増えていったので、周囲の人達にあげることにしました。
少女の作品は好評で、特に少女自身が染めた編み物は評判が良かったです。
特に紅色の編み物は色が鮮やかで、欲しがる人々が増えていきました。
しかし紅色の染色の元が、最近は手に入りにくいのだと少女は苦笑しながら言いました。
山で採れる植物には限界があり、通販で手に入る染色も数に限りがあったのです。
虫を煮て作る染料も限界があり、そんなに簡単には作れないのだと説明しました。
ところがそれを聞いて、欲しがる人々は増えてしまいました。
手に入りにくいと聞くと、欲しがってしまうのが人間のサガです。
少女は仕方なく、赤い染色を続けました。
そして編み、完成した物をプレゼントし、喜ばれていきました。
大勢の人に求められ、喜ばれることを、少女は心の中では嬉しく感じていました。
ところが頑張り過ぎたせいか、少女はみるみる痩せていき、顔色も悪くなりました。
しかし異変に気付く人がいました。
その人は少女に赤い編み物を頼み、受け取りました。
最初は嬉しく思っていたものの、その編み物から漂う匂いに顔をしかめたのです。
生臭い匂いは、決して植物や虫から出るものではありません。
それと同時に思い出したのです。
少女が染物に夢中になり始めてからというもの、周囲の動物や人が行方不明になることが多いことを―。
特に赤い染物を多くするようになってからは、事件が多く起きていることを。
その考えを警察に言うと、すぐに調べは始まりました。
ところが少女自身が今度は失踪してしまいました。
家族にも何にも連絡せず、どこへ行ったのかも誰も分かりませんでした。
しかし少女の赤い編み物を調べた結果、行方不明の人間の血や動物の血で染められた物だということが分かり、少女は指名手配されました。
そして数日後、警察は少女がよく通っていた山へ入りました。
その奥で、異臭漂う小屋を発見しました。
中へ入ると、思わず警察の人も吐き気を催す光景が広がっていました。
そこには血を抜かれ、干からびた動物と人間の死体がゴロゴロ転がっていたのです。
しかし血を溜めていた大きな壺の側には、少女がいました。
壺に寄り添うに座り込んでいた少女の体には、ほとんど血は残っておらず、絶命していたのです。
少女は人々の要望に応える為に、自ら手首を切り、その血を使って染色をしていたのです。
警察が行方不明事件を嗅ぎ付けたことを知り、材料となる生き物を手に入れられなくなったので、自らを材料としたのです。
そうして連続失踪事件は解決しました。
―おしまい―
毛糸でいろいろな物を作るのが好きでした。
周囲の人からの評判も良く、少女は嬉しく感じました。
大人しい少女にとって、編み物は唯一の特技だったのです。
そして少女はさまざまなものを作り上げてきましたが、ある日、それだけでは物足りなくなってきました。
やがて彼女は、毛糸に自分で色を染めようと思いました。
連休を利用して染物を学びに行き、みるみる腕を上げていきました。
最初、少女は毛糸を染めるのに花や草、植物を使っていました。
しかしやがて、虫を使った染色まで始めました。
虫はフンや、鍋で煮た汁を使ったりします。
虫から出た色とは思えないぐらいの美しい色を出すのです。
少女はすっかりその色の虜になってしまいました。
しかし周囲の人からは気味悪がられてしまうので、植物中心に染物を続けていました。
幸い少女の近所には小高い山がいくつかあり、植物が豊富にありました。
少女はそこへよく、1人で材料を採りに行っていました。
ところがある日、警察の人から呼び止められました。
何でもここ最近、行方不明になる人や動物が多いらしいのです。
夜中に1人で出歩いていた人や、外で飼っていたペットなどが失踪してしまう事件が立て続けに起こっていると言うのです。
物騒なので、1人ではあまり出歩かないようにと言われました。
少女は頷いたものの、それでも材料は欲しかったのです。
少女は山の中で空き小屋を見つけ、そこで染物をしていました。
しかし警察の人の目もあることから、昼と夜に分けて行くことにしました。
昼間はまだ人気の多い時に行って、陽が沈む前には家に帰ります。
そして深夜、こっそりとまた小屋へと向かい、作業を続けました。
そのかいあり、少女の染物の腕はプロ級になりました。
染めた毛糸で編み物をし、作品を作り上げていきました。
あまりにも作品の数が増えていったので、周囲の人達にあげることにしました。
少女の作品は好評で、特に少女自身が染めた編み物は評判が良かったです。
特に紅色の編み物は色が鮮やかで、欲しがる人々が増えていきました。
しかし紅色の染色の元が、最近は手に入りにくいのだと少女は苦笑しながら言いました。
山で採れる植物には限界があり、通販で手に入る染色も数に限りがあったのです。
虫を煮て作る染料も限界があり、そんなに簡単には作れないのだと説明しました。
ところがそれを聞いて、欲しがる人々は増えてしまいました。
手に入りにくいと聞くと、欲しがってしまうのが人間のサガです。
少女は仕方なく、赤い染色を続けました。
そして編み、完成した物をプレゼントし、喜ばれていきました。
大勢の人に求められ、喜ばれることを、少女は心の中では嬉しく感じていました。
ところが頑張り過ぎたせいか、少女はみるみる痩せていき、顔色も悪くなりました。
しかし異変に気付く人がいました。
その人は少女に赤い編み物を頼み、受け取りました。
最初は嬉しく思っていたものの、その編み物から漂う匂いに顔をしかめたのです。
生臭い匂いは、決して植物や虫から出るものではありません。
それと同時に思い出したのです。
少女が染物に夢中になり始めてからというもの、周囲の動物や人が行方不明になることが多いことを―。
特に赤い染物を多くするようになってからは、事件が多く起きていることを。
その考えを警察に言うと、すぐに調べは始まりました。
ところが少女自身が今度は失踪してしまいました。
家族にも何にも連絡せず、どこへ行ったのかも誰も分かりませんでした。
しかし少女の赤い編み物を調べた結果、行方不明の人間の血や動物の血で染められた物だということが分かり、少女は指名手配されました。
そして数日後、警察は少女がよく通っていた山へ入りました。
その奥で、異臭漂う小屋を発見しました。
中へ入ると、思わず警察の人も吐き気を催す光景が広がっていました。
そこには血を抜かれ、干からびた動物と人間の死体がゴロゴロ転がっていたのです。
しかし血を溜めていた大きな壺の側には、少女がいました。
壺に寄り添うに座り込んでいた少女の体には、ほとんど血は残っておらず、絶命していたのです。
少女は人々の要望に応える為に、自ら手首を切り、その血を使って染色をしていたのです。
警察が行方不明事件を嗅ぎ付けたことを知り、材料となる生き物を手に入れられなくなったので、自らを材料としたのです。
そうして連続失踪事件は解決しました。
―おしまい―
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
『お前を愛する事はない』なんて言ってないでしょうね?
あんど もあ
ファンタジー
政略結婚で妻を娶った息子に、母親は穏やかに、だが厳しく訊ねる。
「『お前を愛する事は無い』なんて言ってないでしょうね?」
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
妹の初恋は私の婚約者
あんど もあ
ファンタジー
卒業パーティーで、第一王子から婚約破棄を宣言されたカミーユ。王子が選んだのは、カミーユの妹ジョフロアだった。だが、ジョフロアには王子との婚約が許されない秘密があった。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる