転生一九三六〜戦いたくない八人の若者たち〜

紫 和春

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第112話 超弩級

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 一九三九年二月十四日。横須賀鎮守府。
 ここにある埠頭にて、ある二隻の艦が竣工と同時に、新しい任務を受け取ろうとしていた。
 大和型戦艦。大和と武蔵である。
 史実と異なる点は、建造時期だけではない。
 全長二八八メートル。排水量八万九千トン。主砲五〇センチ連装砲四基八門。十五.五センチ対艦対空両用砲を三十門搭載している。
 これだけでも、とんでもない化け物であることがうかがえるだろう。もっと化け物なのは、大和型戦艦の大まかな諸元を秘匿せずに公開すると踏み切った宍戸の魂胆である。
 なにせ、仮想敵国であったアメリカは今や共に戦う仲間であり、敵国の役割はドイツに移ったからだ。
『ドイツも超弩級戦艦を所有しているのだから、張り合わなければならない』
 という宍戸の鶴の一声で決まった。
 そしてこの日、竣工式兼遠征出発式を執り行っている真っ最中だ。
『本日より、連合艦隊旗艦は戦艦大和となり、対独戦線のために欧州へ派遣することに至った。これからの時代は、独国に対する共同戦線となり……』
 そんな建前の話がつらつらと続く。
 その後は、水兵の整列や国旗・軍艦旗の授与。そして艦長や山本長官の乗艦に入る。
 式典は朝から行われ、昼過ぎまで続いた。
 そのまま大和と武蔵は横須賀を出発し、駿河湾にいる第一艦隊と合流する。そしてヨーロッパ方面に向けて出発する。欧号作戦の開始であった。
 戦艦と空母を主力とする第一艦隊は、まずは南方に向けて進んでいく。台湾を横切り、南沙諸島周辺にやってくる。
 その時、第一艦隊を発見する潜水艦の群れが一つ。ドイツ海軍太平洋艦隊の一つ、シューベル潜水艦隊である。
 Uボート十隻と潜水母艦によって構成されるこの艦隊は、日本がドイツに対して宣戦布告した数日後にドイツ本国を出発した艦隊だ。日本の動きを監視したり、必要ならば攻撃もいとわないことを命令として受け取っている。
「アイツが例のヤマトとムザシか……」
「はい。公開されている情報が正しければ、ベルリン級戦艦よりも巨大な主砲を積んでいるとのことです。あとムザシではなくムサシです」
「その辺はどうでもいいだろう。とにかく、この状況はよくない。情報によれば、あの戦艦たちはドイツに向かっているそうじゃないか。本国に降りかかる火の粉は、早めに振り払わなければならないだろう」
「その通りです、艦長」
「ならばやることは一つだ。魚雷戦用意! 全艦通達後に潜望鏡深度まで急速潜航!」
 艦橋から全艦に発光信号で通達する。その後、艦橋の水密扉を閉鎖して発令所に移動した。
 急速潜航を行い、潜望鏡が顔を出せる場所まで潜航する。潜望鏡を上げて、状況を確認し続ける。
「進行方向から八十度方向より、敵艦隊接近中」
「魚雷射程距離に入るまで、およそ一時間」
「魚雷発射管、一番から六番まで魚雷装填」
「これより隠密行動を取る。総員、静寂に」
 こうして、一時間ほど静寂を作り出すシューベル艦隊。
 そして一時間二十分後に、シューベル艦隊の前方八キロメートルの所に第一艦隊はいた。
 第一艦隊のことを確認した艦長は、懐中時計を持って指示を出す。
「魚雷発射用意。発射管に注水」
「注水開始」
 静かに魚雷発射管へ海水が注水される。
 それが終わったころには、第一艦隊が射程に収まっていた。
「……魚雷全弾発射!」
 合計六十本の魚雷が、第一艦隊に向けて発射される。
 しかし、いくら潜水艦大国のドイツであっても、艦隊に対して魚雷を命中させるのは難しい。
 実際、航跡を確認して回避するのは余裕である。
 通常の艦艇ならば。
「魚雷接近中! 距離二千!」
 不運なことに、大和に対して魚雷が二本接近してきている。回避しようにも、超弩級の船体で回避するのは容易ではない。
 そして魚雷が命中し、水柱が一本立った。どうやらもう一本のほうは不発だったようだ。
 それでも魚雷が命中したのには変わりはない。被害のほどはというと……。
「被害確認! 水密扉が歪みました!」
 あとは壁が少し凹んだくらいで、船内に影響はない。甲板から命中部分を確認しても、大した傷はついていないように見える。
「対水雷防御を底上げしているとは聞いていたが、これほどまでとはな……」
 座乗していた山本長官が驚く。
 通常、一本でも魚雷を食らえば装甲が歪み、そこから浸水が発生する。それがこの大和にはないのだ。とてつもない頑丈さである。
「さて……。魚雷が発射された場所は特定できたか?」
「はい。この辺りから発射されたようです」
 そういって海図で示す航海士官。
「この辺りに向けて、砲撃準備」
「しかし、相手は潜水艦と思われます。潜航している状態では効果はないかと……」
「この大和ならやってくれるだろう。砲撃準備だ。武蔵にも伝えろ」
「はっ。砲撃戦用意! 目標、潜航している敵潜水艦!」
 そういって、Uボートがいるであろう場所に向けて、五〇センチ砲が向けられる。
 自動装填装置によって、迅速に装填されるだろう。
「発射準備完了しました」
「全門一斉射せよ。当たっても当たらなくても、今の我々にはあまり関係ないからな」
「了解。全門一斉射、撃ち方始め!」
 超弩級の戦艦の、超弩級の主砲から、超弩級の爆炎が噴きだす。
 直径五〇センチの砲弾は、数十秒飛翔したのちに海面に着弾した。
 その瞬間、着弾の影響でその周辺に衝撃波が広がる。それにより、至近弾だったUボートは缶の中に入れられたような衝撃と、外装にひずみが生じるだろう。
「浸水発生ー!」
「駄目だ、抑えきれません!」
「なんてこった……」
 シューベル艦隊のうち、七隻が浸水で沈んでしまった。
 そんな戦果が起きたことも分からずに、第一艦隊は一路イギリスを目指して進む。
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