メルヘンなんてクソくらえ!

旭ガ丘ひつじ

文字の大きさ
34 / 37

❁かしこいロリニアエルゼ

しおりを挟む
これは、別に書いた後日談になります。
主役はロリニアエルゼちゃんです。

彼女が生まれるキッカケとなった童話『かしこいエルゼ』の終わりがあまりに可哀想だったので、幸せになってほしいという思いから彼女は生まれました。


ฅ•ﻌ•ฅ


なだらかな山の麓にあり、大自然に囲まれた穏やかな村。
そこは変人が多いと有名な村で、村人達は主に、農業や牧畜、鉄の加工等をして生活しています。

ロリニアエルゼ。
彼女もその村の苺農家の娘として生まれました。
ロリニアは幼い頃より、かしこいロリニアエルゼと呼ばれ、家族にとても愛されて育てられました。

ロリニア「おかあさん!この苺病気だよ!」ほら

その呼ばれ始めは、ロリニアが四才の頃になります。

おかあさん「あら本当ね!」

おとうさん「ロリニアは賢いなあ」なでなで

幼くして病気の苺を見抜いたことで、家族から、かしこいロリニアエルゼと呼ばれるようになったのです。
また、彼女が少し大きくなって、村の人達もそう呼ぶようになりました。

ですが……。

男子「ロリニア!」

ロリニア「なに!」

男子「川に帽子が落ちたんだ」

取り巻きの男の子達は何故かクスクスと笑っています。

ロリニア「それって自分で取れないから、つまりワタクシに取ってほしいってこと?」くびかしげ

男子「そうだよ!」

ロリニア「わかった!」

ロリニアは笑顔で快諾し、男の子達について川へとやって来ました。
その川は子供には深く、日頃から大人達に入るなと警告されています。
それでも。

ロリニア「そうだ!木の枝を使えばいいんだ!」にっこるん!

ロリニアは木の枝を使って懸命に帽子を取ろうとしました。
しかし、彼女はバランスを崩してそのまま川に落ちてしまいました。

男子「賢いロリニアが川に落ちたぞ!」

それを合図に取り巻きの男の子達は、賢い癖に結局泳ぐのか、泳ぎ方も知らないなんて頭悪いな、等と次から次へと皆してロリニアを馬鹿にしました。
彼女はそれを、川のメロディに乗せた歌のようにボッーと聞いていました。

幸いにも、近くを通りかかった大人にロリニアは助けられましたが、気の毒なことに、この先も彼女は馬鹿にされ続けました。

ロリニア「それってワタクシは馬鹿だってことで、しかも使えない子だってことで、だからいらない子で、つまり死ねってことか」

女子「そうよ。あんたなんか死んじまえ」

村の子供達がいっせいに、死んじまえ、と繰り返しロリニアに冷たい声を突き刺しました。
すると彼女は頭を抱え。

ロリニア「うわあああああ!!」がくがく!

体を震わせて発狂し、やがて動かなくなりました。
この時にはもう、助けてくれる大人の人達も少なくなり、ロリニアはついに壊れてしまいました。

それでも家族には愛され、おかげで健やかに育ち、ロリニアは無事に十五才を迎えました。
そしてこの年、彼女は村の外から来たチトという少女と運命の出逢いを果たします。

ロリニア「あああああ!!」ぴょんぴょん!

しかしチトという少女もまた、苦しむロリニアを愉快に放置して村を去ってしまいました。
ところが運命とは不思議なもので、ロリニアと彼女は後に、また再開することになります。

それはある森の中で、また別の少女との運命の出逢いをキッカケに。

ロリニア「ここ……どこだ?」きょろりん

この日ロリニアは、孤独に森の中でさ迷っていました。
村人に馬鹿にされて我を失い、気が付いた時にはここにいたのです。

ロリニア「うぅ……」ぐすっ

涙が出そうなのをこらえていると、そこへ。

チシャノ「あ!」

ロリニア「あ!」

ロリニアはチシャノという少女と出逢いました。

チシャノ「ん?」

ロリニア「あのね、ね、そのなんだ」おろりん

チシャノ「そっか」

ロリニア「そういうことだ!」

意味なく訳なく意気投合した二人。
チシャノはロリニアの手を引いて、さっそく自宅へと招きました。

チシャノの家は高い塔の上にあり、彼女はそこで義理の母である老婆と二人暮らしをしています。

上から垂れる縄の梯子をスルスルと登り、二人は家の中へ。

ママ「チシャノ、また新しい友達かい?」

チシャノ「あのね、多分ね、迷子なんだね」

ママ「お前は確か、あの村で有名な……」

チシャノ「ママ、知ってるんだね」

ママ「お前は賢いロリニアエルゼか」

ロリニア「そうなんだ!」にっこるん!

ママ「今すぐ出ていきな!」

チシャノ「ママひどいんだ」ぷくー

ママ「この子といると不幸になるよ!」

チシャノ「ならない!」おこぷん

ロリニア「それってワタクシは悪魔の子だってことで、人間じゃないってことで、それは気味悪いってことで、つまり消えろってことだ」

チシャノ「そんなことないんだね!」

ロリニア「絶対そういうことだあああああ!!」がくがく!

発狂したロリニアを、老婆はそれ見ろと言わんばかりに、高い塔の上から容赦なく突き落としました。

チシャノ「きゃ!」

ママ「二度と来るな化物め!」

そう言われてもロリニアは梯子を登りました。
その度に突き落とされても、何度も必死に登りました。
彼女は求めていたのです。

チシャノ「やめてママ!!」

初めて大きな声をあげたチシャノに、老婆はハッとなりました。

チシャノ「私、今日はチトの家に行く!」

チシャノは急いで梯子を降りると、ロリニアを心配しました。

チシャノ「大丈夫?」

ロリニア「頑丈だから」

チシャノ「行こう、ロリニアちゃん!」

ロリニア「……うん!」

こうして、二人は仲良く手を繋いでチトの家に向かいました。
そしてそこで、ロリニアは。
チト、チシャノ、カナリィという少女達と、チトの弟のココ、それに喋る猫のカフェと、確かに友達になりました。

さて、それから一年後。
チトが町にやって来ることを村人から伝えられたロリニアは、さっそく苺のパイを焼くと、バスケットに入れたそれを両手で大事に抱えて、走って走って会いに行きました。

チト「チシャノ、カナリィ。久しぶりね」

チシャノ「ね!」

カナリィ「ここにロリニアがいれば、みんな勢揃いでしたのに残念です」

チト「いや、あいつはいなくていい」

チシャノ「ひどいんだ」ぷくー

カナリィ「あんまりです!」ぷい

チト「だってカササギみたいにうるさいし」

おーい!

チシャノ「あ!」

チトー!

チト「ちっ!」たたっ!

チトは本能的に逃げ出しました。

ロリニア「どうして逃げるんだー!」

カナリィ「ロリニア!」

ロリニアは二人の前を矢のように通り過ぎると、そのままチトを追いかけて見えなくなりました。

カナリィ「追いかけましょう!」

チシャノ「ん!」

ところで。
逃げ出したチトは、沈む太陽とは反対に、小高い岩山を登り始めていました。

ロリニア「どうして逃げるんだよー!」

チト「体が勝手に逃げるのよ!」よじよじ

ロリニア「それって恥ずかしいってことで、本当は照れているからで、どうしても我慢できないほどに、つまり好きってことだあああああ!!」がしがし!

チト「怖い恐い怖い恐い!」よじよじ!

ロリニアは虫のように岩肌を這い上がりましたが、いきなり足を滑らせて勢いよく地面に叩きつけられました。

チト「ロリニア!」

返事はありません。

チト「やっちまった……」

ロリニア「ああああああああああ!!」がばっ!

チト「!?」びくっ

ロリニアは覚醒したのか、再び凄い勢いで這い上がりました。
先に頂上についたチトは、狭いその頂でついに追い詰められました。

ロリニア「ああ……あああ……!」ふらりん

チト「もう逃げないから!落ち着け!」

ロリニア「どうしてえ……」ゆらりん

ロリニアは体を揺らしながら、ゆっくりとチトに歩み寄ります。

チト「それは正直言ってあなたが怖いからよ!」

ロリニア「!」ぴたっ

チト「あ、その……」

ロリニア「……そっか」

チト「ごめんなさい。違うの」

ロリニア「そういうことか!」

ロリニアが笑顔のまま一筋の涙を流したのを見て、チトは思わず強く抱き締めました。

ロリニア「チト……?」

チト「私はまた友達に酷いこと言って、泣かせて、本当にごめんなさい!」ぎゅ

チトも泣いていました。
ロリニアはその涙をやさしく拭ってあげます。

ロリニア「泣かないで!ほら、パイを焼いてきたんだ!」ぱか

チト「あら美味しそう」ぐすっ

ロリニア「きっと美味しいから、そしたらチトも笑顔になれるんだ!」

チト「思い返せば、あなたって、いつも私の為に一生懸命がんばってくれるよね」

ロリニア「もちろんだ!」ふふん!

チト「これ、あなたが焼いたわけ?」

ロリニア「つまり凄いんだ!」ふふふん!

チト「ありがとう、大好きなロリニア」にこっ

ロリニア「チト……チト!今!」

チト「何も言ってないし!」ぷい

ロリニア「絶対に言った!」

チト「それよりはやく食べましょう。走って腹が減ったわ」く~

と、ここでようやくチシャノが追い付きました。

チシャノ「ふ、二人とも……はや……だね……へへ……」ふらふら

カナリィ「チシャノ助けてくださーい!」

その声に三人が慌てて駆けつけると、カナリィは今にも落ちそうでした。
三人は揃って手を伸ばし、声を合わせて一緒に引き上げました。

カナリィ「助かりました!」

チト「あまり無茶しないの」

ロリニア「そうだ。落ちたら死ぬぞ」

チト「あなた死ななかったよね」じとー

チシャノ「さすがロリニアちゃんだね!」ぱちぱち

ロリニア「えへへ」てれりんこ

チト「いや、そこ褒めるとこでも照れるとこでもないし」

カナリィ「ふふふ!」くすくす

ロリニア「そうだ!みんなで食べよう!」ぱかっ

チシャノ「わあ!」

カナリィ「このパイ、ロリニアが焼いたのですか!」

ロリニア「どうだ!」えっへん!

カナリィ「やっぱり!あまり綺麗じゃないから、そうだと思いました!」

チト「こら。正直過ぎよ」しっー

カナリィ「ごめんなさい!」ぺこ

ロリニア「いいんだ。それって見た目が良くなくても」

みんなで一口、ぱくり。

ロリニア「つまり味は良いってことだ!」にっこるん!

まるでパイのような夕日に照らされ、三人の頬は苺色に染まりましたとさ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

可愛らしい人

はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」 「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」 「それにあいつはひとりで生きていけるから」 女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。 けれど、 「エレナ嬢」 「なんでしょうか?」 「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」  その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。 「……いいえ」  当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。 「よければ僕と一緒に行きませんか?」

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

処理中です...