青虫バケツリレー作戦

山田みぃ太郎

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認定は取ったけれど…

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 そういう訳で、プレアデスでは栄誉ある「野低人」の称号を得た選手が7人となった。
 即ち、みぃ太郎、不手際、怒山、くしゃみ、ボタ、ポジ介、ネガ介の7人である。
 その夜、この7人は青木の喫茶店に集い、祝杯し、怪気炎を上げていた、

「やったやった!これで俺達も晴れて公式戦に出られるぞ!」
 ポジ介がポジっていた。
「もし俺達7人が全員出場すれば、試合は、ええと、例のハンディキャップで、7対0で始まるようなもんだかんな。これ楽勝じゃん」
 このようなポジ介のポジティブな意見に対し、自分たちと主力選手たちとの恐るべき実力差に鑑み、一部の者の間で、
「でもさぁ、へーくしょん、主力選手が足らなくて俺がサードをやった試合があったじゃん」
「ああ、この前な。くしゃみがサードな」
「そうそう。それでそのとき俺がサードやったけど、へーくしょん、そのとき相手チームは俺ばかり狙ってさぁ、へーくしょん、それでどの打者も強引に引っ張って俺のところに打ってさぁ」
「そうそう。そがんか事あったさい」
「それでそのとき、へーくしょん、いきなり5点を取られたよね。まぁそのあと主力選手が来たからへーくしょん、二回から代わったけど、へーくしょん」
 それにはネガ介がこう付け加えた。
「花粉も舞うとったしな。せやけど1イニングで5点かいな。ほたら7イニングで35点やんけ」
 その話を聞きながら、不手際が謎の計算を始めた。
「ええと、それだったら7人出場したら35+35+35+…」
 その様子を見ていた青木はカウンター越しに吠えた。
「バカヤロウ!足し算やってどうすんだい?手際の悪い奴だぜ!いいか、こいつは掛け算だぜ! 35点が7つ!」
 そう言うと青木は、カウンターにあった電卓を手裏剣のように投げた。その電卓は不手際の座るテーブルでショートバウンドし、不手際はこれを後逸。それでみぃ太郎は床に落ちた電卓を拾い、早速その掛け算を実行した。
「ええとええと、35×7=245!!」
 たまたまミルミルを飲んでいたみぃ太郎の顔からミルミル血の気が引いた。
「こらぁがばい大変ばい!245点たい!話にならんばい!!」
 予想外のとんでもない大量失点に一同唖然。
「..............................................」
 ややあって起こり山が怒って口火を切った。
「やいやいやい!やっぱり一人1点のハンディキャップじゃ、まっっっったく割に合わねぇんだよ。245点だとぉ?べらぼうめ!これじゃ7点もらっても屁の突っ張りにもなんねぇだろがこのバカヤロウ!」
「へへへへへへ…へーくしょん!」
「せやせやせや。せやさかい、わてらの出番はでんな、はっきり言って、まぁ~~~~~ったくないんじゃおまへんか? 7人で245点も取られんのでっせぇ!」
 例によってネガ介がいつもの如くあっさりとネガり始め、辺りには重ぉ~~~い、どんよりとした雰囲気が漂い始めた。
 かくして、野低人の称号獲得(^^♪というお祝いムードは、坂を転がり落ちるように、奈落の底のお通夜ムードへと変わっていったのだ。
 で、厳しい現実を突き付けられたみぃ太郎はつぶやいた。
「やっぱりおいどんは、何処へ行っても使いもんにならんとやろか…」
「せやせや。お前のような芸術的ノーコンは何処へ行ったかて使いもんにならへんのや」
「なんばいいよるとか! そいぎんたまお前さんはわしのごたるシンカーば投げきるとかぁ?」
「なんぼシンカー放ったかて、ノーコンやったら意味あらへんわい!重力に従って落ちとるだけやし」
「重力…」
「それとお前、この前試合前、だぁれも見とらんおもて、こっそりマウンドから投げとったやろ。ほたらボールが抜けて、三塁ベンチに入ったん見とったでぇ」
「よくも貴様、スパイのごたる汚かことば!」
「何言うてまんねん。ほんまやろが!」
「え~~~~~い!やかましかやかましかやかましかぁぁぁぁぁ!」
 とうとう喧嘩が始まった。
(やっぱりこの七人の使い道はねえのかなぁ…)
 青木は又しても頭を抱えた。もっとも青木がこの七人について頭を抱えるのはこの日に始まったことではなかったが…
 それから青木は前々から考えていたことだが、やはりこの七人を試合に出すにはこれ以外に方法はないと考え、それで青木は、
「やいやいやいやいてめぇらいいかげんに静かにしやがれぇぇぇぇ!」と吠えた。その迫力に、件の喧嘩は一時停止。
 そして青木は静かに語り始める。
「で…、考えたんだけどなどな」
「何ですか?わてらを街の市場へドナドナしぃはんの?」
「そいぎんた、豆と交換ばい」
「いやぁ親父ギャグすまねぇすまねぇ。わっはっは。それでよ。あ~、やっぱりおめーらを主力選手に混ぜて使うにゃ~…」
「ありゃりゃ、青木さん、いつからわしんごと猫になりんしゃったと?」
「猫語じゃねぇ! で、あ~、やっぱりおめーらを主力選手に混ぜて使うにゃ~、一点じゃハンディキャップが全然足らねぇんだよ。だから試合に出たかったら、おめぇらだけでチームを作るしかねぇだろう。で、チーム名は『プレアデスB』!」
「プレアデスB?」
「いやいや、こんな名前も脳がねぇなぁ」
「ええと、へーくしょん。プレアデスって天文学上の『プレアデス星団』だよね。おうし座の散開星団で、M45って言うんだ。へーくしょん。で、日本語では『すばる』って言うよね。へーくしょん」
「凄げぇ!くしゃみ、意外にめちゃくちゃ学あるじゃん!」
「えへへへ…へーくしょん!」
「そうだ! じゃぁチーム名はすばる…」
「むかぁ~しむかし、わしの爺っちゃんがスバル360に乗っとりんしゃったたい。小さか車やった…」
「ほたらチーム名はすばる360にしまひょ。決まり!」
「へん! 名前はさておいて、そんなんだったら245対7、いやいや、360対7で負けるっじゃねえのか?ばかやろう!」
「いやいや、いくらなんでもそんなに点取られる訳ないよぉ」
「いやいやそんぐらい取られるかんしれんとばい」
「う~~ん。そうかも知れないなぁ…」
「そんなにネガるんじゃねやな。よし!だったら俺がキャッチャーやってやらぁ。それでちゃんとしたピッチャー探して来たら、まぁまぁ何とかなるんじゃねえのか。まあ何でも参加することに意義あるんだし」
「なんとかなると言うたかて、いったいどうするんでっか?」
「へへへへへへへ…、へぇ~~~~~っくしょぉ~~~ん!!」
「あああああ~~~もぉおおおおお~~~~うるさかねぇ! くしゃみばっかりしんしゃんな! ミルミルがこぼれたばい!」
「おーい、だれかティッシュもって来い!」
「まぁともあれ、ピッチャーだな」
「そうでんがな。ミルミルはどうでもよろしおま。ともあれ、ピッチャーですがな」
「そうたい。ピッチャーたい。ミルミルはどがんでんよか!」
「野球は70%ミルミル…、じゃないピッチャーって言うしね」
「そうだよ!ピッチャーだよ」
「そうばいピッチャーばい」
「やっぱピッチャーでんがな」
「そうだそうだピッチャーピッチャーピッチャー…」
 そうやって一同がピッチャーピッチャーとつぶやいていた、そのとき…

「あの…、もしよろしければ…」
 奥の方のテーブルにいた、とある若い女性だった。スポーティーでチャーミングでセミロングヘアーで…
「…もしよろしければ、私…、投げてもいいですよ♡」
 で、青木とおとぼけの面々はぽかん! 仲良く8つの口がぽかん。
 彼女は続けた。
「私、高校時代は野球でピッチャーやってました。お力になれるか分かりませんが、一応、女子野球で全国大会まで行けましたし…」
「え?そうなんですか?」
「すげぇぇぇぇ!」
「だから5月の終わりまでなら、投げてもいいですよ。でも、6月にはアメリカへ行くんです…」

     「恵ちゃん♡」へ続く
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