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第二十踊

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 モゾモゾ、モゾモゾ……

 ピアノの響きに合わせ、私のドレス内ではハムハムが踊っている。何気にお茶会をたのしんでるのだろうか……?
 私のドレス内に入るのを特殊技能として覚えてしまったのね。普通のお茶会ならばまだ良いが、さすがに王家のお茶会でハムハム連れはマズイ。大顰蹙を買う。
 おとなしくしててね、と願いつつ冷汗が止まらない。
 とにかく、時間を潰すためにピアノを聴く輪に加わる。十ほど席が用意され、七人座っていた。私が空いている後列に落ち着こうとしたのに、なんの気を利かせてくれたのか一番前の席を譲られた。
 ヒイィィ……。いいのに。前の席に座ると、ピアノを弾くシフォン様ににこやかな会釈をされ、私も会釈を返しておく。
 この前も思ったが、私ってなんのためにここにいるんだろ?


 非常に緩やかに時は過ぎ、会の終わりが意識され始めた頃、第二王子の元へ一人の使用人が来て、何かを知らせているようだった。
 もう終わるのかな、とボウッと見ていると第二王子が立ち上がる。

「会の終わりが近づきましたが、皆様にお知らせがあります」

 さらに第二王子は立ち上がり、話を続けた。
 令嬢方の気配が変わる。私も、第二王子が何を話すのか注目した。
 どうでもいいけど、もうすぐ終わりそう。

「まず、紹介したい人がいます」

 第二王子が庭園から建物へと視線を向ける。
 どうやら、誰か出てくるみたいーー。
 出てきたのはーー。
 まさかのーー、
 シンデレラ!???


 私は思わず目が点になる。
 なんでいる?
 家で待っていたはず?
 しかも、そのドレスは!?
 招待されていないシンデレラが現れたことに驚いたが、シンデレラのドレスにも驚きだ。
 シンデレラが身につけていたのは、またもや純白のドレス。しかもドレスを綺羅びやかに飾るのは豪華なアクセサリー。
 ティアラ、イアリング、ネックレス、ブレスレット……。控えめな造形であるも、見る者は目を奪われる。しかも、シンデレラの美貌をさらに際立たせる。
 これ、家にはなかったよね。
 ん? んん? しかもシンデレラの靴は一層輝く透明の靴……これってもしかして、もしかしなくてもアレか。『ガラスの靴』だ。
 シンデレラの足首をほっそりと演出し、つま先までは見えないように工夫され、上品な装いだ。
 はっきり、悪い予感しかしない。

「私の婚約者、レイラです」

 はい、爆弾発言投下されました! いきなり第二王子の発言に凍り付く。『婚約者』ですと、シンデレラが!?
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