オカルト・アポカリプス~人類なき後の地球における心霊現象の発生について~

紫 和春

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第44話 交渉をしました

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 小堀はパソコンを操作して、ジェンジュンに対して通信を行う。
 ジェンジュン側のシステムコンピュータが小堀の個人IDを参照し、本人であることを確認する。
 そして通信が確立した。

『こちらジェンジュン通信管理部艦外通信課。小堀宝治だな?』
「そうだ」
『ID番号の確認……、脳波による個人認証を開始する。質問、艦隊歴152年の出来事は?』
「……」

 小堀は目を瞑って、何かを思い出しているようだ。

『……特定の脳波検出。個人IDと一致した。通信を許可する』
「どうも」
『長らく連絡がなかったが、一体どうした? ソルレイバーストの影響で帰還か? それなら事前の帰還要請を出す必要があるが……』
「実は、第185突撃調査隊の司令部と話がしたくてな。そして結論を言えば、標準戦艦を2,3隻ほど借りたい」
『……どういうことだ?』

 通信課のオペレーターが怪しんでいる。当然のことだろう。いきなり一介の調査員が戦艦を数隻貸してほしいなんて言い出したら、普通は頭の心配をするはずだ。

『お前、ソルレイバーストの影響を強く受けて、幻覚でも見え始めたのか?』
「いや、正気だ。司令部と話をして、標準戦艦を借りたいって言ったんだ」

 その反応に、オペレーターは思わずヘッドホンを外したのだろう。ガサガサという音と共に、上官を呼ぶ声が小さく聞こえてくる。

『あー、小堀。これは一個人としての意見だが、それは不可能だと思うぞ』
「不可能でもいい。とにかく司令部に繋げてくれ」
『お前マジか。一回頭の検査受けたほうがいいぞ。いや、皮肉でもなんでもなくて』
「悪いが、こちらには俺の正気を担保してくれるヤツが数人いる。その上で司令部に繋げてほしい」
『コイツマジかよ……』

 すると、オペレーターのマイクがミュートになる。おそらく、本格的に上官の指示を仰いでいるのだろう。

「これ、大丈夫なんですか?」
「まぁ99%大丈夫ではないな」

 九王の質問に、小堀は自信満々に答える。

『そんなことだろうと思ったよ』
『こっちは九王さんの話を軸に、半分でっちあげの意見書兼報告書を書いてるよ』

 通信でシュートリヒとシンが反応する。

「それはありがたい。こっちは交渉に集中する」

 そんなことを言っていると、艦外通信課から再び連絡が入る。

『お前、本当に戦艦を借りるのが目的なのか?』
「そうだ。これはソルレイバーストに関係している話でな。今は詳しく言えないが、ソルレイバーストは俺たちスペーサーの安全保障にも関係している」
『本気なのか……?』
「あぁ、本気だ」

 小堀の返答ののち、オペレーターは決断した。

『小堀宝治。貴様をスパイ摘発法及び外患誘致予備罪で指名手配する。現宙域から動くな』
「なっ……!?」

 小堀は思わず絶句する。予想外の方向から犯罪者に仕立て上げられたからだ。

「小堀さん、どういうことですか?」
「これは……多分アレの影響だろうな……」
「アレ?」
『俺たち調査員にメールで入っていたのだが、第4銀河艦隊にスパイが紛れ込んでいるって話、だろ?』

 シンが指摘する。

「あぁ、それだ。おそらく、俺たちがそのスパイであると認定したのだろう」
「それじゃあ、ここまで来た意味がないじゃないですか!」
「クソ、うまくハメられたようだ……」

 小堀は強く歯ぎしりする。相当悔しがっているようだ。
 その様子を見た九王は、すぐに決断する。

「小堀さん、私にもマイクが使えるように権限をください」
「何をする気だ?」
「私も、覚悟を決める必要があるってことですよ」

 そういって口からユニバーサル端子を取り出すと、それを小堀のパソコンに繋ぐ。
 すぐにパソコンのシステムと九王のシステム内部でエラーが発生するが、九王はそれを無理やり断ち切り、マイクの権限を取得する。

「聞こえますか? 私は九王みこねです」
『なんだ? 小堀宝治のIDから別の人間の声が……』
「小堀さんに戦艦を貸すように唆したのは私です。指名手配するなら私にしてください」
『あー……、一応聞こう。九王みこね、貴様は何者だ?』
「あなた方の言う、地球の残存人類遺産というものです」

 それを聞いたオペレーターは、再びヘッドホンを勢いよく外す。

『大尉! ……人類遺産とか言ってる……るんですけど!?』

 マイクから離れたところで叫んでいるようで、途切れながらも話している内容が聞こえてくる。
 数十秒ほどして、オペレーターが変わった。

『私が艦外通信課の課長だ。君は自分のことを地球の残存人類遺産であると言ったが、間違いないかね?』
「えぇ、間違いありません」
『君が何者であっても、小堀宝治はその場で殺害され、そして同時に君も破壊される。その危険を冒してでも、なぜ君は彼をかばうのだね?』
「それは、地球とスペーサーの皆さんが生き残るために必要だからです。私を消せば、あなた方も消えることでしょう」
『どうしてそう言い切れる? 何か証拠は?』

 課長がそのように言った瞬間、シュートリヒが叫ぶ。

『報告書が出来た! 小堀の端末に送信する!』

 ほんの1秒にも満たない時間で、報告書は小堀のパソコン、そしてジェンジュンの艦内ネットワークに放出される。
 小堀はその報告書を見る。どうやら、ソルレイバーストが同時多発的に発生した場合に起きるであろう宇宙消滅シミュレーションの概要が書かれているようだ。
 ジェンジュン側でもそれを確認したようで、課長のマイクからざわめき声が聞こえてくる。

『なんだ、これは……』
「そこに記されている通りです。ソルレイバーストは宇宙の崩壊を引き起こす可能性があります」

 九王の声に、課長は少し狼狽えたようだ。

『そ、そんなことがあり得るのか……?』

 その時、通話に誰かが割り込んできた。

『失礼する。私はジェンジュンの艦長、ローレンだ。君たちの報告書を見た。その上で、少し話がしたい』
「そうして頂けるのは幸いです」
『では、君たちをジェンジュンに受け入れる。ただし、あくまで君たちはスパイの容疑者として扱う。少々手荒い歓迎になるかもしれないが、容赦してくれ』

 すると、シャトルのシステムコンピュータにジェンジュンまでの飛行ルートが表示される。おそらく、これの通りにジェンジュンへ来い、ということだろう。

「もう後には引けないな」

 小堀は覚悟したように言う。

「えぇ。そして、ここからが本番とも言えます」

 二つのシャトルは、ジェンジュンに向かって動き出す。
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