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替え玉作戦1号機
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それでぼくはお父さんのキザなサングラスを掛け、送信機を持ってトイレを出た。
そしてお父さんみたいに「お散歩」を口笛で演奏しながら、軽快に駐機場へと歩いた。
茶トラ先生はぼくのことを、お父さんと瓜二つだとか言っていたけれど、確かにそうらしく、それから駐機場へ着いても、ほかの人たちはみんなぼくのことをお父さんだとばかり思っているようだった。
キザなサングラスなんかも掛けていたし。
さて、駐機場ではデモフライトの準備が着々と進んでいた。
商談相手の会社の、例の太った威張ったお偉いさんらしい人たちも、ぞろぞろとのっしのっしと歩いてきて、準備してある折りたたみイスに、ドカンドカンドカンと座りはじめた。
(やっぱりイスのパイプが曲がって壊れそうだったし)
それからスタッフの一人がぼくを商談相手のお偉いさんたちに紹介した。
それでぼくは彼らにぺこりと頭を下げた。
そして別のスタッフがぼくに歩み寄り、一生懸命に何やらうわごとのように説明を始めた。
「ええと、エルロン舵角は右12ミリ、左13ミリ。エクスポーネンシャルは30パーセントで、え~と、ラダーエレベーターミキシングは、5パーセントかけている。それからエンジンはとても快調だ…」
とにかくぼくは、「エンジンはとても快調だ」以外は全く訳の分からないし、まるで宇宙人と交信しているようなことを耳打ちされたので、ぼくは全く訳が分からないまま「了解!」と元気に答え、それから送信機のスイッチを入れ、スタッフに親指を立てて「準備OK」の合図をした。
それでスタッフたちが1号機のエンジンをスタート。
すると「ブイーンポンポロン…」と、エンジンがうなり始めた。
それからスタッフの人も親指を立て、それは「準備OK!」のサインだと思ったので、ぼくは茶トラ先生の教えに従い、送信機の右側のレバーを少しだけ前に動かした。
エンジンが「ブルルルン」とうなり、プロペラが勢いよく回り、飛行機の後ろの方へ風が吹くのがわかり、そして飛行機はゆっくりと動き始めた。
ちなみにぼくはラジコンカーなら多少の経験はあった。
だからぼくにとって、ラジコン飛行機を駐機場から滑走路まで、それこそ自動車のように進めることは、それほど難しいことではなかった。
とにかく、地上を走るラジコン飛行機は、ラジコンカーと同じ要領で動かせたんだ。
だからとりあえず滑走路の端までゆっくりと飛行機を進め、くるりとUターンするところまでは完璧に出来た。
(当機は間もなく離陸いたします…)
だけど、 ぼくはラジコン飛行機を「飛ばした」ことがない!
だからどうなるかなんて、やってみないと分からない!
ところで、飛行機というのは離陸するときは、キ~~~ンと豪快にエンジンを全開にする。
いつだったか、家族で旅行したときに乗った飛行機はそうしていた。(ような気がする)
だからそのときぼくはそれを思い出し、右側のレバーをするするといっぱいまで奥の方へと動かした。
するとエンジンが豪快にうなり始め、飛行機は、それはもう、イノシシのようにものすごい勢いで進み始めた。
だけど、これは後から茶トラ先生に教えてもらったことだけど、ラジコン飛行機は旅客機とは違い、重さの割にはとても強力なエンジンが付いているから、うかつにエンジン全開にすると、結構すごいことになるらしかった。
確かに結構すごいことになった!
ともかく飛行機はものすごい勢いで速度を上げ、あれよあれよという間にとんでもない速度が付き、それで恐くなったぼくはとっさに、左側のレバーを思い切り手前に引いた。
これはぼくのアドリブだったのだけど、ともかく飛行機は機首を上げ、「離陸」した。
だけどそのまま宙返りを始めてしまったんだ。
確かにものすごいパワーだった。
それとぼくが左のレバーを引いたまま固まっていたから、とにかく飛行機はそのままぐるんぐるんと、観覧車のように何回も何回も宙返りを続けた。
だからといって、ぼくはそれから何をどうすればいいのか、見当もつかなかったし…
いずれにしてもこれは、お父さんがやる予定だった「デモフライト」ではなく、スリリングな「曲技飛行」だ。
だけどそのときぼくは、このデモフライトが失敗しないといけないということを、だんだんと理解し始めていた。
それは確か、こういうシナリオがあった。
デモフライト成功→商談成功→パーティー→二次会→横断歩道で〈やったぞ~〉→トラックにひかれる!→お通夜!!
とにかくぼくは、このデモフライトが失敗しなければならない!
だからそのためにぼくは、最大限の努力をはらわなければいけない!
そしてそのことに気付いたぼくは、あることに注意した。
それは、決して送信機を自動操縦に切り替えるスイッチに触れてはいけないということだ!
多分、自動操縦になったが最後、飛行機は安定して飛び続け、最後は見事に着陸してしまうはずだ。
だからぼくは、お父さんが触っていた、左前方のスイッチには決して触れないよう、細心の注意を払った。
ちなみに、そのときラジコン飛行機は、それからも観覧車のようにぐるりんぐるりんと、時計回転に宙返りを続けていた。
それで、そのときぼくは、どうすればこのデモフライトが失敗するのかなぁ…などと真剣に考えていたのだけど、ためしに引き続けていた左のレバーを、ポンと離してみた。
これは本当に、ぼくがアドリブで思い付いたことだった。
ところでその瞬間、飛行機は時計回転の宙返りで、しかも偶然、「三時」あたりを通過中だった。
これは思い切り偶然だったのだけど、とにかくぼくがレバーを離すと、飛行機はそのまま真っ直ぐに地球に帰還することになった。
ぐしゃん!!!
飛行機は見事に地球に激突し、木端微塵に。
滑走路には立派な衝突クレーターが出来た。
そしてお父さんみたいに「お散歩」を口笛で演奏しながら、軽快に駐機場へと歩いた。
茶トラ先生はぼくのことを、お父さんと瓜二つだとか言っていたけれど、確かにそうらしく、それから駐機場へ着いても、ほかの人たちはみんなぼくのことをお父さんだとばかり思っているようだった。
キザなサングラスなんかも掛けていたし。
さて、駐機場ではデモフライトの準備が着々と進んでいた。
商談相手の会社の、例の太った威張ったお偉いさんらしい人たちも、ぞろぞろとのっしのっしと歩いてきて、準備してある折りたたみイスに、ドカンドカンドカンと座りはじめた。
(やっぱりイスのパイプが曲がって壊れそうだったし)
それからスタッフの一人がぼくを商談相手のお偉いさんたちに紹介した。
それでぼくは彼らにぺこりと頭を下げた。
そして別のスタッフがぼくに歩み寄り、一生懸命に何やらうわごとのように説明を始めた。
「ええと、エルロン舵角は右12ミリ、左13ミリ。エクスポーネンシャルは30パーセントで、え~と、ラダーエレベーターミキシングは、5パーセントかけている。それからエンジンはとても快調だ…」
とにかくぼくは、「エンジンはとても快調だ」以外は全く訳の分からないし、まるで宇宙人と交信しているようなことを耳打ちされたので、ぼくは全く訳が分からないまま「了解!」と元気に答え、それから送信機のスイッチを入れ、スタッフに親指を立てて「準備OK」の合図をした。
それでスタッフたちが1号機のエンジンをスタート。
すると「ブイーンポンポロン…」と、エンジンがうなり始めた。
それからスタッフの人も親指を立て、それは「準備OK!」のサインだと思ったので、ぼくは茶トラ先生の教えに従い、送信機の右側のレバーを少しだけ前に動かした。
エンジンが「ブルルルン」とうなり、プロペラが勢いよく回り、飛行機の後ろの方へ風が吹くのがわかり、そして飛行機はゆっくりと動き始めた。
ちなみにぼくはラジコンカーなら多少の経験はあった。
だからぼくにとって、ラジコン飛行機を駐機場から滑走路まで、それこそ自動車のように進めることは、それほど難しいことではなかった。
とにかく、地上を走るラジコン飛行機は、ラジコンカーと同じ要領で動かせたんだ。
だからとりあえず滑走路の端までゆっくりと飛行機を進め、くるりとUターンするところまでは完璧に出来た。
(当機は間もなく離陸いたします…)
だけど、 ぼくはラジコン飛行機を「飛ばした」ことがない!
だからどうなるかなんて、やってみないと分からない!
ところで、飛行機というのは離陸するときは、キ~~~ンと豪快にエンジンを全開にする。
いつだったか、家族で旅行したときに乗った飛行機はそうしていた。(ような気がする)
だからそのときぼくはそれを思い出し、右側のレバーをするするといっぱいまで奥の方へと動かした。
するとエンジンが豪快にうなり始め、飛行機は、それはもう、イノシシのようにものすごい勢いで進み始めた。
だけど、これは後から茶トラ先生に教えてもらったことだけど、ラジコン飛行機は旅客機とは違い、重さの割にはとても強力なエンジンが付いているから、うかつにエンジン全開にすると、結構すごいことになるらしかった。
確かに結構すごいことになった!
ともかく飛行機はものすごい勢いで速度を上げ、あれよあれよという間にとんでもない速度が付き、それで恐くなったぼくはとっさに、左側のレバーを思い切り手前に引いた。
これはぼくのアドリブだったのだけど、ともかく飛行機は機首を上げ、「離陸」した。
だけどそのまま宙返りを始めてしまったんだ。
確かにものすごいパワーだった。
それとぼくが左のレバーを引いたまま固まっていたから、とにかく飛行機はそのままぐるんぐるんと、観覧車のように何回も何回も宙返りを続けた。
だからといって、ぼくはそれから何をどうすればいいのか、見当もつかなかったし…
いずれにしてもこれは、お父さんがやる予定だった「デモフライト」ではなく、スリリングな「曲技飛行」だ。
だけどそのときぼくは、このデモフライトが失敗しないといけないということを、だんだんと理解し始めていた。
それは確か、こういうシナリオがあった。
デモフライト成功→商談成功→パーティー→二次会→横断歩道で〈やったぞ~〉→トラックにひかれる!→お通夜!!
とにかくぼくは、このデモフライトが失敗しなければならない!
だからそのためにぼくは、最大限の努力をはらわなければいけない!
そしてそのことに気付いたぼくは、あることに注意した。
それは、決して送信機を自動操縦に切り替えるスイッチに触れてはいけないということだ!
多分、自動操縦になったが最後、飛行機は安定して飛び続け、最後は見事に着陸してしまうはずだ。
だからぼくは、お父さんが触っていた、左前方のスイッチには決して触れないよう、細心の注意を払った。
ちなみに、そのときラジコン飛行機は、それからも観覧車のようにぐるりんぐるりんと、時計回転に宙返りを続けていた。
それで、そのときぼくは、どうすればこのデモフライトが失敗するのかなぁ…などと真剣に考えていたのだけど、ためしに引き続けていた左のレバーを、ポンと離してみた。
これは本当に、ぼくがアドリブで思い付いたことだった。
ところでその瞬間、飛行機は時計回転の宙返りで、しかも偶然、「三時」あたりを通過中だった。
これは思い切り偶然だったのだけど、とにかくぼくがレバーを離すと、飛行機はそのまま真っ直ぐに地球に帰還することになった。
ぐしゃん!!!
飛行機は見事に地球に激突し、木端微塵に。
滑走路には立派な衝突クレーターが出来た。
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