オカルト・アポカリプス~人類なき後の地球における心霊現象の発生について~

紫 和春

文字の大きさ
13 / 54

第13話 アイテムをゲットしました

しおりを挟む
 九王たちは常磐道の途中にある柏インターチェンジで高速を下りていた。ここは埼玉県と茨城県に挟まれるように位置している、千葉県の柏市である。某ゆるキャラで言う鼻の根元に位置する。

「夕方が近づいてきています。当然ですが、今夜も心霊現象の観測を行います」
「俺はパスだからな」

 そういってトラックを、とある建物の前に停める小堀。

「それで……? ここが目的地なのか?」
「いえ、ここはあるアイテムを確保するために寄っただけです」
「アイテム? なんじゃそりゃ?」

 その巨大な建物は、午後の傾き始めた太陽の光に照らされていた。香川急便の柏事業所である。

「ここに何があるんだ?」
「様々な物があります」
「それはそうだが……。目的のアイテムがなんだって話だよ」
「それはズバリ、カメラです」
「カメラ……?」

 小堀は首をかしげる。

「なんでカメラが必要なんだ? 自分たちの目でも替えるのか?」
「以前心霊観測を行った際に、見えない場所から足音が聞こえることがありました。もし視界の制限がなかったら、もしかしたら本当に心霊現象を観測できたかもしれなかったのです。その時の反省を踏まえ、今回はカメラを調達することにしました」
「あぁそう。思ってたのと少し違っててよかった」
「ですが、柏には事故物件があると聞いています。カメラを回収次第、すぐにでも事故物件に向かいましょう」
「俺はパスだって言ったよな?」

 そんな小堀の言葉を無視して、九王は営業所の中に入っていく。
 営業所と言っても、そこは巨大な倉庫であり、単純に言ってしまえば荷物の集積所である。つまり、延べ床面積の分だけ荷物が存在することになる。
 「100秒の沈黙」戦争中は、当然の言ながら物流も大混乱に陥っており、荷物が別の場所に届いたり、あるいはそもそも届かないか届けられない状態になっていた。そんな届けられなかった荷物が、カラスに荒らされた生ゴミのように散乱しているのが、今の営業所の姿だ。
 九王はそんなゴミの中に、カメラが存在すると踏んでいたのだ。とにかく、その辺に転がっていた適当な荷物を拾ってみる。そして外包の伝票に書かれているバーコードや二次元コードを読み込む。当然のことながら、香川急便が使用していたシステム専用のコードである。普通に読み込めば、意味のない文字列が出力されるだろう。
 九王は辺りを見渡して、配達員が使用していたであろう携帯端末を探す。ちょうど荷物の中に埋もれていたのを発見する。

「久々にやってみますか……」

 九王は口を開けて、その中に指を突っ込む。舌に当たる部位が引き出されるが、九王のそれは、あらゆる端末の端子に繋げられるユニバーサル端子である。端子の中のピン単位まで、細かに変更することが可能になっているのだ。

「うーん……。これとこれと……、あとこれですかね」

 舌を出した状態でも問題なく発言できる。小堀から見れば、少し気色悪い光景だろう。

「なんか……、アホ面見てるようで嫌だな……」
「アホ面ってなんですか。失敬な」
「でも、みこねのその顔は本当にマヌケだよ」

 小堀とウッマが協力しているほど、九王の顔はみっともない状態になっていた。
 しかし九王はそんなことはどうでもいいようで、的確にピン配列を把握する。

「よし、これで正常に繋がったはずです」

 九王からの電力供給もあり、携帯端末は再起動した。そしてそのまま、九王は携帯端末を通して香川急便のシステムへと侵入する。

「メインサーバーもイカれていますね……。戦争末期の混乱で情報が錯綜しているのも原因でしょう。ですが……」

 九王に搭載されているCPUは、半世紀ほど前のスパコンに匹敵する程の計算量を誇る。それによって、あっという間に営業所内の全ての荷物を把握してしまった。

「カメラはこちらにありますね。結構大量ですよ」

 九王は携帯端末から舌を抜き、そのまま端末を投げ捨てる。

「こちらです」

 九王の案内により、カメラの在庫を発見した。スマホに搭載される超小型で薄型のカメラから無線通信ができるアクションカメラ、防犯用や一眼レフまで幅広く取り揃えられている。

「それじゃあこのアクションカメラを頂戴していきますか」

 九王は、そこにあるだけのアクションカメラをウッマに乗せていく。

「みこね、30個はさすがにやりすぎじゃないかい?」
「いいえ。死角を減らすには数で補うしかないのです。物量は全てに勝ります」
「そのための整備の問題があるでしょ?」
「ルーチンワーク化すれば大丈夫です」
「本当かなぁ……?」
「九王君、間違っても俺に仕事振るなよ」

 ウッマは呆れ、小堀は予防線を張る。

「大丈夫ですよ。私、計測機器のメンテナンスとかできますから」

 そういって九王は胸を張る。

「まぁ、みこねがそこまで言うならいいよ」

 最終的にウッマは認めることにした。

「では、事故物件に向かいましょう。心霊観測ですよ」

 九王はウキウキしながら言う。

「一応もう一回言うけど、俺はパスだからな?」
「せっかくの心霊調査なんですから、一緒に行きましょう?」

 九王は小堀にズイッと迫る。

「嫌だ、絶対に行かないからな」
「遠慮しなくてもいいんですよ?」
「遠慮してない! 拒否してるんだ! クソッ、やっぱり一緒に行動するんじゃなかった……!」

 小堀は後悔するも、時すでに遅し。九王は今度こそ心霊現象を突き止めるために、事故物件へと向かうのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

名もなき民の戦国時代

のらしろ
ファンタジー
 徹夜で作った卒論を持って大学に向かう途中で、定番の異世界転生。  異世界特急便のトラックにはねられて戦国時代に飛ばされた。  しかも、よくある有名人の代わりや、戦国武将とは全く縁もゆかりもない庶民、しかも子供の姿で桑名傍の浜に打ち上げられる。  幸いなことに通りかかった修行僧の玄奘様に助けられて異世界生活が始まる。  でも、庶民、それも孤児の身分からの出発で、大学生までの生活で培った現代知識だけを持ってどこまで戦国の世でやっていけるか。  とにかく、主人公の孫空は生き残ることだけ考えて、周りを巻き込み無双していくお話です。

処理中です...