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第16話 海軍省
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高橋が一枚の紙を渡してくる。
「細かい要望はそこに書いてある。細かいとは言っても、だいぶ簡略化された要望だがな」
宍戸は内容を黙読する。要点を摘出すれば以下の通りである。
一、南進すべき。
二、米英と対立すべき。
三、但し、武力衝突は避けるべき。
簡潔に述べれば、この通りだ。
「南進論を支持、米英とは対立するも戦争はしない、と言ったところですか?」
「そうだ。米英の影響力は絶大だ。このまま何もしなければ、帝国は次第に衰弱していくだろう。武力をもって敵対するのもいいが、それもいつまで持つか分からない」
「その通りだと思います」
「実際、君がいた世界ではどうだ? 少し教えてもらえないだろうか?」
「いいですよ」
宍戸は、前の世界での日本を簡単に伝えた。真珠湾攻撃、マレー沖海戦、ミッドウェー海戦、ソロモン海戦、レイテ沖海戦、そして坊ノ岬沖海戦。
本当に簡単な内容に噛み砕いて説明する。
それを聞いた高橋一同は、絶望の表情を見せる。
「まさか、いや、それでも……」
高橋は目を見開いて、だが納得した様子だった。参謀部の二人も、絶望に打ちひしがれている。
「……ありがとう。やはりそこに書かれている方針は間違っていなかったようだ」
そう高橋が言う。そこに宍戸が助言する。
「しかし、南に向かうということは現在の仮想敵国、アメリカやイギリス、その他連合国と対立することになりますが、本当に大丈夫なんですか?」
「おそらく大丈夫ではないだろうな。少なくとも局所的な武力衝突が起こる可能性がある。戦艦の一隻や二隻が沈む覚悟が必要だろう」
「そうですか……。連合艦隊司令長官のあなたが言うなら、その通りなのかもしれませんね」
宍戸は肩を落とす。日本の生きる道には、戦争という避けられない障害があることを理解したからだ。
「だが、宍戸君にしかできない仕事もあるだろう。宍戸君の役職は戦略政務官、とりわけ大本営幕僚長相当職とある。海軍大臣や陸軍大臣と同等の権力を持っていると言っても過言ではない。つまり、宍戸君が皇軍の方針を決定すればいいのだよ」
「……それって天皇陛下の御仕事では?」
「確かにそうかもしれないな。しかし、全てのことを陛下がお決めになるわけではない。普通の組織のように、下の人間が上司や社長に提案し、それを社長が承認する。宍戸君の仕事は企画を提案することにあるのではないか?」
「た、確かに……」
しかし、本当にそれでいいのだろうか。宍戸は一度納得するものの、疑問に思う。
そして思ったことを口にした。
「それは言葉の綾ってやつではないですか……?」
「そうかもしれない。だが、提案することは誰だってできる。上の人間がそれをどう受け止めるかの差でしかない」
高橋の言っていることは至極真っ当だ。それと同時に、権限と言葉の曖昧さのチキンレースをしている感じがある。
宍戸は後で、総理や内務省の関係者に確認を取ろうと強く決めた。
「では話を変えまして、陸軍との関係をどう思いますか?」
「私個人としては、陸軍とは協力体制でありたいと思っている。先の満州事変での参謀本部の動きは理想的だ。我が軍令部もこうでありたいものだ」
「とにかく、協力し合いたいと……」
「こちらはそう願ってはいるが、向こうがどう思っているのかは分からない。陸軍は海軍のやろうとしている事をとことん否定してくる節があるからな」
「なるほど……。個人的にも、陸海軍が協力関係にあるのは賛成です。これからの国際情勢などを考慮すれば、それが最善ですからね」
「そうだろう。陸軍にはぜひそのように伝えておいてくれ」
こうして宍戸は海軍省を後にし、陸軍省へと向かうのだった。
「細かい要望はそこに書いてある。細かいとは言っても、だいぶ簡略化された要望だがな」
宍戸は内容を黙読する。要点を摘出すれば以下の通りである。
一、南進すべき。
二、米英と対立すべき。
三、但し、武力衝突は避けるべき。
簡潔に述べれば、この通りだ。
「南進論を支持、米英とは対立するも戦争はしない、と言ったところですか?」
「そうだ。米英の影響力は絶大だ。このまま何もしなければ、帝国は次第に衰弱していくだろう。武力をもって敵対するのもいいが、それもいつまで持つか分からない」
「その通りだと思います」
「実際、君がいた世界ではどうだ? 少し教えてもらえないだろうか?」
「いいですよ」
宍戸は、前の世界での日本を簡単に伝えた。真珠湾攻撃、マレー沖海戦、ミッドウェー海戦、ソロモン海戦、レイテ沖海戦、そして坊ノ岬沖海戦。
本当に簡単な内容に噛み砕いて説明する。
それを聞いた高橋一同は、絶望の表情を見せる。
「まさか、いや、それでも……」
高橋は目を見開いて、だが納得した様子だった。参謀部の二人も、絶望に打ちひしがれている。
「……ありがとう。やはりそこに書かれている方針は間違っていなかったようだ」
そう高橋が言う。そこに宍戸が助言する。
「しかし、南に向かうということは現在の仮想敵国、アメリカやイギリス、その他連合国と対立することになりますが、本当に大丈夫なんですか?」
「おそらく大丈夫ではないだろうな。少なくとも局所的な武力衝突が起こる可能性がある。戦艦の一隻や二隻が沈む覚悟が必要だろう」
「そうですか……。連合艦隊司令長官のあなたが言うなら、その通りなのかもしれませんね」
宍戸は肩を落とす。日本の生きる道には、戦争という避けられない障害があることを理解したからだ。
「だが、宍戸君にしかできない仕事もあるだろう。宍戸君の役職は戦略政務官、とりわけ大本営幕僚長相当職とある。海軍大臣や陸軍大臣と同等の権力を持っていると言っても過言ではない。つまり、宍戸君が皇軍の方針を決定すればいいのだよ」
「……それって天皇陛下の御仕事では?」
「確かにそうかもしれないな。しかし、全てのことを陛下がお決めになるわけではない。普通の組織のように、下の人間が上司や社長に提案し、それを社長が承認する。宍戸君の仕事は企画を提案することにあるのではないか?」
「た、確かに……」
しかし、本当にそれでいいのだろうか。宍戸は一度納得するものの、疑問に思う。
そして思ったことを口にした。
「それは言葉の綾ってやつではないですか……?」
「そうかもしれない。だが、提案することは誰だってできる。上の人間がそれをどう受け止めるかの差でしかない」
高橋の言っていることは至極真っ当だ。それと同時に、権限と言葉の曖昧さのチキンレースをしている感じがある。
宍戸は後で、総理や内務省の関係者に確認を取ろうと強く決めた。
「では話を変えまして、陸軍との関係をどう思いますか?」
「私個人としては、陸軍とは協力体制でありたいと思っている。先の満州事変での参謀本部の動きは理想的だ。我が軍令部もこうでありたいものだ」
「とにかく、協力し合いたいと……」
「こちらはそう願ってはいるが、向こうがどう思っているのかは分からない。陸軍は海軍のやろうとしている事をとことん否定してくる節があるからな」
「なるほど……。個人的にも、陸海軍が協力関係にあるのは賛成です。これからの国際情勢などを考慮すれば、それが最善ですからね」
「そうだろう。陸軍にはぜひそのように伝えておいてくれ」
こうして宍戸は海軍省を後にし、陸軍省へと向かうのだった。
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