オカルト・アポカリプス~人類なき後の地球における心霊現象の発生について~

紫 和春

文字の大きさ
28 / 54

第28話 未知と遭遇しようとしました

しおりを挟む
 朝になり、九王たちはトラックに乗り込んで、目的地である浜松へと向かう。
 富士宮市に突入すると、新東名高速道路に乗って西へと進む。
 その道中のことであった。

「この辺りから静岡市ですね。ここまで来れば、浜松市までもう一息ですね」
「どのくらいで着くんだ?」
「今までのペースで、おおよそ4日くらいですかねぇ」
「……それのどこがもう一息なんだ?」
「今回の調査は、割と大回りな道を通ってきているので、余計に時間がかかっていることが原因ですね。このまま何も無ければ、最速で4日で到着する計算です」
「大体お前が原因じゃねぇか。なんでそんな遠くまで行こうと思ったんだよ」
「呪物が安置されている寺院があるからですよ」
「はぁ……。そういや行動原理がそういう風に設定されているんだったな……」

 小堀は頭を抱えるが、そういうものだと考える。
 すると九王が小堀にナビゲーションする。

「あ、小堀さん。そこのインターチェンジを下りてください」
「あ? ここに何かあるのか?」
「もちろんです」

 小堀は九王の言葉を無視しようとも考えたが、無視した時の損害を思うと無下に断ることはできなかった。
 小堀は言われた通りにインターチェンジを下りる。

「んで、どうするんだ?」
「今、横に広場が見えてますよね? そこにトラックを停めてください」

 小堀は言われるがまま、広場にトラックを停める。

「ここは……どこだ?」
「静岡市の清水区ですね」
「みこね、ここには何があるの?」
「よくぞ聞いてくれました! ここにはなんと、オオツチザルがいるんです!」
「……はい?」

 九王の自信満々な発言を聞いたが、小堀はいまいちピンと来ていないようだ。

「その……、オオツチザルってのはなんだ?」
「知らないんですか!? オオツチザルってのは、とある界隈で有名な未確認動物UMAですよ?」
「俺は知らないな……」
「僕も知らない。みこねの言うその界隈って狭くない?」
「そんな訳ないじゃないですかぁ!」
「あー……。とにかく、そのオオツチザルってのはどういうUMAなんだ?」

 小堀は頭を抱えながら九王に聞く。

「オオツチザル……別名静岡のビックフットはですね━━」
「それもうビックフットでいいじゃねぇか」
「━━土の中に巣を作ると言われているヒト型のUMAなんです。目撃された場所では40cmもの大きな足跡が残されていたことから、富士山の守護者とも言われています。その生態は、山の急斜面に穴を掘り、そこで暮らしているとされています。実際に巣と思われる横穴も発見されており、その周辺では猪や熊などの大型哺乳類の骨があちこちに散らばっていたとも報告されているんです。ですが、遭遇例は非常に少なく、その歴史も他のUMAから比べれば短いため、激レア中の激レアとも言われているんです」

 九王はかなり興奮した様子で言う。

「それ、ソースというか出所はどこだ?」
「分散型ソーシャル・ネットワークのオカルト板に張られていたネット記事ですが?」
「じゃあまず信憑性は皆無だろうがよ」

 小堀はキレそうになりながら突っ込む。

「でもオカルトってそういうものじゃないですか?」
「うーーーん……」
「小堀、ここはみこねの自由にさせておいたほうがいいよ。こうなったみこねは、もう誰にも止められないんだ」

 九王に対して降伏するように諭すウッマ。小堀も、九王の奇行の理由をこれ以上考えたくなくなってきた。

「あー、分かった。とりあえず霊長類っぽい動物を探せばいいんだな?」
「話が早くて助かります。それと、用意するものがあります」

 そういって九王は、どこからともなく雑巾のような布を取り出す。その布からは、熟しすぎたフルーティーな香りがするだろう。

「ネット記事によれば、オオツチザルの好物はバナナを中心としたフルーツとのことです。そこで、様々なフルーツの香りを再現した布を用意しました」
「さっき自分で猪や熊の肉食ってるような発言していたよな? まるっきり発言が矛盾しているじゃねぇか」
「いいんですよ、そんな細かい話は」
「どこも細かくねぇだろ」
「とにかく、この布を5枚用意したので、餌として仕掛けましょう。捕縛のために、簡単な罠も設置します」
「はいはい……」

 小堀は手伝わされることを覚悟して、トラックを下りた。
 トラックの停まっている広場を中心に罠を仕掛ける。お互いの距離は100m程度。九王曰く、このくらいがちょうどいいとのことだ。

「このまま一晩待ちます」
「えらく気の長い待ち時間だなぁ……」

 しかし睡眠が取れるメリットもある。このチャンスを利用して、小堀は睡眠を取った。
 そして夜が明け。昨日仕掛けた罠を一つ一つ見ていく。しかし、その罠にも動物が触れたような形跡はなく、小さな蛾や昆虫が数匹とまっているだけだった。

「そもそもだな、核の冬で絶滅したって可能性は考えなかったのか?」
「それは……、忘れてました」
「じゃあ調査はここまでじゃないか?」
「……いえ」

 九王は声を張り上げる。

「絶対にいます! オオツチザルは絶対に生き残っています!」
「うぉ、急に声量変わるじゃん」

 その熱量に負けたのか、小堀は一つ溜息を吐く。

「分かったよ……。明日だ。明日までに何の成果も得られなかったら、すぐにここを出発する。いいな?」
「もちろんです!」

 九王はやる気に満ちていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

妹の仇 兄の復讐

MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。 僕、寺内勇人は高校三年生。妹の茜は高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。 その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

処理中です...