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二十七話 実習ドラゴン編
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実習室の床は剥き出しの溶岩を加工している。
奥に倉庫、二階にトイレや休憩室等がある。
一階の左側にはドラゴンが乗っても平気な給水機能に優れた珪藻土プレートがあり、壁には六台のスタンドドライヤーが充電されている。
右側には人工芝生のマットと、壁に拡声器みたいなシャワーが並んでいる。
「田野山さんと愛媛さんと二人一組でよろしくお願いします」
道具の準備を終えて集合すると、サイクロプス先生が愛のキューピッドからのお告げを僕達に伝えた。
「え……僕?」
「男性の力は、あるならばあった方がよろしいでしょう」
「あはい……」
僕が戸惑っていると、向かいに立つ愛媛さんがフフッと息を漏らして、すぐ俯いて口をつぐんだ。
どうしてこんなロマンチックイベントが発生したのか説明しよう。
まず物音がして出迎えると、遅れて来たドラゴンが入り口で呑気に足裏の砂利を溶岩で擦り落としながら「すまぬすまぬ遅くなった」と悪びれることなく言った。
その腕には珍しく深緑の濃い幼竜が抱かれていた。
そして急に、人語を話せないほど生まれて間もない幼竜のトリミングを頼んできた。
サイクロプス先生はそのお願いを二つ返事で了承した。
前列にないことだと言っていたが、ドラゴンの頼みとあっては断ることは有り得ない。
「今回は二泊三日での特別な実習なのであろう。ならばサプライズがあらねばな」
ドラゴンの喧しい笑い声が部屋に響く。
いつも冷静沈着なサイクロプス先生が生まれたての小鹿みたいに足を震わせて緊張を隠せないほどのサプライズで笑い事ではない。
僕も少し緊張した。
でも、結果的に僕と紗綾香さんとで組むことになったわけで。
何て日だ!ドラゴンに感謝する!!
「良かったね川大くん」
逆瀬川ちゃんが複雑な面持ちで囁いて僕の背を軽く叩いた。
気に掛けてくれたのだろう。
本当にいい子だ。
「うん。嬉しい」
「頑張ってね」
逆瀬川ちゃんは僕がまだ恋を諦めていないと思っているらしい。
いつか本心を打ち明けた方がいいだろうか。
そう思うのは未練が残っているからだろうか。
おっと、実習の始まりだ。
「紗綾香さん。今日は、改めてよろしくお願いします」
「かしこまらないで。今日は二人一組で、私達はパートナーなんだもの」
そう言って紗綾香さんは僕の手を両手で握った。
心臓が爆発百八散する手前まで鼓動が激しくなった。
「よろしくね!」
「よろしく」
目を合わせるのが恥ずかしくて少し逸らすと、百日紅が紗綾香さんの背後で目を糸にした満面の笑みでこちらを見つめていた。
「私はお昼まで散歩してるから。実習がんばって」
言われなくとも頑張る。
好きな人に格好悪い姿は見せられない。
「始めましょう」
「はい!あ、うん!」
ドラゴンの成体の体高は、手をついて前のめりに立って大型トラックと同じくらいだ。
片翼の幅は広げて約三米ちょっと。
一方で、初めて目にする幼竜は幼くとも軽自動車ほどある。
翼は一米くらいと短い。
成体の鋭い目とは反対に、幼竜の目は大きくて真ん丸。
透明なまぶたが成体より綺麗だ。
ドレッド(僕は許しを得てドラゴンをその名で呼んでいる)が言うには火山に暮らすドラゴンは五十年ほどで成体になり平均して五百年ほどで命尽きてマグマに溶けるという。
ドラゴンの皮膚はもちろんマグマなどへっちゃらだ。
しかし、命が尽きると神秘性が失われるようで溶けてしまうらしい。
ちょっと怖くて、ちょっと儚い。
「大人しいね」
「というか、どこが堂々としてるみたい」
幼竜が生まれたのは三年前。
人前に姿を現すのは本来、成体になってからなので、今回のケースは歴史的に見て非常に貴重なお披露目となる。
なんと明日、一年に一度だけ盛大に行われる感謝と親睦を深めることを目的とした神聖な祭事、竜吟虎嘯祭|(りゅうぎんこしょう)に参加させるつもりらしい。
ドレッド曰く、他のドラゴン達に文句を言われるかも知れないが、古い風習に凝り固まらず、新しいことをして皆と今まで以上に楽しい一日にしたいそうだ。
それは良い提案だと思う。
だから僕は人目に出しても恥ずかしくないよう綺麗に仕上げようと気合いを入れた。
「そうだ。ディスカリフよ、君にもう一つ頼みがある」
「ディスカリフ?」
訝しげにこちらを振り向く紗綾香さんに、僕は咄嗟に気にしないよう言った。
「こほん。よせドレッド。皆の前でその名を呼ぶな」
ドレッドボルカヴァスめ。
俺が闇の人間だと知れたらどうするつもりだ。
俺は愛する人を巻き込みたくはない。
むしろ、惹かれるまま光へ飛び込み愛の色に染まりたい。
「たのくん」
「それでいいよ。何?」
畏れずこんなにもラフに彼と話すのはこの世界で僕しかいないだろう。
今のところ、サイクロプス先生からも担任のインプ先生からもお叱りはない。
むしろ、サイクロプス先生にアレコレ聞かれたり、頼まれて仲介役になることがあった。
「その子にも名前を与えてやってくれないか?」
ドレッドは名前を貰ったことが一生の宝物を貰ったみたいに嬉しいらしい。
そのお礼として、一度だけ遊覧飛行をさせてもらったというわけ。
他のドラゴンに自慢しているという話も最近は聞いた。
火山を離れて大丈夫なのか?
と当然の質問をすると、一週間は平気、町の人にバレなきゃ平気、大丈夫なにも起こらない、と無責任に適当な答えを返してきた。
こんな調子だから僕は彼をどうも本気で敬えない。
友達みたいに思ってしまう。
「承った。未来永劫に世を照らす栄誉を授けよう」
「おお、よくは分からぬが有難い。ゆっくり考えて構わないから後で教えてくれ」
「分かった。それでは互いに仕事に戻ろう」
「アデューナイトリアス」
「しっ!」
彼はお喋りだ。
これからは秘密の暗号を伝えるのを控えよう。
「羨ましいなあ」
「え?」
「川大くんのことが」
「はは、は、あはは。もしかしてドラゴンと仲良くしていることが羨ましい?」
「そう」
「じゃあ、紗綾香さんもこれから仲良くするといいよ」
「むりむり!私にはとても無理です!」
全力で否定する紗綾香さんが可愛いくてずっと見ていたいが男としてモンスタートリマーの仕事を果たさなければならない。
僕達はブラッシングに取り掛かる。
適度な硬さと柔軟さを備えた人工毛の楕円形のブラシを使って、表面の砂利や煤を取り除いていく。
ドラゴンの体表は基本的には古代魚と同じ堅固な菱形の硬鱗で覆われていて、また背骨に沿って瓦状に先の尖った楯鱗が続いているのだが、首の表からそのままお腹を通って尻尾の付け根まで、つまりは体の下側はトカゲなどでよく見られる滑らかな粒状の鱗に覆われていて多少は弾力がある。
体表の鱗は傷つけないよう力加減に気を付け、特に背の楯鱗の隙間の汚れに注意し、表面で固まった溶岩を丁寧に剥がす。
下側の鱗は固まった溶岩がこびりついてはいないが、対して煤汚れが酷いので乾いた雑巾で根気よく拭う。
「川大くん、もう大丈夫かな?」
「うん。いいと思う」
「それじゃあここまで。お昼にして、それからベイジングに移りましょう」
「分かった」
ブラッシングで午前が終わった。
今回は百日紅にお弁当を用意してもらっている。
半分ほど食べ終えた頃に遅れて花屋敷さん達も戻ってきた。
「まだ半分しか終えてないよ」
花屋敷さんは苦笑した。
よく見ればハーレム状態で男なら覚醒ハイテンションになっているはずなのに、それなのに彼がここまで疲労困憊となるのは相手がモンスター最大のドラゴンなだけある。
初めにドラゴンに横に倒れてもらって背中を、次に伏せてもらい体の側面に翼と尻尾を、最後に立ってもらって首下と腹、そして手足の汚れを特製のデッキブラシで落とす。
ドラゴンのトリミングは巨体ゆえに必ず全員で取り掛かる。
それでやっと午前中にブラッシングを終えられる。
「今日は日没までかかりそうだ」
「先に終わったら手伝うよ」
「ありがとう。でも、気持ちだけで結構だ。これは私達に任された仕事だからね」
花屋敷さんの真っ直ぐにストイックなところは尊敬する。
隣で頷く逆瀬川ちゃんも同じだ。
二人の疲れた表情の後に楽しそうな表情が浮いてくる。
その気持ちも分かる。
「行こう。紗綾香さん」
「うん、ちょっと待って」
つい急かしてしまった。
それくらい現在ではトリミングが楽しくて仕方なくなっている。
続いては道具を揃えてシャワーのところへ移動してベイジングを行うのだが、その前に軽く耳掃除だ。
ドラゴンの耳は爬虫類と同じですぐに鼓膜がある。
なので本格的に耳掃除はしないが、イヤークリーナーを浸した綿で入り口周りを軽く拭き取ってやり、最後に耳に息を吹き掛けて中に入った砂や煤を飛ばしてやる。
幼竜はくすぐったそうに頭を振るった。
見るも愛らしい姿に僕達は顔を見合わせて微笑した。
「紗綾香さん。この子の名前なんだけど」
「うん?さっきドラゴンさんと話してたね」
シャワーは四十度に設定してある。
冷やすことは彼らに良くない。
熱い湯で体表を素洗いしていく。
鼻と耳、そして目の周りは必ず上から、シャワーの勢いを弱めて洗う。
「紗綾香さんが名付けてよ」
「え!私!?」
「うん」
「そんなダメだよ!出来っこないって!」
「これには考えがあって、大事なことだと思うんだ」
「大事なこと?」
「もし他のドラゴンが名前を欲しがったら僕のところに集まるかも知れないだろう。そんなことになったら色々と大変だ」
「うーん……。でも、ドラゴンは神聖なモンスターだから」
「逆だよ。信仰しているからこそ、大切だからこそ、人が願いを込めた名前を捧げるんだ」
「願いを込めた……名前」
「地元の人が、その土地を守るドラゴンに名前を付ける。異世界人の僕じゃなく、この世界で生まれた君が名付けることはいいきっかけになると思うんだ。僕は名付けることが広まればいいなと思ってる。やっぱり名前があると、距離が近くなってより親しくなると思うから」
僕は思い出を走馬灯のように振り返る。
「百日紅に名前を付けて、名前があったから、僕達はもっと仲良くなれた気がする。だから、みんながもし望んでくれたら。みんなとドラゴンも、僕達のようになってくれたらなって、そう思うんだ」
「なるほどね……」
「ごめん。馬鹿だからちゃんと説明出来ない」
「ううん。川大くんの気持ち、きちんと伝わったよ!」
「本当?」
「だから決めた!私考えてみるよ!」
素洗いを終えてシャンプーを行う。
長い時間をかけて積み重なった汚れを尻尾の先までしっかり落としていくのだが、幼竜なので汚れはそこまで頑固ではなかった。
ドラゴン専用にブレンドされた植物由来の特別なシャンプーで洗ってやる。
使うのはスポンジだ。
汚れが落ちるまで根気強く擦り洗う。
鱗の表面が半透明の膜みたいになるまでしっかり汚れを落とす。
僕のように力任せに一気に落とすのではなく、紗綾香さんのように細かい動きで少しずつ落としていくことが望ましい。
彼女の動きを目で追い真似をしていたのだが、ふと彼女と目が合って笑みを交わすことが度々あった。
人はこれを幸せと呼ぶらしい。
「僕が持ち上げるから足裏をお願い」
「はい。分かりました」
幼竜はまだ言葉が通じず、またトリミングされるのが初めてのためか伏せは何とかいけたが、成体のように自ずから足を後ろへ上げることはしてくれなかった。
成体の上げた足を乗せるキャスター付きの台座も邪魔になりそうだ。
そこで僕がドラゴンの足を抱えてサポートし、紗綾香さんが足裏を洗うことに決めた。
「うぐふ……ん」
「川大くん大丈夫?」
「うん。ぜんぜん余裕」
それを終えたら全身をチェックして、大量の湯ですすぎを行う。
ヌルヌルがなくなってザラザラするまでシャンプーをしっかり洗い流す。
足裏がまた大変だった。
「うふん……はあ」
「本当に大丈夫?無理しないでね」
「僕は男だから」
「そうだね。頼りになります」
姫からの誉め言葉に力が弛みかけたが何とか踏ん張った。
彼女の為ならドラゴンの足なんて軽い軽いと油断して降ろした拍子に足を踏まれ堪ったものではなかった。
小学生のランドセルを落としたような重圧だった。
幸いにも怪我はなかった。
幼竜も申し訳なさそうにこちらを見遣り足を上げてくれた。
悪いのは僕だ。
罪は僕一人で背負う。どうか思い悩まないでほしい。
「カロさんが、ごめんね、だって」
「カロさん?」
「この子の名前だよ。決めたの」
「カロさん。いい名前だと思うよ」
「川大くんの名前から取ったんだけど、いいかな?」
キュン。
愛が迸る音がした。
「恥ずかしいけど……嬉しいよ!」
「本当!」
「うん。ほら、カロさんも嬉しいって」
「そっか。良かったー」
紗綾香さんが改めて名前を呼んでみるとカロさんはこちらを振り向いて、円らな瞳でジッと彼女を見詰めた。
面白い。
これは呼び掛けを受けて、今の言葉が自分のことを指していると理解しているに違いない反応だ。
彼女は嬉しくなってカロさんの頭を撫でた。
今までなら絶対に有り得ない畏れ多いことだ。
ドラゴンと彼女の仲が一瞬で親しくなったように見える。
カロさんは嬉しそうに目を閉じて紗綾香さんに頭を擦り付けた。
「羨ましい」
「え?川大くん何か言った?」
「早くタウエリングしてあげよう」
「そうだね。湯冷めしちゃう」
シャワーを止めて、カロさんの頭から体まで隅々まで丁寧にタウエリングを行い、珪藻土マットへ誘導する成体とは違って、サイクロプス先生が敷き詰めてくれた予備の芝生マットの上へと誘導する。
僕は全力疾走してスタンドドライヤーを二つ用意した。
これは充電式のものなのでコードレスだ。
安心安全に、そしてスムーズにドライングが行える。
「ありがとうね」
「いえ、これくらいお安いご用ですよ」
これは間違いなく好感度アップだ。
僕のテンションもドライヤーの熱風もハイになる。
ドラゴンにおいては熱に強いので、顔を除いてハイで構わない。
ガンガン乾かしていく。
それを終えたらアロマを全身に塗っていく。
パヤタタと呼ばれるファイアーボールみたいな見た目の果物のアロマを使う。
元いた世界にあったドラゴンフルーツにも似ている燃えるような赤い皮に包まれた果物だ。
そのアロマをスプレーで吹き掛け、手で薄く塗り広げていく。
外骨格である鱗の治癒と強化に効果がある。
また、鱗状の柔らかい皮膚から体内へ浸透させて健康を増進する。
ドラゴンから香る焦げ臭さがトロピカルスメルに変わった。
「最後に爪研ぎをしましょう」
名残惜しい。
紗綾香さんが言うようにこの作業でドラゴンのトリミングは終わりとなる。
二人の初めての共同作業も儚く終わりとなる。
涙早々に枯れそう。
「ふん……ぬっ」
「頑張って!私も急ぐから!」
ドラゴンの爪は硬く、とてもカット出来ない。
しかし、彼らには硬い岩で爪を研ぐ習性がある。
それでも当然に綺麗にとはいかないので僕達が研いで整えてやる。
人の手くらいに大きい超合金の金属ヤスリで形を整えていく。
手はスムーズにいったが、やはり足が大変だった。
「ふひゅ……」
「はい!これでおしまい!」
先生からのチェックを受けてトリミングは終わり、僕達は花屋敷さん達の作業が終わるまでカロさんと外で遊ぶことになった。
夕暮れから星が満ちるまで遊んだ。
僕と紗綾香さんは寒さを凌ぐために寄り添って、寝そべるカロさんに背を預け夜空を見上げた。
お尻は地熱で気持ちは紗綾香でぽかぽかする。
天の川らしきものを見つけて七夕を思い出す。
彦星と織姫のように僕と紗綾香さんも間も無くお別れだ。
彼女の体が、そっと僕から離れる。
花屋敷さん達がトリミングを終えてしまったらしい。
お尻だけぽかぽかする。
僕はまだ星を見上げていた。
願いを届けたいのに星は流れなかった。
「どうだった?」
代わって逆瀬川ちゃんが隣に付いた。
人懐っこい子だ。
「今日は人生最高の日だったよ。ほら、星もこんなに綺麗だ」
「今日は湯気が薄くて、星がよく見えるね」
「綺麗やねー」
百日紅が頭に乗った。
これは鬱陶しいので逆瀬川ちゃんにあげる。
彼女は百日紅を優しく引き取って胸に抱いた。
「さ、終わったなら帰ろう」
立ち上がろうとするも、逆瀬川ちゃんが天を仰いだまま僕の服を引っ張って許さなかった。
僕は浮いた腰を仕方なく下ろす。
「もう少し」
前に似たことがあったな。
「分かった。もう少しだけ」
遠く火口付近でブルーファイア現象が起きていた。
青い炎は幻想的で美しい。
僕は夢心地になってまぶたを閉じた。
それにしても、早くトイレに行きたい。
奥に倉庫、二階にトイレや休憩室等がある。
一階の左側にはドラゴンが乗っても平気な給水機能に優れた珪藻土プレートがあり、壁には六台のスタンドドライヤーが充電されている。
右側には人工芝生のマットと、壁に拡声器みたいなシャワーが並んでいる。
「田野山さんと愛媛さんと二人一組でよろしくお願いします」
道具の準備を終えて集合すると、サイクロプス先生が愛のキューピッドからのお告げを僕達に伝えた。
「え……僕?」
「男性の力は、あるならばあった方がよろしいでしょう」
「あはい……」
僕が戸惑っていると、向かいに立つ愛媛さんがフフッと息を漏らして、すぐ俯いて口をつぐんだ。
どうしてこんなロマンチックイベントが発生したのか説明しよう。
まず物音がして出迎えると、遅れて来たドラゴンが入り口で呑気に足裏の砂利を溶岩で擦り落としながら「すまぬすまぬ遅くなった」と悪びれることなく言った。
その腕には珍しく深緑の濃い幼竜が抱かれていた。
そして急に、人語を話せないほど生まれて間もない幼竜のトリミングを頼んできた。
サイクロプス先生はそのお願いを二つ返事で了承した。
前列にないことだと言っていたが、ドラゴンの頼みとあっては断ることは有り得ない。
「今回は二泊三日での特別な実習なのであろう。ならばサプライズがあらねばな」
ドラゴンの喧しい笑い声が部屋に響く。
いつも冷静沈着なサイクロプス先生が生まれたての小鹿みたいに足を震わせて緊張を隠せないほどのサプライズで笑い事ではない。
僕も少し緊張した。
でも、結果的に僕と紗綾香さんとで組むことになったわけで。
何て日だ!ドラゴンに感謝する!!
「良かったね川大くん」
逆瀬川ちゃんが複雑な面持ちで囁いて僕の背を軽く叩いた。
気に掛けてくれたのだろう。
本当にいい子だ。
「うん。嬉しい」
「頑張ってね」
逆瀬川ちゃんは僕がまだ恋を諦めていないと思っているらしい。
いつか本心を打ち明けた方がいいだろうか。
そう思うのは未練が残っているからだろうか。
おっと、実習の始まりだ。
「紗綾香さん。今日は、改めてよろしくお願いします」
「かしこまらないで。今日は二人一組で、私達はパートナーなんだもの」
そう言って紗綾香さんは僕の手を両手で握った。
心臓が爆発百八散する手前まで鼓動が激しくなった。
「よろしくね!」
「よろしく」
目を合わせるのが恥ずかしくて少し逸らすと、百日紅が紗綾香さんの背後で目を糸にした満面の笑みでこちらを見つめていた。
「私はお昼まで散歩してるから。実習がんばって」
言われなくとも頑張る。
好きな人に格好悪い姿は見せられない。
「始めましょう」
「はい!あ、うん!」
ドラゴンの成体の体高は、手をついて前のめりに立って大型トラックと同じくらいだ。
片翼の幅は広げて約三米ちょっと。
一方で、初めて目にする幼竜は幼くとも軽自動車ほどある。
翼は一米くらいと短い。
成体の鋭い目とは反対に、幼竜の目は大きくて真ん丸。
透明なまぶたが成体より綺麗だ。
ドレッド(僕は許しを得てドラゴンをその名で呼んでいる)が言うには火山に暮らすドラゴンは五十年ほどで成体になり平均して五百年ほどで命尽きてマグマに溶けるという。
ドラゴンの皮膚はもちろんマグマなどへっちゃらだ。
しかし、命が尽きると神秘性が失われるようで溶けてしまうらしい。
ちょっと怖くて、ちょっと儚い。
「大人しいね」
「というか、どこが堂々としてるみたい」
幼竜が生まれたのは三年前。
人前に姿を現すのは本来、成体になってからなので、今回のケースは歴史的に見て非常に貴重なお披露目となる。
なんと明日、一年に一度だけ盛大に行われる感謝と親睦を深めることを目的とした神聖な祭事、竜吟虎嘯祭|(りゅうぎんこしょう)に参加させるつもりらしい。
ドレッド曰く、他のドラゴン達に文句を言われるかも知れないが、古い風習に凝り固まらず、新しいことをして皆と今まで以上に楽しい一日にしたいそうだ。
それは良い提案だと思う。
だから僕は人目に出しても恥ずかしくないよう綺麗に仕上げようと気合いを入れた。
「そうだ。ディスカリフよ、君にもう一つ頼みがある」
「ディスカリフ?」
訝しげにこちらを振り向く紗綾香さんに、僕は咄嗟に気にしないよう言った。
「こほん。よせドレッド。皆の前でその名を呼ぶな」
ドレッドボルカヴァスめ。
俺が闇の人間だと知れたらどうするつもりだ。
俺は愛する人を巻き込みたくはない。
むしろ、惹かれるまま光へ飛び込み愛の色に染まりたい。
「たのくん」
「それでいいよ。何?」
畏れずこんなにもラフに彼と話すのはこの世界で僕しかいないだろう。
今のところ、サイクロプス先生からも担任のインプ先生からもお叱りはない。
むしろ、サイクロプス先生にアレコレ聞かれたり、頼まれて仲介役になることがあった。
「その子にも名前を与えてやってくれないか?」
ドレッドは名前を貰ったことが一生の宝物を貰ったみたいに嬉しいらしい。
そのお礼として、一度だけ遊覧飛行をさせてもらったというわけ。
他のドラゴンに自慢しているという話も最近は聞いた。
火山を離れて大丈夫なのか?
と当然の質問をすると、一週間は平気、町の人にバレなきゃ平気、大丈夫なにも起こらない、と無責任に適当な答えを返してきた。
こんな調子だから僕は彼をどうも本気で敬えない。
友達みたいに思ってしまう。
「承った。未来永劫に世を照らす栄誉を授けよう」
「おお、よくは分からぬが有難い。ゆっくり考えて構わないから後で教えてくれ」
「分かった。それでは互いに仕事に戻ろう」
「アデューナイトリアス」
「しっ!」
彼はお喋りだ。
これからは秘密の暗号を伝えるのを控えよう。
「羨ましいなあ」
「え?」
「川大くんのことが」
「はは、は、あはは。もしかしてドラゴンと仲良くしていることが羨ましい?」
「そう」
「じゃあ、紗綾香さんもこれから仲良くするといいよ」
「むりむり!私にはとても無理です!」
全力で否定する紗綾香さんが可愛いくてずっと見ていたいが男としてモンスタートリマーの仕事を果たさなければならない。
僕達はブラッシングに取り掛かる。
適度な硬さと柔軟さを備えた人工毛の楕円形のブラシを使って、表面の砂利や煤を取り除いていく。
ドラゴンの体表は基本的には古代魚と同じ堅固な菱形の硬鱗で覆われていて、また背骨に沿って瓦状に先の尖った楯鱗が続いているのだが、首の表からそのままお腹を通って尻尾の付け根まで、つまりは体の下側はトカゲなどでよく見られる滑らかな粒状の鱗に覆われていて多少は弾力がある。
体表の鱗は傷つけないよう力加減に気を付け、特に背の楯鱗の隙間の汚れに注意し、表面で固まった溶岩を丁寧に剥がす。
下側の鱗は固まった溶岩がこびりついてはいないが、対して煤汚れが酷いので乾いた雑巾で根気よく拭う。
「川大くん、もう大丈夫かな?」
「うん。いいと思う」
「それじゃあここまで。お昼にして、それからベイジングに移りましょう」
「分かった」
ブラッシングで午前が終わった。
今回は百日紅にお弁当を用意してもらっている。
半分ほど食べ終えた頃に遅れて花屋敷さん達も戻ってきた。
「まだ半分しか終えてないよ」
花屋敷さんは苦笑した。
よく見ればハーレム状態で男なら覚醒ハイテンションになっているはずなのに、それなのに彼がここまで疲労困憊となるのは相手がモンスター最大のドラゴンなだけある。
初めにドラゴンに横に倒れてもらって背中を、次に伏せてもらい体の側面に翼と尻尾を、最後に立ってもらって首下と腹、そして手足の汚れを特製のデッキブラシで落とす。
ドラゴンのトリミングは巨体ゆえに必ず全員で取り掛かる。
それでやっと午前中にブラッシングを終えられる。
「今日は日没までかかりそうだ」
「先に終わったら手伝うよ」
「ありがとう。でも、気持ちだけで結構だ。これは私達に任された仕事だからね」
花屋敷さんの真っ直ぐにストイックなところは尊敬する。
隣で頷く逆瀬川ちゃんも同じだ。
二人の疲れた表情の後に楽しそうな表情が浮いてくる。
その気持ちも分かる。
「行こう。紗綾香さん」
「うん、ちょっと待って」
つい急かしてしまった。
それくらい現在ではトリミングが楽しくて仕方なくなっている。
続いては道具を揃えてシャワーのところへ移動してベイジングを行うのだが、その前に軽く耳掃除だ。
ドラゴンの耳は爬虫類と同じですぐに鼓膜がある。
なので本格的に耳掃除はしないが、イヤークリーナーを浸した綿で入り口周りを軽く拭き取ってやり、最後に耳に息を吹き掛けて中に入った砂や煤を飛ばしてやる。
幼竜はくすぐったそうに頭を振るった。
見るも愛らしい姿に僕達は顔を見合わせて微笑した。
「紗綾香さん。この子の名前なんだけど」
「うん?さっきドラゴンさんと話してたね」
シャワーは四十度に設定してある。
冷やすことは彼らに良くない。
熱い湯で体表を素洗いしていく。
鼻と耳、そして目の周りは必ず上から、シャワーの勢いを弱めて洗う。
「紗綾香さんが名付けてよ」
「え!私!?」
「うん」
「そんなダメだよ!出来っこないって!」
「これには考えがあって、大事なことだと思うんだ」
「大事なこと?」
「もし他のドラゴンが名前を欲しがったら僕のところに集まるかも知れないだろう。そんなことになったら色々と大変だ」
「うーん……。でも、ドラゴンは神聖なモンスターだから」
「逆だよ。信仰しているからこそ、大切だからこそ、人が願いを込めた名前を捧げるんだ」
「願いを込めた……名前」
「地元の人が、その土地を守るドラゴンに名前を付ける。異世界人の僕じゃなく、この世界で生まれた君が名付けることはいいきっかけになると思うんだ。僕は名付けることが広まればいいなと思ってる。やっぱり名前があると、距離が近くなってより親しくなると思うから」
僕は思い出を走馬灯のように振り返る。
「百日紅に名前を付けて、名前があったから、僕達はもっと仲良くなれた気がする。だから、みんながもし望んでくれたら。みんなとドラゴンも、僕達のようになってくれたらなって、そう思うんだ」
「なるほどね……」
「ごめん。馬鹿だからちゃんと説明出来ない」
「ううん。川大くんの気持ち、きちんと伝わったよ!」
「本当?」
「だから決めた!私考えてみるよ!」
素洗いを終えてシャンプーを行う。
長い時間をかけて積み重なった汚れを尻尾の先までしっかり落としていくのだが、幼竜なので汚れはそこまで頑固ではなかった。
ドラゴン専用にブレンドされた植物由来の特別なシャンプーで洗ってやる。
使うのはスポンジだ。
汚れが落ちるまで根気強く擦り洗う。
鱗の表面が半透明の膜みたいになるまでしっかり汚れを落とす。
僕のように力任せに一気に落とすのではなく、紗綾香さんのように細かい動きで少しずつ落としていくことが望ましい。
彼女の動きを目で追い真似をしていたのだが、ふと彼女と目が合って笑みを交わすことが度々あった。
人はこれを幸せと呼ぶらしい。
「僕が持ち上げるから足裏をお願い」
「はい。分かりました」
幼竜はまだ言葉が通じず、またトリミングされるのが初めてのためか伏せは何とかいけたが、成体のように自ずから足を後ろへ上げることはしてくれなかった。
成体の上げた足を乗せるキャスター付きの台座も邪魔になりそうだ。
そこで僕がドラゴンの足を抱えてサポートし、紗綾香さんが足裏を洗うことに決めた。
「うぐふ……ん」
「川大くん大丈夫?」
「うん。ぜんぜん余裕」
それを終えたら全身をチェックして、大量の湯ですすぎを行う。
ヌルヌルがなくなってザラザラするまでシャンプーをしっかり洗い流す。
足裏がまた大変だった。
「うふん……はあ」
「本当に大丈夫?無理しないでね」
「僕は男だから」
「そうだね。頼りになります」
姫からの誉め言葉に力が弛みかけたが何とか踏ん張った。
彼女の為ならドラゴンの足なんて軽い軽いと油断して降ろした拍子に足を踏まれ堪ったものではなかった。
小学生のランドセルを落としたような重圧だった。
幸いにも怪我はなかった。
幼竜も申し訳なさそうにこちらを見遣り足を上げてくれた。
悪いのは僕だ。
罪は僕一人で背負う。どうか思い悩まないでほしい。
「カロさんが、ごめんね、だって」
「カロさん?」
「この子の名前だよ。決めたの」
「カロさん。いい名前だと思うよ」
「川大くんの名前から取ったんだけど、いいかな?」
キュン。
愛が迸る音がした。
「恥ずかしいけど……嬉しいよ!」
「本当!」
「うん。ほら、カロさんも嬉しいって」
「そっか。良かったー」
紗綾香さんが改めて名前を呼んでみるとカロさんはこちらを振り向いて、円らな瞳でジッと彼女を見詰めた。
面白い。
これは呼び掛けを受けて、今の言葉が自分のことを指していると理解しているに違いない反応だ。
彼女は嬉しくなってカロさんの頭を撫でた。
今までなら絶対に有り得ない畏れ多いことだ。
ドラゴンと彼女の仲が一瞬で親しくなったように見える。
カロさんは嬉しそうに目を閉じて紗綾香さんに頭を擦り付けた。
「羨ましい」
「え?川大くん何か言った?」
「早くタウエリングしてあげよう」
「そうだね。湯冷めしちゃう」
シャワーを止めて、カロさんの頭から体まで隅々まで丁寧にタウエリングを行い、珪藻土マットへ誘導する成体とは違って、サイクロプス先生が敷き詰めてくれた予備の芝生マットの上へと誘導する。
僕は全力疾走してスタンドドライヤーを二つ用意した。
これは充電式のものなのでコードレスだ。
安心安全に、そしてスムーズにドライングが行える。
「ありがとうね」
「いえ、これくらいお安いご用ですよ」
これは間違いなく好感度アップだ。
僕のテンションもドライヤーの熱風もハイになる。
ドラゴンにおいては熱に強いので、顔を除いてハイで構わない。
ガンガン乾かしていく。
それを終えたらアロマを全身に塗っていく。
パヤタタと呼ばれるファイアーボールみたいな見た目の果物のアロマを使う。
元いた世界にあったドラゴンフルーツにも似ている燃えるような赤い皮に包まれた果物だ。
そのアロマをスプレーで吹き掛け、手で薄く塗り広げていく。
外骨格である鱗の治癒と強化に効果がある。
また、鱗状の柔らかい皮膚から体内へ浸透させて健康を増進する。
ドラゴンから香る焦げ臭さがトロピカルスメルに変わった。
「最後に爪研ぎをしましょう」
名残惜しい。
紗綾香さんが言うようにこの作業でドラゴンのトリミングは終わりとなる。
二人の初めての共同作業も儚く終わりとなる。
涙早々に枯れそう。
「ふん……ぬっ」
「頑張って!私も急ぐから!」
ドラゴンの爪は硬く、とてもカット出来ない。
しかし、彼らには硬い岩で爪を研ぐ習性がある。
それでも当然に綺麗にとはいかないので僕達が研いで整えてやる。
人の手くらいに大きい超合金の金属ヤスリで形を整えていく。
手はスムーズにいったが、やはり足が大変だった。
「ふひゅ……」
「はい!これでおしまい!」
先生からのチェックを受けてトリミングは終わり、僕達は花屋敷さん達の作業が終わるまでカロさんと外で遊ぶことになった。
夕暮れから星が満ちるまで遊んだ。
僕と紗綾香さんは寒さを凌ぐために寄り添って、寝そべるカロさんに背を預け夜空を見上げた。
お尻は地熱で気持ちは紗綾香でぽかぽかする。
天の川らしきものを見つけて七夕を思い出す。
彦星と織姫のように僕と紗綾香さんも間も無くお別れだ。
彼女の体が、そっと僕から離れる。
花屋敷さん達がトリミングを終えてしまったらしい。
お尻だけぽかぽかする。
僕はまだ星を見上げていた。
願いを届けたいのに星は流れなかった。
「どうだった?」
代わって逆瀬川ちゃんが隣に付いた。
人懐っこい子だ。
「今日は人生最高の日だったよ。ほら、星もこんなに綺麗だ」
「今日は湯気が薄くて、星がよく見えるね」
「綺麗やねー」
百日紅が頭に乗った。
これは鬱陶しいので逆瀬川ちゃんにあげる。
彼女は百日紅を優しく引き取って胸に抱いた。
「さ、終わったなら帰ろう」
立ち上がろうとするも、逆瀬川ちゃんが天を仰いだまま僕の服を引っ張って許さなかった。
僕は浮いた腰を仕方なく下ろす。
「もう少し」
前に似たことがあったな。
「分かった。もう少しだけ」
遠く火口付近でブルーファイア現象が起きていた。
青い炎は幻想的で美しい。
僕は夢心地になってまぶたを閉じた。
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