ピエロの仮面は剥がれない

寝倉響

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Teru=Hanswurst

死神の制度 ①

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 私がその世界に着いてはじめて目に入ったのは、高級ホテルのロビーのようなところだった。赤色を基本ベースにしたこのロビーはとても煌びやかで私の目に眩しく写った。そして驚いたことはそのロビーが高校の体育館よりも広かったことだ。
 そのロビーには喪服を着た人間がたくさんいて、ピエロのように仮面を着けている者や、素顔のままでいる者などたくさんの人が忙しそうに歩いていた。
 私の驚いている姿に気づきピエロは言った。

『ここは、死神が生活しているタワーマンションのようなものだよ。ちなみに名前はバベルって呼ばれている』

 私が立っていた場所はそのロビーの端で私のすぐ後ろには、5mほどの高さの両開きドアが開いていた。このタワーマンションからそのドアの向こうの景色は見えず、白い光が輝いて見えるだけだった。
 そして視線を戻してロビーの中心をよく見てみると、そこは受付のようになっており、受付エリアは円形に広がっていた。そこには女性の受付嬢がたくさんおり、受付嬢一人一人の間には細い道がありそれを進むと奥には高くそびえ立つエレベーターが何台も立っていた。


『あーあの道は電車でいう改札口みたいなところで、あの高いエレベーターが死神の部屋とつながってるんだよ』
 優しい声でそう教えてくれるピエロはとても優しかった。

『いまから、受付にヨッフムさんの居場所を聞きに行くから二人ともついてきてくれ。多分部屋にいると思うんだけどね』

 ピエロはそう言うといち早く受付の方へと歩いていった。少し戸惑う私の手を繋ぎ美希も真正面の受付のところへ向かった。しかし正面といっても端っこから受付までは50mほどの距離にあった。

『……美希、これありがとな』
 ピエロはこの死神界に入る前に美希から貰ったハートの箱を後ろにいる美希に見せるとそう言った。

「べつに……」
 美希はそう言うと顔を赤らめた。
 後ろからなので確かではないが、ピエロの方も少し頬が火照っているのではと思った。

 私達の歩く先に人だかりが出来ているのが見えた。ここに住むのは死神なので人だかりと呼ぶのは間違っているのかもしれないが……。
 ピエロは何が起きているのか気になった様子で人だかりを避けることなく一直線に進んでいく。
 私達はピエロに連れられるまま、その人だかりへ向かった。
やがて人だかりの最後列に着くと、その中に見知った顔が居たらしくピエロは人混みを描き分けその人物のところまで向かった。
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