全ての勇者の中で1番弱い鏡の勇者になってしまったので、見返すために魔王にでもなろうと思います。

七鳳

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【スキルの確認をしましょう】

第一話【鏡、転生する】

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少し考えてみてほしい。
友達が急に「俺って転生者なんだ!」と言い始めた場合のことを。


君ならまず何をする?
病院に連れていく?それとも厨二病ってバカにしていじるネタにする?
当然の行動だと思う。俺だってそうすると思うから。


ただちょっと不本意だけど言わなきゃいけないことがあるんだ。
これ、本当に言いたくないし、出来ることなら夢であってほしいんだけど、この状況を説明するにはいうしかないと思うんだよね。

はぁ~。じゃあ言うよ。


「俺、転生者になりました」













時は少し遡る。


あの時俺は2時間目の授業の途中だったはずだ。
時刻は確か…9時47分くらい?
その時は国語の時間だった訳なんだけど、俺は非常に国語が嫌いなんだ。
苦手だからとかではない。むしろ得意だから嫌い。


授業を受けなくても出来る教科の勉強なんてしたくないのは皆同じ。
だから俺は毎回のように寝てるわけで…。


あの時もほぼ寝ていた気がする。
ただ何か変な違和感を感じて目を覚ましたんだ。
そこに広がってた風景は寝ぼけてなかったとしても理解するのに時間がかかっただろうね。


だってみんな俺みたいに机に突っ伏して寝てるわけだし、その体から蛍みたいな光が無数に湧き出してるわけ。


もちろん自分の体もすぐ確認したさ。
案の定俺の体からも光がドバドバ出てた。


光の放出を押さえようと、どう頑張っても抑えられない。
だんだん体が透けていく。


あの時完全に死を想像したよ。
夢だって思って自分の頬をひっぱたいてやろうと思っても体がもう動かなかったし、隣のクラスからは普通に楽しそうな授業の声が聞こえてくるんだ。


誰も助けになんか来ないって悟った俺が次にとった行動はね、「諦める」だった。


俺はこのクラスでひとりぼっちだった。
確かに親と離れるのは少し寂しいかもしれないけど、自分以外の人間にほぼ何の感情も持てないから一緒にいたところで変わることはないだろう。


そんな性格のせいでいつも仲良くしに来てくれた人、優しくしてくれる先生をはね返していた。


罰が当たったのかもしれないけどいいんだ。
俺は実はおばあちゃんっ子で、9年前に死んだおばあちゃんにまた会えるなら死んだ方がマシなんだ。


あの時はこんな感じで死ぬんだなぁって思ってたんだけど、そんなことは無かった。


その後揺れる景色すら見る気力もなくなり、気を失った俺が起きて初めて見た景色は絢爛豪華な装飾がなされた、まるで外国の城とか宮殿みたいな感じのところだった。


周りを見渡したところどうやら他のクラスメイト、さらに国語の先生…30代前半くらいの男の先生なんだが、彼もここに来てしまったらしい。


現在俺はいろんな可能性を考えている。

ドッキリ企画かなんかなのか?
そしたらこんな場所に連れてこられている理由も説明できそうなんだけど…。
あの睡眠ガスとか幻覚みたいな手段でここに連れてくるのは放送倫理に接触しそうなんだよね。


ドッキリ説はないかな。

次に考えられるのは異世界転移ってやつ。
最近俺がハマっている、「クズの俺が異世界で神様になってました」っていうラノベ略して「クズ神」が確かそんな話だったはず。


あの話も転移した先はこんな感じのイメージの城の中で、王様が話しかけて来る…


「よく来てくださいました、勇者の皆様。」


そうそうこんな感じで。

ってえ?

今このジジイなんつった?

勇者って言ったなこれ。まさか一番ありえないと思ってた説が合ってるだなんて。
いやまだわかんないぞ。
何か証拠はないか、証拠は!


「名乗り遅れましたが、私はこの国、ゴア王国の第178代国王、アーサー・ゴアと申します。」


特に恥ずかしがることもなく国王とかアーサーとかいう単語をジジイが言っていく姿はすごい説得力があるな…。


他のクラスのやつもそろそろ頭が働き始めたらしく、友達同士で色々言い合ってる。


「心配になるのは分かりますぞ、何も状況がわかっていないだろうでしょうから。それについては今から説明させていただきます。」


優しいおじいちゃんの微笑みが真面目な顔に変わる。


「まず初めに、ここはあなたがたが住んでいた世界ではありません。その証拠に私の右腕に注目していてください。」


国王は右腕を空に向かって上げると、指パッチンをした。
すると国王の周りの空間が裂けるという表現でしか表せられない状況になっていき、その中から1匹の小さなドラゴンらしきものが現れた。


「この子は私の相棒の1匹、フレアといいます。この子を見たあなた達はここが違う場所だとわかっていただけたでしょう。」


確かにもうここまでされると異世界だということを認めざるを得ない。



「ちなみに今のフレアを出した能力は、こちらの世界ではスキルと呼ばれておりまして、生まれた時に神様によって一つ授けられるものになっております。ちなみに勇者の皆様方は一人一人オリジナルの能力になっているそうですので、確認してみてはいかがですか?『スキルチェック』と頭の中で唱えていただければ目の前に、スキルボードが表示されるはずです。」


さっそくやって見る。
『スキルチェック』

すると近未来的なデジタルボードみたいなのが目の前に出てきた。
触ってみようとするが貫通して触れない。


何が書かれているのか確認してみる。


【鏡の勇者】タチバナ Lv1

『鏡』《使用可能能力》

Lv1 像反射


と書かれていた。

ちなみに俺の名前は橘雅治。至って普通の名前だろ?

だから説明なんてしなくていいと思っていたし、なんなら教えたくなかったさ。


どうせ後で聞かれるなら教えた方がいいと思ったから教えたまでだよ。


スキルを確認し終えたが、この像反射の説明を見てみると、どうやらすごいハズレスキルっぽいんだよね。


《像反射》

『半径5m以内にあるものを自らの体に映しだすことが出来る』


要するににあれだろ?
自分自身を鏡にするってことでしょ?

なにこの雑魚スキル。


他のやつもこんなに弱いのかな。


少し周りの話を聞いてみる。


「うおおおおおぉぉ!俺は剣の勇者だって!」

あれは確かクラスの人気者だった吉川蓮だったっけな。
どうやら1番オーソドックスな剣らしい。
剣ならハズレスキルなわけないだろうな。


「あやのはどうだったんだ??」

連が、ゆるふわかーるの髪の毛を携えた超絶美少女に話しかける。
この子は白田あやの。

クラスの、いや学校のマドンナである。

「私は、杖?の勇者らしい!回復とかさせられるのかな!」

なるほど杖ね。
魔法とかも使えちゃったりするんだろうねきっと。


こうなると、いよいよ俺のスキルって雑魚じゃない???


ちょっと嫌になってきたよ。
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