3 / 5
キチンと挨拶する事は基本中の基本です
しおりを挟む
さて早朝。とりあえず私は自分が作った己の設定を反復することにしました。
「私はカッツ村出身の幻獣及び周辺の事を研究している学者です。そのため様々な知識を持ち合わせているのですよ。本来なら危険なこの山に住うのも、その為です」
よし、現地住民への自己紹介もこれで完璧ですね。大学時代の圧迫面接への対策や実際の面接を乗り越えてきた事が役に立ちそうです。少しぐらい威圧されたり理不尽な事を言われても、聞き流せる自信があります。
「でも実際設定の裏付けを取らなくては」
そう、その為にはこの山の幻獣様とやらに認めてもらわなければなりません。
神様に頼んでもよかったのですが、逃げ帰ってしまったようで、何かあったらと言われても一々石像に声をかけるのも面倒くさい。
しかもこれ意外と場所を取るので邪魔なんですよね。
『いや、見えてるからね!?石像壊したりしないでくださいね!』
「日本にはプライベート保護法というのがありまして」
『そんな四六時中監視してないよ!』
なんか、心の中に語りかけてきたっぽい神様がぎゃあぎゃあ騒いでますが無視して本を開くと、この山に住う幻獣に認められる方法を、と願うとパララッとページが捲れ、ちゃんと記載されていました。
「何々…はぁ、なるほど」
ある程度読み終えるとパタリ、と本を閉じると私は小屋から出て慣れない足取りで目的の場所に進むことにしました。
途中食べられる物、食べられない物等を調べつつ、そう言えばふとモンスターに襲われないなと思い調べてみると、霊獣の力で残忍なモンスターなども近づかず確かにこれは安全地帯、などと思い歩く事5時間。いや、死にますね、コレ。
令嬢の体力が思ったよりあってよかった、思っていたより上流階級とは体力勝負なのかもしれません。
さて、とある洞窟の前にたどり着いた私はそこでペコリとお辞儀をします。
「霊獣ニャオラン様、私はこの山の中間の小屋に住う事になりました、学者のユーリと申します。しばらくお世話になります」
そう言うと中からのっそりと威圧感たっぷりに“ニャオラン”様が姿を現した。
その大きさは象ぐらいはあり、しなやかな体つきは猫そのものでまるで夜を纏ったような漆黒の毛並みと、ピンと伸びたたおやかで尚且つ気品のある尻尾…詰まる所、まぁ大きい猫です。
でっかい黒猫です…かわいい。目は月を思わせる金色で、見つめられると思わずうっとりと吐息が漏れてしまいます。
私はどちらかと言うと猫派なんですよね、そう思いながら先程食べられると判断された木の実を取り出し。
一口パクリと自分のお口へ。
「いや、お前が食べるんかーい」
「すみませんお腹が空いてたので、いります?」
「いや、いらんけど」
「なら何故突っ込みを?」
「ここにくる者どもはやたら供物とか持ってきたがるからな、ついその類かと」
「おお、なるほど。すいませんニャオラン様は伝承がねじ曲がっただけで基本下々の物に興味はなく、キチンと挨拶すれば良いと記載されていたので」
「記載…ああ、学者とか言ってたか」
そう、何故か恐れられてこの山は危ない事になってるが、此処を根城にする霊獣ニャオランは至って力がとても強いだけで怒らせなければ、気の良い話のわかる猫であらせられたのだ。
「今ワシのこと猫って思った?」
「いえいえ、とても美しく気品のあり知性のある素晴らしい方だなと」
「こほん、そ、そうか」
ヤダ照れてる可愛い。
「とにかく、貴殿の…ユーリとか言ったか、挨拶を受け入れよう。他の物に迷惑をかけねば自由にして構わん」
「自由にっ」
ピクリと私はニャオラン様を見つめます。
「う、うむ。なんだ?」
「いえ、此処に来るまで5時間ほどかかったんですよね」
「そうか」
「ニャオラン様引っ越ししてきません?」
「は?」
私の提案にニャオラン様は首を傾げるが尻尾がゆらゆら動いている。あれは猫ちゃんの好奇心の現れ、逃してはならぬ!
「見ての通り私は普通の人間です」
「うむ」
「何かあるたびに5時間もかけて此処まで来るのはとても大変です」
「そうだな」
「ですから、私の小屋に来ませんか?」
「なんでそうなる」
猫飼いたい、それは長年の夢でした。しかし私はアレルギー持ちでそれは叶わなかった、なら此処で叶えたい。
突然そんな思いが湧き上がり私は、実は召喚者である事や神と話せる祭壇の事など本以外のことは全てニャオラン様にゲロしました。
使えるものは全て使う。就活で学んだ事です。
「ぐぬぬ、神か…」
「ええ、神も此処を私の住処として与えになったのでニャオラン様の近くにと言う意味かと。何せ私、簡単に死んでしまう様なひ弱な人間種ですから」
『いやーそんな事一言も言ってな』
そう言えば祖母が役に立たない家具はすぐに捨てた方が良いって言ってましたね、と私は古屋にある神様の像を思い出します。
『ニャオランよ、お聴きなさい。貴方にユーリの護衛を命じます』
ぱぁぁと、謎の光を放ち声が響き渡りました。おお、良い仕事です、神。帰ったら石像を磨いてあげましょう。
「…ぬぅ、仕方あるまい。分かった、此処の寝床も気に入っていたのだがな…」
「やはり神には逆らえないものですか?」
「中にはそうで無いモノもおるが、ワシは我らが神に創造されたのを知っておる。親には逆らえん」
あの神に信仰心のある生き物がいた、だと。
『失礼ーー!!!』
「いや、でもニャオラン様がきていただけるなら私も安心してこの世界でやっていけそうです」
「そうか、では早速だがその小屋とやら向かおう」
なんて展開の速さ、さてはニャオラン様思い立ったが実行タイプですね?仲良くなれそうです。
そしてニャオラン様が伏せの状態になり、え?これはまさか。
「乗れ」
心の中でガッツポーズを取りながら、ニャオラン様の背に乗せていただきます。
やだふかふか、つやつや。
「落ちるなよ」
そう言うとサッと私が落ちない程度の速さで山を駆け下りてくる姿に、本気を出せばもっと早く走れるのだろうと思いつつ背中の心地よさを満喫する私でした。
ー小屋周辺情報 LV1
建物
学者の小屋。
住人
ユーリ。 ニャオラン。 神の石像。
「私はカッツ村出身の幻獣及び周辺の事を研究している学者です。そのため様々な知識を持ち合わせているのですよ。本来なら危険なこの山に住うのも、その為です」
よし、現地住民への自己紹介もこれで完璧ですね。大学時代の圧迫面接への対策や実際の面接を乗り越えてきた事が役に立ちそうです。少しぐらい威圧されたり理不尽な事を言われても、聞き流せる自信があります。
「でも実際設定の裏付けを取らなくては」
そう、その為にはこの山の幻獣様とやらに認めてもらわなければなりません。
神様に頼んでもよかったのですが、逃げ帰ってしまったようで、何かあったらと言われても一々石像に声をかけるのも面倒くさい。
しかもこれ意外と場所を取るので邪魔なんですよね。
『いや、見えてるからね!?石像壊したりしないでくださいね!』
「日本にはプライベート保護法というのがありまして」
『そんな四六時中監視してないよ!』
なんか、心の中に語りかけてきたっぽい神様がぎゃあぎゃあ騒いでますが無視して本を開くと、この山に住う幻獣に認められる方法を、と願うとパララッとページが捲れ、ちゃんと記載されていました。
「何々…はぁ、なるほど」
ある程度読み終えるとパタリ、と本を閉じると私は小屋から出て慣れない足取りで目的の場所に進むことにしました。
途中食べられる物、食べられない物等を調べつつ、そう言えばふとモンスターに襲われないなと思い調べてみると、霊獣の力で残忍なモンスターなども近づかず確かにこれは安全地帯、などと思い歩く事5時間。いや、死にますね、コレ。
令嬢の体力が思ったよりあってよかった、思っていたより上流階級とは体力勝負なのかもしれません。
さて、とある洞窟の前にたどり着いた私はそこでペコリとお辞儀をします。
「霊獣ニャオラン様、私はこの山の中間の小屋に住う事になりました、学者のユーリと申します。しばらくお世話になります」
そう言うと中からのっそりと威圧感たっぷりに“ニャオラン”様が姿を現した。
その大きさは象ぐらいはあり、しなやかな体つきは猫そのものでまるで夜を纏ったような漆黒の毛並みと、ピンと伸びたたおやかで尚且つ気品のある尻尾…詰まる所、まぁ大きい猫です。
でっかい黒猫です…かわいい。目は月を思わせる金色で、見つめられると思わずうっとりと吐息が漏れてしまいます。
私はどちらかと言うと猫派なんですよね、そう思いながら先程食べられると判断された木の実を取り出し。
一口パクリと自分のお口へ。
「いや、お前が食べるんかーい」
「すみませんお腹が空いてたので、いります?」
「いや、いらんけど」
「なら何故突っ込みを?」
「ここにくる者どもはやたら供物とか持ってきたがるからな、ついその類かと」
「おお、なるほど。すいませんニャオラン様は伝承がねじ曲がっただけで基本下々の物に興味はなく、キチンと挨拶すれば良いと記載されていたので」
「記載…ああ、学者とか言ってたか」
そう、何故か恐れられてこの山は危ない事になってるが、此処を根城にする霊獣ニャオランは至って力がとても強いだけで怒らせなければ、気の良い話のわかる猫であらせられたのだ。
「今ワシのこと猫って思った?」
「いえいえ、とても美しく気品のあり知性のある素晴らしい方だなと」
「こほん、そ、そうか」
ヤダ照れてる可愛い。
「とにかく、貴殿の…ユーリとか言ったか、挨拶を受け入れよう。他の物に迷惑をかけねば自由にして構わん」
「自由にっ」
ピクリと私はニャオラン様を見つめます。
「う、うむ。なんだ?」
「いえ、此処に来るまで5時間ほどかかったんですよね」
「そうか」
「ニャオラン様引っ越ししてきません?」
「は?」
私の提案にニャオラン様は首を傾げるが尻尾がゆらゆら動いている。あれは猫ちゃんの好奇心の現れ、逃してはならぬ!
「見ての通り私は普通の人間です」
「うむ」
「何かあるたびに5時間もかけて此処まで来るのはとても大変です」
「そうだな」
「ですから、私の小屋に来ませんか?」
「なんでそうなる」
猫飼いたい、それは長年の夢でした。しかし私はアレルギー持ちでそれは叶わなかった、なら此処で叶えたい。
突然そんな思いが湧き上がり私は、実は召喚者である事や神と話せる祭壇の事など本以外のことは全てニャオラン様にゲロしました。
使えるものは全て使う。就活で学んだ事です。
「ぐぬぬ、神か…」
「ええ、神も此処を私の住処として与えになったのでニャオラン様の近くにと言う意味かと。何せ私、簡単に死んでしまう様なひ弱な人間種ですから」
『いやーそんな事一言も言ってな』
そう言えば祖母が役に立たない家具はすぐに捨てた方が良いって言ってましたね、と私は古屋にある神様の像を思い出します。
『ニャオランよ、お聴きなさい。貴方にユーリの護衛を命じます』
ぱぁぁと、謎の光を放ち声が響き渡りました。おお、良い仕事です、神。帰ったら石像を磨いてあげましょう。
「…ぬぅ、仕方あるまい。分かった、此処の寝床も気に入っていたのだがな…」
「やはり神には逆らえないものですか?」
「中にはそうで無いモノもおるが、ワシは我らが神に創造されたのを知っておる。親には逆らえん」
あの神に信仰心のある生き物がいた、だと。
『失礼ーー!!!』
「いや、でもニャオラン様がきていただけるなら私も安心してこの世界でやっていけそうです」
「そうか、では早速だがその小屋とやら向かおう」
なんて展開の速さ、さてはニャオラン様思い立ったが実行タイプですね?仲良くなれそうです。
そしてニャオラン様が伏せの状態になり、え?これはまさか。
「乗れ」
心の中でガッツポーズを取りながら、ニャオラン様の背に乗せていただきます。
やだふかふか、つやつや。
「落ちるなよ」
そう言うとサッと私が落ちない程度の速さで山を駆け下りてくる姿に、本気を出せばもっと早く走れるのだろうと思いつつ背中の心地よさを満喫する私でした。
ー小屋周辺情報 LV1
建物
学者の小屋。
住人
ユーリ。 ニャオラン。 神の石像。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
7
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる