転生一九三六〜戦いたくない八人の若者たち〜

紫 和春

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第4話 対策

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 戦いたくないがために戦うことを決意した宍戸。
 ここで一つの問題が浮上する。
「どうやって軍政に入り込むんだ……?」
 現代日本ならまだしも、ここはインターネットすら存在しない世界。政治や軍事に介入しようとすれば、憲兵に捕まることは目に見えている。
「ん? でも俺の身柄を確保したのは軍部だよな……? 陛下とも謁見したし……。となれば話は別だ」
 今の軍事に首を突っ込む余地はある。
 そう踏んだ宍戸は、すぐに行動に移す。
「まずは、歴史の振り返りからしていくか」
 そういってフリー百科事典の一九三六年の項目を開く。
「えーと、今月は何があるかなっと……」
 色々と書いてあるが、ある出来事が目につく。
『日本がロンドン海軍軍縮会議から脱退』
「あやっべ!」
 ロンドン海軍軍縮条約。補助艦艇を含めた艦艇の保有数や保有率を定めた条約。ほとんど効果はなかったとされている。
「この条約から日本が脱退することによって、名実共に艦艇保有数を大きく増やす……。これで国際的な緊張度が一気に高まる……。しかも、統帥権の問題まで噴出して面倒なことになる……」
 宍戸は頭を抱えた。
「今からでもどうにかなるか? いや、軍令部はかなり理論武装して問題を提唱してるだろうから、この牙城を崩すのは無理だ……」
 しばらく唸った宍戸は、一つの結論を導き出す。
「うん、無視しよう」
 すっぱり諦めた。
「んで、この後は何かあったかな?」
『二・二六事件勃発』
「うぉあああ……!」
 宍戸はベッドの上で暴れる。
「嘘だろ、来月かよ! これもうどうにもできねぇだろ!」
 そこでピタッと動きが止まる。
「いや、陸軍省や参謀本部に連絡すれば、ワンチャン止められる可能性あるのでは?」
 一秒ほど考えて、またジタバタする。
「その陸軍省と参謀本部に繋がる人脈がねぇんだよ!」
 その時、壁を強く叩く音がする。
「うっせーぞ! 黙らんか!」
 近所迷惑になっていたようだ。宍戸は大人しくする。
「とにかく、今年起きるであろう重要度の高いものをピックアップしなければ……!」

『三月七日 ドイツがラインラント進駐』
『七月十七日 スペイン内戦勃発』
『十一月三日 フランクリン・ルーズベルト大統領が就任』

「大雑把にまとめるとこんな感じか……」
 宍戸は、メモ帳と自分の記憶を頼りに、今後の世界情勢を思い描く。
「ラインラント進駐は有名な話だ。非武装地帯のラインラントに陸軍を置いた事件で、結局既成事実化みたいな形で進駐することに成功した……」
 これには宍戸も頭を悩ませる。
「これも第二次世界大戦勃発の原因の一つなんだよな……。逆にフランス軍が進駐してれば、もしかしたらなんとかなったかもしれない。でもこれ三月なんだよなぁ……」
 とりあえず「やることリスト」に、重要度中で入れる。
「次、スペイン内戦。これ良く分からんのよな……。フリー百科事典によると、共和国側陣営と、クーデターを起こしたファシスト陣営による抗争って所か……。これも国際的な問題に発展するんだよな。でも今更止められるとは思わないけど……。ウーン、仮に義勇兵を送るとなっても、どちら陣営につくかで緊張具合が変わるなぁ。でもファシスト陣営の後ろにはドイツ、イタリアがいるから、日本的にはファシスト陣営なんだろうなぁ」
 そういって、スペイン内戦は重要度低でリストに入れる。
「最後はルーズベルト大統領の就任か……。確かルーズベルト大統領って日本に対する感情が悪いって印象なんだよな……。このまま行けば就任確実だし、日本に対する経済制裁も辞さない構えだし……。でも対話でなんとかなるような人じゃないんだよなぁ……。今は制裁の方向性をズラすのが精一杯か」
 とりあえず宍戸は、「米国(ルーズベルト大統領)の対日制裁」を重要度中に設定してリストに入れた。
「さて、今年ありそうなことはこんな感じか。じゃあ次は……」
 そういってスマホを取り出す。メッセージアプリを開いて、ドイツのローザ・ケプファーに電話をかけた。
『はい……』
「もしもし。こちら日本の宍戸です」
『シシド? あなたが日本のシシドなのね?』
「えぇ、そうです」
『良かった……。独りぼっちだと感じてたから、こうやって話ができるだけありがたいわ』
「そういう感情を感じるのは大切でしょうけど、今は緊急の話がしたいんです」
『えぇ、用件をどうぞ』
「おそらく分かっていると思いますが、今年の三月にドイツがラインラントに進駐します」
『えぇ、分かってるわ。なんとかそれを阻止したいのね?』
「話が早くて助かります」
『私もなんとかしたいのだけど、今身動きが取れない状態なの。残念だけど、どうしようもできないわ』
「そうですか……。分かりました、ラインラント進駐は史実通りに進めることにします」
『ごめんなさい』
「謝る事じゃないですよ。ではまた」
 そういって電話を切る。電話を切った後、宍戸はあることに気が付く。
「……母国語が違うのに、会話が成立してたな……」
 これも女神の力だと無理やり納得した。
「さて、次はスペインの人……」
 そういってイザベル・ガルシアに電話をかける。しかし、いくらコールしても全く出ない。
「……忙しいのかな?」
 宍戸は電話を諦めて、次の人に電話をかける。
『もしもし?』
「もしもし、こちら日本の宍戸です」
『初めまして、アメリカのカーラ・パドックよ。どうかしたの?』
「単刀直入に言うんですが、アメリカの対日制裁をどうにかしてズラすか、阻止していただきたいんです」
『私もそれを思っていたわ。今ホワイトハウスにいて、大統領と話をしていた所よ』
「それはタイミングがいいのだか、悪いのだか……」
『とにかく、今は日本と仲良くしようって説得してるわ』
「それはありがたいです。こちらもなんとかして対米戦争を止めるために動きますので、よろしくお願いします」
『分かったわ。あ……、ごめんなさい、大統領が呼んでいるわ。じゃあね』
 そういってパドックから電話を切る。
「よし……。まずは小さな一手を指したところか……。次は、どうやって軍令部や国会に入るかだが……」
 しかし、そればっかりは宍戸にはなんともできない。
 とりあえず今日の所は寝ることにした。
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