星飾りの騎士

旭ガ丘ひつじ

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運命の出会い

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遠いどこかの都会で生まれた彼は、生まれつき難病を患っていました。
それは技術の発達した現代医療でも治療するのが不可能な病気でした。
彼は少しずつ体の自由、風景、音、世界を失いました。
それでも最後まで立派に闘って、彼は家族に囲まれて穏やかに眠りました。

クレイド・フォーエバー

彼との出会いは幼い頃になります。
静養のため、彼は両親と共に私の暮らす小さな島へと移り住みました。
山に沿ってなだらかに続く町の上、たくさんの花が咲き溢れる原っぱに建つ家で彼ら一家は暮らしていました。

幼い私は好奇心がとても旺盛で、新しく子供が越して来たぞという話を聞いてすぐに飛んで向かいました。
原っぱに立つ私は、一本の木の傍らに開けた窓を見つけます。
私はそこへ駆けて、背伸びをしながら無邪気に顔を出しました。
幼い彼はベッドの上に座っていたのですが、とても驚いたまま固まってしまいました。

「私はアレッタ。はじめまして」

挨拶をして、うんと手を伸ばしてみましたがうまく届きません。
はっと正気に戻った彼は、私の手をそっと優しく握ってくれました。

「僕はクレイド。はじめまして」

とても小声だったので、大きな声でもう一度、と大きな声でお願いすると、何事かと彼のお母さんが部屋にやって来ました。
彼のお母さんは喜んで私を歓迎してくれました。

部屋に招待されて、私たちは二人でお茶会をしました。
この島はいいところだよ、町には優しい人がたくさんいるよ、そんなありふれた紹介を彼は楽しそうに聞いてくれました。
次に彼が病気について話したので私は。

「お外で遊ぶことはできないの」

と問いかけました。
それに対して彼は。

「少しだけなら」

と答えたので、私はそのまま彼の手を引いて原っぱへと走りました。
この時の彼はまだ走ることが出来ました。
すぐに疲れてしまったけれど、その度に休憩を挟んで、また何度も走りました。
すっかりクレイドがくたくたになって、ようやく私は家に帰りました。
今では無茶に振り回したことを反省しています、ごめんね。

それから私たちはよく遊ぶようになりました。
といっても、一方的に私が押し掛ける形になります。
彼のお父さんが作ってくれたブランコに二人で乗ったのが特に楽しい思い出です。
たくさんお茶会というおしゃべりもしました。

私が女の子に彼が男の子に成長すると、私は学校に通うようになって、彼と遊ぶ時間がいくらか減るようになりました。
彼は後に、少し寂しかったと白状しました。
これもごめんね。

そしてこの頃です。
私が図書館で本を借りて、彼の家でそれを一緒に読むようになりました。
特に神話や民話、なにより冒険物をよく読みました。
彼も私と同じで好奇心が旺盛だったのです。

いつからになるでしょう。
私たちは二人だけの世界を描き始めました。

少女を世界を守る、星飾りの騎士の物語です。
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