寝起きでロールプレイ

スイカの種

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第一章

第13話 バスターズ

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「俺が片づけてしまっても問題ないんだろ?」

 もう待ってられないので。

「しゃーねーな。ボスに聞いてきてやるよ、許可出なかったら諦めろよ?」

「流石に俺らも、護衛対象がそれ以上イカ臭いのは警備に問題が出るからよ」

 一言多いんだよ。



 スミレさんからの許可はすぐ下りたので、傭兵どもが掃除用具を準備してくれた。
 手伝ってくれとは言ってないのだが、なんだかんだで一緒にやってくれるらしい。

「坊ちゃん、赤色光ライト以外禁止だかんな?」

「へいへい」

 一応、駆除マニュアルの留意事項は目を通した。
 ショゴスは光合成するが、一般の植物とは違い、主な体色はフィコビリンという赤色タンパクだ。
 これは、開発段階で“緑の生肉が腐っている見た目の為食欲が減退するから”とか考えられたのが原因らしいが、本当かどうかは現存するデータからはわからん。
 光は、吸収されない色が反射され、植物のほとんどは緑が反射されるので緑色に見える。これは、赤外線などの長波より紫外線やX線などの短波の方が大気を突き抜けやすいから、その光エネルギーを吸収するのに緑が適していたというのが一説だそうだ。
 ショゴスを活性化しにくい光線で、人が認識できる光は、必然的に赤色光となる。

 赤色ライトのドカヘルで(無論、回転灯ではない)、二酸化炭素のボンベを背負い、簡易酸素マスクを付けた俺と傭兵のおっさん二人は。昔、一作目だけ好きだった幽霊退治の映画を彷彿とさせる。

 ただ、今俺たちが倒すのは特撮用の綺麗なゲル状のスライムではなく、不定形の筋肉やら内臓やら骨がぐちゃぐちゃに入り組んだ攻撃的な家畜だ。
 捕まったら、潰されて、捕食される。ふぅーっ!素敵すぎてワクワクが止まらない・・・。

 場所は把握済みなので、そっと近づいて小さい塊から加熱し、死んだら除去だ。大丈夫、マニュアル通りヤるだけだ。犬とガチンコ勝負するより簡単だ。 どこぞのファンタジーRPGみたく、テンプレスキルを順番ずつ起動するだけで敵が溶けていくのと同じ。戦術も、駆け引きも必要ない。

 シャワーを浴びるためにこんな鬱なおもいをしなきゃとか。でも、ベタ臭痒いのはもう我慢できん。

「行くぞ」

 やる気出すためにBGM欲しいよな。つつみちゃんに頼もうかな。
 傭兵どもに声をかけると、二人とも中指立てて返事した。口はガム噛むので忙しいらしい。

 外の螺旋階段からのが安全なのだが、ジジイ二人が“膝が・・・“だの”階段とかタリぃ“と、うるせーので、エレベーターで八階まで上がる。

 手元の電熱コイルをゲージMAXまで上げ、エアカッター内の二酸化炭素カートリッジの過熱を開始する。カートリッジで二百二十度まで加熱された二酸化炭素はソケットに充填され、三メガパスカルの圧力で一気に噴射される仕組みだ。
シリンダーのソケット確認。オーケーいつでも撃てる。窓が密閉され、真っ暗な廊下に、三つの赤いライトだけでは心もとない。
 圧搾ソケットは毎回使い捨てで一ソケットで三秒間噴射、完全に加熱する必要は無いので、それで一平米のショゴスは無力化できるそうだ。

 一歩、エレベーターから出ようとしたら、肩を捉まれた。
 振り向くと上を見ているので、見上げると、エレベーター入口の上の壁にハスキー犬サイズの肉の塊が張り付いている。出待ちかよ。怖えぇな。センサーの情報と違うぞ?

 もう片方のおっさんが黙るよう人差し指で口を押え、ノズルだけ通路に出して上に向け発射。
 バーナーとエアカッターを足した音が鼓膜に響く。けっこううるさいな。
 ぼとりと落ちた塊を蹴り飛ばし、もう一発撃つと、それは動かなくなった。

「餌がたりてねぇな。元々、餓死寸前だったみてぇ」

 楽できそうでなにより。

「てめえらの排気で外気温を体温に調整してやがる。事前サーチで役に立つのはソナー情報くらいだな。赤外線カメラ先に送っときゃよかったか」

「まぁ、それでビンビンにシコられてもなぁ・・・、ん?」

 俺の顔を見る。なんだよ。シコってねぇよ。てめぇら二十四時間体制で張り付いてるだろ。

「ああ、そうか。坊ちゃん、ファージでサーチかけろよ」

 やり方がわからん。できるのかそんなの。
 つつみちゃんのあの牽制用の不協和音がソナーとして機能しているのはなんとなく把握しているが。

「ファージによる音でなく?ファージで?」

「スリーパーならできるだろ。検索れカス」

 お、そうだな。

 調べたら直ぐ出てきた。空気中に存在するシネマティックファージに働きかけ格子状に配置、ファージ自体は目には見えないが、階層全域のオブジェクトが一瞬で把握できた。温度や見た目は誤魔化せても筋電位は誤魔化せない。生きているショゴスを選別。
 チートじゃんこれ。

「データ送る。ポート開けろよ」

「早っ」

「お、仕事が早いねぇ」

 色分けしたデータを二人にも送る。

「結構分散してるな、二手に分かれていくか」

「「ヤメロ」」

 二人に全力で拒否された。
 でも、一度は言ってみたいだろ?

 手前の部屋から片づけていく、ノズルが熱で歪んでくるので、三人で順番ずつおそうじだ。
 暴れたり、襲い掛かってきた個体はいなかった、配水管の元凶もキレイになったが。最後、奥の部屋のダクトに詰まってた一番大きい個体だけ、引きずり出すのに手間がかかった。胃液飛ばしてきてヤバかった。俺が一番小さいからと、担ぎ上げられて中に潜らされたので、体中焼き豚臭い。ゲロ吐きそう。

「内臓系のが少なかったから、運が良かったな」

 多いと、自己増殖のスピードや生命力がハンパないそうだ。
 臭さの限界まで追い詰められたが、これで熱いシャワーが浴びられる。
 大丈夫、俺はコメディの主人公じゃない。もう何も気にせず、何も起こらず。これでもう体臭とも痒みともオサラバできるんだ。
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