寝起きでロールプレイ

スイカの種

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第二章

第105話 金庫とサーバールーム

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 気を付けてれば大丈夫。
 と思っていた時期が俺にもありました。

”これ・・・は・・・”

 もしかして、ここに来るのバレてた?

”入口付近には細かく設置してあるな”

 銀行内にある大金庫の入口は古来より耐久性に定評があるダイアル式で人の背丈程ある丸い分厚い耐火扉はセラミック複合材で出来ているので腐食はほとんど無い、周囲の壁表面の方がボロボロになってる。膝下までの澱んだ水に満たされた中、金庫は薄く開いてはいるのだが。
 何故か、建物内には水辺の植物が全く生えていない。
 水中の泥も微生物が検出できず、土と水が死んでいる。
 見た感じ水は綺麗だ。水質調べればよかったな、性能の良い水質検査機器は持ってきていない。
 金庫内部に少し光が見える。
 一昨日確認した時は閉まっていた。
 中までトラップだらけだろうか。
 扉の前には、無人機で探索した時には無かった赤外線センサーの不可視光が所狭しと飛び交っている。
 俺対策なのだろう。壊すことは出来るが・・・、元々銀行の建物内にはファージが希薄だからなのか、ファージ操作出来ない仕様の機器ばっかだ。安物なのでメーカーも分からん。
 黒革が短めのナイフを器用にクルクル回してる。ドロップポイントタイプで刃は肉厚、柄がちゃんと重みが有りそうでめっちゃカッコイイ。
 後で見せてもらおう。

”通す気無いな。破壊するか?”

 脳筋黒革。
 破壊したら監視している奴らが押し寄せるだろう。
 その前に。

”先に上の階のサーバーを調べよう”

”相棒、待ちぼうけしてる連中に、通信機器を探させておいた方が良い。これは出力が弱いから、短距離発信しか出来ない”

 見たところ・・・。

”範囲五十メートルって所か?”

”あっても百メートル”

”了解”

 外の建物の陰になる水辺で待機している傭兵たちに建物周辺の通信設備探索を指示し、俺らはサーバーへと向かう。
 昔の見取り図によると、サーバーは二階に部屋として存在していた、もう築二百年近く経っているが、水没していなかったから破損も酷くないと思いたい。
 カメラで見た限り、部屋の入口は硬く施錠された後完全に錆び付いていて、俺が事前に飛ばしていた時の、探査機器の小型な腕では開けられなかった。
 階段からは植生が戻っている。やはり、この銀行内の水がヤバそうだな。雑草や蔦が枯れてはまた生えてを繰り返し、階段の形跡がほぼ消えた腐葉土の坂を登る。
 踊り場は床が抜けているので、手すりを乗り越えて二階へ向かう。
 二階は植物も色濃く床も壁も苔が一面に生えて、天井は既に腐って骨組みだけになっているのだが、天井一面にかなりぶ厚く蔦が絡みついており、外からの光はほとんど遮断されている。

”おいボウズ!衛星への電波送信機発見!起動してるぞ!?”

 指示を出してから一分もしない内に連絡が来た。
 センサーは反応させていない筈だ。
 ・・・衛星持ちかよ。

 二人と顔を見合わせる。
 どこでやらかした?

”感圧式かもしれないな。部品が金属じゃなかったら俺でも探しにくい”

 黒革が歯切れ悪く呟く。
 確かに、水中で泥に埋まってたりしたら俺も探せない。

”さっきのワザとらしく金庫前にセンサー置きまくってたのは、地雷みたいに埋まってる本命のセンサーを隠してたって事か”

 俺の靴なら踏めば気付くが、地雷じゃなくて良かった。
 不用心すぎだな。
 カメラに積んでいたワームを即行撒く。手間だが水底の泥の中まで調べるしかない。

”細かい位置バレが怖い、送信機は直ぐに破壊するべき”

 言いながら、殺し屋がエントランスの床に広がる水面下にある泥をサーチし出したのに気付いた。
 器用だな。

”だな。送信記録こっちに送ってから破壊してくれ”

”了解。もう送った。一応圧縮してあるから、開くとき気を付けろよ”

 ははは、誰にモノを言っている。
 ファージネット使えないからどうせ上空の電磁波回線だろ?
 場合によっては送信先にDOSアタック仕掛けちゃる。

”んっ?!”

 開いてびっくり、解析したら送信先は高崎になっている。
 高崎駅東口、あの辺りの一等地だ。

”熊谷じゃないぞ?”

 二人にデータを見せる。
 今まで目も合わせなかった美人二人が初めてしっかり目を見合わせた。

”相棒。これは、諦めて逃げた方が良い”

”だな。帰ろうぜ”

 ファージネットワークに繋がっていないので俺の知識力は最弱だ。

”ここは何なんだ?”

 黒革が溜息と共に吐き出す。

”シェルマンド・インダストリーの本社だ”

 シェル?何だ?
 黒革も殺し屋も残念そうな顔になる。
 最近の地理に疎いのは仕方ないだろ。古代人なんだぞ。

”貝塚の子会社の本社だ”

 おおう。

”貝塚が熊谷と繋がっているとは思えない”

 そう呟いた殺し屋が黒革に先だって歩き出す。
 そうだな、とりあえず、動きながら考えよう。

”熊谷のフリして二ノ宮のテリトリー外で俺を誘拐する予定?”

 そういう強硬手段、しそうに無いんだけどなぁ?
 貝塚の事は割と気に入っている。
 そういう事する奴らだとは思いたくないって側面もある。

”別の目的もあるのかも?”

 あの場所に俺を入れたくないって事か?
 貝塚が?
 訳が分からん。

”貝塚なら俺が何とかする”

 出来ないかもだが、そういう事にしておく。
 今この二人にそっぽ向かれると困るからな。

 俺の過去の情報について貝塚は一貫して、ある程度の情報をチラつかせつつ俺に探索協力をしてきた。
 俺の接続能力欲しさって訳ではなさそうなのは何となく気付いたのだが、スミレさんへの当てつけ以外の理由が有ったって事なのか?
 ただの嫌がらせにしては回りくどすぎる。
 莫大な金をかけてまで青森旅行したのと繋がらない。
 あれか?青森旅行は元からエルフを手に入れる為だったのか?
 でも、あの時提案したの俺だしなぁ。
 当時の会話からすると、あの地域の探索はエルフ共と話がついてたクサイが、確認はしていない。
 蛇が出たら困るからな。
 貝塚は藪が多すぎる。

 二階のサーバー室前までの通路には何のトラップもセンサーも見当たらなかった。
 以前確認した時のままだ。
 足跡も無い。こっちには誰も来ていないな。フローターは来たかもしれん。
 捨て石にダメ元で定点カメラ置いておけば良かった。
 そうすれば壊されるかどうかだけでも確認できた。

”解錠はどうする予定だったんだ?”

 錆びて完全に塞がってる鍵穴を見て黒革が腰に手を当てた。

”アーク放電肢と爆薬を持ってきた”

”電力が勿体ない。わたしに任せろ”

 殺し屋が胸を張る。

”任せた”

”破壊して良いな?”

”この建物も、この土地も、所有者は存在しない。問題無い”

 ズドンと爆音を立てて殺し屋がドアノブを蹴りつけた。
 錆が煙となって舞う。
 腰の乗った前蹴りで床が足跡の形にべっこり凹んでいる。
 黒革が笑いを堪えて口の端を曲げた。

 三回目の蹴りで、ドアノブが粉々に弾け跳んだ。
 ステンレスで出来ていたはずなのに、芯まで完全に錆びていたのか。
 因みに、ゲームだと銃で撃って綺麗に破壊するシーンがあるが、あれは絶対にやってはいけないと傭兵に教わった。
 ドア破壊専用の粉末系ショットシェルを使わないと、跳弾で高確率で大怪我するそうだ。
 通常の突撃銃と別に重い散弾銃持ち歩くのはがさばるし、弾の入れ替えなんて面倒極まりないので、現場では専用で一人役割を作るか、爆薬で済ませるそうだ。
 両方無理な時は、この殺し屋スタイルでスマートにいくのが主流だ。
 今回は時間もあまり無さそうだし、チンタラ鍵穴溶かしてる余裕は無いって事だな。

”よし、行くぞ”
 
 窓が無いので中は当然真っ暗だ。
 通気口も塞がれていたのか?空気中にはほとんどカビが存在しなかった。
 酸素もファージもほぼゼロだったので、完全密閉されていたんだな。
 酸性度が高く変な空気だ。部屋中コードだらけだな。
 雨漏りは無く、金庫室ほどではないが相当頑丈に作られた区画だったのだろう。
 空調から外の空気が入り込みそうなものだが、ダクトが開けっ放しでなく未使用時に密閉するタイプだったのかな?ぱっと見では破損が見当たらない。

”設計図と違う”

”ここ、電力きてるぞ?”

”っっかしいな・・・。電波漏れしてなかったんだよなぁ”

 中が生きてたなら絶対気付いてた。
 電波遮断する壁だったのか?まぁ、サーバー室だしなぁ。
 部屋の天井は高さが倍以上ある。三階もぶち抜いて作られているな。
 大量のコードが茂っていて天井板が視認できない、コードなのか?ウナギじゃないよな?モゾモゾ動いて見えるのは気のせいか?

 何世代かにわたって使われてきたのだろう、時代の違うサーバー機器がエリアごとに分かれて置いてあり、抜かれている部分もある。まだ動いているサーバーも有るので期待大だ!
 動いてるサーバーの量と気温が一致しない。
 空調動いてないのに、不気味過ぎる。
 足元の大量のコードはどこにつながっているのか最早よくわからん。

”目星は付いている。LOデータ製の四十式だ。ブレードサーバーで棚としてまとまってるから目立つ筈・・・だ”

 言いながら、殺し屋が指し示す指の先を見た。
 大量のコードが床に開いた大穴から、下の金庫室に吸い込まれている。
 意図的に開けられたのか?抜けた床の先に、水没したサーバーストッカーが見えた。ランプが所々光っているので壊れていない様だが、あんな状態で壊れないモノなのか?水に沈んだ大量のコードがウナギみたいで気持ち悪い。
 それに、床より下は煙って見えるくらいファージ濃度が段違だ。

”どうする相棒。ここから降りるか?下の金庫室から回り込むか?”

 時間は有限だ。

”罠だよな?ここからじゃ上り下り面倒過ぎる”

 飛び降りたら水の中のコードが今にも絡みついてきそうだ。

”む。時間切れ”

 殺し屋が上を見上げた。
 重低音が空から響いてきた!
 入口前に待機させていたスフィアが揺れて呼んでいたのでコードをかき分けアンテナ位置を合わせると、外の傭兵から通信が来た。

”霧で見えないが、硬式飛行船だ。かなりでけぇぞ?多分貝塚だ”

”残ってた哨戒チームも全員隠れててくれ。バレたら大宮に救援通信出しながら逃げてくれていい。スフィアは一旦切断する。通信ログ全部消しといて”

”了解。死ぬなよ”

 さて、出迎えはどーすっかな。
 美人二人の顔を見る。
 黒革は苦虫を噛み潰し、殺し屋はニヤニヤが止まらないらしい。

”準備時間少ないが、お出迎えの準備でもしとくか”

””アイアイ・サー””

 実はお前ら、仲良いだろ。


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