オカルト・アポカリプス~人類なき後の地球における心霊現象の発生について~

紫 和春

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第50話 現地入りしました

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 わずか数十分で、岩手県にあるILPAへと到着する。すでにジェンジュンの技術員が地上に降りており、作業を開始していた。技術員以外にも、技術的な補佐をする汎用人型工作機械が地下に潜り、ILPAの修理を始めている。
 地上から1000mほど上空にいる標準戦艦2隻から、機関に直結している大電流送電線が何百本も地上に向かって垂らされている。それらが地上の技術員らによって、加速器へ接続されている。
 九王たちを乗せた輸送船は、ILPAの近くにあったかつての職員用駐車場に着陸する。九王たちはすぐさま輸送船から降り、加速器の中央制御室へと向かう。

「加速器を使うのはいいが、具体的な話はしていなかったな。どうやって余剰次元に介入……、というか干渉するつもりなんだ?」
「それについては、中央制御室に到着してから話します」

 山の中腹に開けられた入口から細い通用路を通り、10分ほどで中央制御室に到着する。
 そこには、技術員の格好をしながらも仰々しい書類を抱えた男性が数名いた。

「お疲れ様です、技術長」
「本当ですよ。どれだけリソースを割いたと思ってるんですか?」
「それに関しては申し訳ないと思ってますよ」
「まぁ、いいでしょう。それでは、最終的な加速器の使用について説明します」

 そういって分厚い紙の資料を広げる。

「まず、エモータル級標準戦艦2隻の機関から電源系統を直結させて、加速器を限界まで稼働させることが大前提です」
「限界まで稼働させるって、それは大丈夫なのか?」

 技術長の説明に、小堀が少々案じる。

「そこは大丈夫です。もともと安全率が10くらいに設定されているはずですから、そのリミッターを解放するだけです。それに今回の一回限りなので、多少壊れようと問題はありません」
「んな適当な……」

 小堀は頭を抱える。

「えー、続けますが、限界まで稼働させたILPAにウラン238を投入して、これを限りなく光速に近づけて衝突させます」
「そういうのは普通水素とか、そもそも中性子ではないのか?」
「それはそうなんですが、今回は衝突した際のエネルギー量が大きいほどいいので、ウランを使います」
「何故そこまでエネルギーを必要とするんだ?」
「最終的にマイクロブラックホールを生成させるからです」
「ブラックホールだと……?」

 シュートリヒの眉毛がつり上がる。

「はい。この加速器の性能を限界まで引き出せることができるなら、マイクロブラックホールを生成することができるはずです」
「……それを生成してどうするんだ?」
「マイクロブラックホールは、おそらくカー・ブラックホールという円環で回転している特異点を持ったブラックホールになると予想されます。いや、これは願望ですね。そうならないと目的を達成できません」
「まさに運ゲーだね」

 九王の解説にシンがノリノリで答える。

「はい。そして生成されたマイクロブラックホールに対して、さらにウランを衝突させつつ、バーストと同じ波長である2.554pmを最大出力で照射します。これでおそらく余剰次元の出入口が完成し、介入できるはずです」
「……本当か?」

 技術長の説明に、小堀が訝しむ。

「それを我々に問いかけないでください。ここまでの理論はほとんど九王さんが立てたのですから」
「ですが、ジェンジュンにいる汎用物理学者の力も借りることでここまで出来ました」
「それにしては、だいぶ運要素が強いごり押しの作戦だね」

 シンがそのように指摘する。

「えぇ、これは勝率の悪い賭けです」

 九王がそのように答える。

「しかし改めて聞くと、我々はとんでもないことをしようとしているのだな」
「実際その通りです。しかし、我々が普段利用しているワープと比べれば、古典的で分かりやすい方ではありますね」

 技術長がそのように説明する。

「まぁ、とにかく理論的な説明やらなんやら聞いて、ウダウダ言っててもしょうがないな。今は目の前のことに集中しよう」

 小堀がそのように言う。

「それもそうだな」
「俺たちのできることをやるしかないね」

 シュートリヒも、シンも九王の方を見る。

「では最後の準備をしましょう。私たちが、地球人類を救うのです」

 九王は改めて決意を述べた。
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