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第八踊

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 それから二ヶ月が、経った。
 舞踏会まで一ヶ月を切った頃、ドレスとそれに合わせた装飾品が仕立て上がった。
 ーーやはりドレスが仕立て上がると気分もアガる。
 私はルンルン気分で応接室に向かう。ついでにハムハムも連れて行こうかな。


 応接室では、華やかな雰囲気で出入りの商人たちが試着を行っていた。

(あら。出遅れたかしら)

 私はいそいそと室内に入り、商人のマダムと挨拶を交わす。ハムハムはポシェットにこっそりと忍ばせる。
 試着中のお母様たちを見ると……。

 ギラギラ緑色に光るお母様……。カタパルト……肩パットの膨らみがファンネルのようで、髪飾りと相まって強そう……。背面から見るとマント(?)のように広がったヴェールが甲羅みたいで、カメムシみたい……。

(もう少し、落ち着いた感じが良さそう……)

 私は、ご満悦そうなお母様から視線を外し、お姉様を見る。

 紫紺のドレスに身を纏うお姉様。スタイルに合った細身のドレスに、肩からかけるヴェールは斬新な色を使い、程よくお姉様を主張する。お姉様が、真剣な表情で動きをチェックしている。

(完璧な令嬢なんだけど、なぜか魔王覇気が見える……)

 私は軽く目眩を覚えつつ、隅っこでモソモソするシンデレラに気がついた。

 真っ白に輝くお姫様だ。純白のドレスに、更にそれを際立たせるロングタイプの手袋。ドレスの刺繍は見事なもので、王族のドレスもかくやと思わせる出来映えだ。装飾品も贅沢なもので、今まで見たことのない綺羅びやかなものだった。

(お母様とお姉様がイロモノに見える!)

 まあ、確かにイロモノだけど……。
 シンデレラの満足そうな笑顔がなんだか、引っかかった。
 人に対する嫉妬のような感情で、なんだか良くない……。
私は軽い自己嫌悪に陥りつつ、気を取り直して自分のドレスの確認を申し出る。
 今日は試着を行い、一度ドレスを持ち帰って微調整をしてもらうのだ。大事な作業である。

「……」
「……」

 あれ? マダムが、キョトンとしてる。

「……あら! もうしわけございません!」

 ハッと我に返ったマダムが慌てて私のドレスを用意してくれる。マダムの使用人たちも魔法が解けたかのようにテキパキと用意を始めた。

(な、なにかしら、今の間は)

 不安になる私の前に出されたのは黄色のドレス。華やかなドレスで、少し内気な私に元気を出させてくれるような明るいものだった。


 試着は滞りなく済み、あとはもう一ヶ月後の舞踏会を待つだけ、である。私もやることを終え、一息ついてしまった。シンデレラの笑顔に引っかかることを覚えたことなど、些細なことと忘れてしまっていた……。

 しかし、お母様とお姉様、そして私のドレス、イロモノだな……。
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