このセカイで。

翠雨。

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第一章 記憶

第一話 物語の始まり

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今も知らないうちに物語は紡がれていく。
この宇宙には数え切れない程の星が存在するように、その物語はそれぞれ変わっている。

蒼色、桃色、紅色………。

ありふれた宝石物語から一つ、摘み上げる――――――




(……はぁ)


 俺は髪を縛っていたゴムを解き、寮のベッドに倒れ込む。
随分使われていなかった部屋だったらしいく、少し埃っぽい。
 今日は入学式があっただけでその他は何もなかったことに安心している。
………緊張しているのか。

ここはインフィニル専門校附属学校の寮。
インフィニル専門校附属学校は設備が充実しており、様々な職業を学ぶのに最適だ。


(つまり、俺みたいに未来がしっかり定まっていない奴が集まるようなところだ)


そう考えるとほんの少し、緊張が解けた。


そうしてゴロリと寝転がったまま目を閉じた。



「はーい、皆さんおはようございます!
 突然ですが、今日は皆さんまだ初対面ということで交流会をしたいと思います。勿論他のクラスの子とも混ぜてね」


 担任の先生の言葉を聞いてやはりか、と思う。
入学式とか、クラス替えがあった後はこういうのを最初に行うのが大抵だ。


(交流会は予想外だが)

「出席番号を四つに区切った時の、自分の出席番号があるところに入ってね―」

(俺は出席番号26番だからgグループか)


グループのメンバー他三人に向き合う。


「あ、えーと、私時雨しぐれ! よろしくね~」


 銀髪で、ショートヘアが特徴的な女子がそう言って微笑む。


「私は………五月雨さみだれ。よろしく」


 時雨の後ろに隠れながら照れくさそうにロングヘアの女子が言った。


「僕ははく。フェルツィア歩兵部隊に入ることが夢だよ。同じ子がいたら嬉しいなぁ」


 右眼を髪で覆っている白髪の少年はニコリと笑うと俺へ視線を向けた。


「……俺は冷徹れいてつ。まだ将来は決まってない」


 そう喋ると、案の定、柏は誘ってきた。


「え? ホントに? なら僕と一緒にフェルツィア歩兵部隊目指そ!」

「……」


 黙って顔を背けると「ぇえ~冷ちゃんひどっ!」と聞こえてきた。
早速変なあだ名がつけられているがそこはスルーする。


「ねぇねぇ~冷ちゃん~反応してよぉ~」

「……」



こいつとの出会いが俺の人生を一変させるなんてこの時は思いもよらなかった――――――
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