異世界でエルフに転生したら狙われている件

紅音

文字の大きさ
11 / 66
4.勇者

10

しおりを挟む
アルフレイドがリビングを出て行ったのを見送ってから、俺はルドルフと改めて話をした。

そして、ルドルフの正体を知り、アルフレイドをどうしようかと思っているのかも知った。

「アルフが、あなたに出会ったのも何かの縁じゃ。」

「ダメだ。」

「だから、危険だと言っとるじゃろ!!」

ルドルフは声を震わせ、怒鳴った。

「お前の考えには賛成できない。それでは、アイツが可哀想すぎる。お前と共にいる事こそが、今のアイツの幸せなんじゃないのか?お前に頭を撫でられた時、アイツが泣きそうな顔をしていたのを、お前だって気付いていただろう?たった一日の別れを、あんなにも苦しむ奴の元をお前は、去って行けるのか?」

「…………」

ルドルフの顔が、辛そうに歪んでいく。

「…お前が言った通り、アイツに出会ったのも何かの縁だ。…だから、また明日来る。必ず。」



















「それが、こんなにも早く戻って来る気はなかったのだがな」

「美人を追い掛けて走る王子………。なんつって」

「こんな時にふざけてんじゃないわよ、この馬鹿!!
レオン、ここの魔導士たちは私達が食い止めるから、早く小屋に!!!」

「頼んだ」

ミリアとファルコが、俺の道を塞ぐ魔導士たちを次々と倒し、俺は抜き身の剣を持ったまま、小屋へと駆けた。


表から入れば攻撃を仕掛けられる可能性が高いため、俺はあくまでも冷静になって、小屋の裏口から入り込んだ。



(無事でいろよ…。)

すぅーっと深く息を吸い、右足を上げ、リビングへと続く扉を蹴り破った。







「うわーお。予想より早くて野蛮なトージョーっすね、様~!」

「全て、リュージンの処理が遅いのが悪いのだよ。…出来れば直接戦うのは避けたかったのだがね…。まさか、君の仲間に見られていたとは。誤算だったよ。」


紺色の軍服を纏った男二人の、片方のチャラそうな男の腕の中で震えているアルフレイド。



「ルドルフは、どうした。」

自分でも驚くほど冷たい声が出たが、気にしない。

「ルドルフ?あー、あのジィさんのこと?それなら殺したっすよ。アルフレイドちゃんの目の前で。ね、隊長。」

「リュージン、あまり煽るな。ほら、勇者殿がお怒りだ。……はぁ。まったく面倒くさいことになったね。リュージン、君はアルフレイド君を連れて先に戻っていなさい。ここは私が引き受けよう。」

「えぇっ、俺も戦いたいっす!……っていうのは冗談で、了解っす。そんじゃ!!」

「逃がすものか。」

緑眼の男が動くよりも前に、俺は窓から飛び降りようとするチャラ男の元へ行くと、その腕を強く引き戻した。

「おわっ?!ちょ、アルフレイドちゃん、ここで暴れたらいくら力弱くても落ちまうから、って、ああ、ちょっと!!」

アルフレイドが必死の抵抗をみせたことで、チャラ男の方に隙が生じ、俺は瞬時に距離を詰めて、アルフレイドを奪い返した。

「っ、……ん、……」

…身体が熱い。何か盛られたか…?

「アルフレイド。すまないが、あと少しだけ耐えてくれ。」

こくりと頷いたのを見てから、俺は前の二人へ向き直った。

先程までのどこか緩そうだった雰囲気も今はなく、どちらもこちらを強く睨みつけている。



そろそろ二人も外の魔導士達を倒し、こちらへやってくるだろう。

時間稼ぎ、するか。

「チッ。あのジィさんの魔力が弱まったからやっと見つけられたってのに、どうして勇者なんかが現れるんだよ。」

「勇者殿、我が帝国の方針は知っているだろう?今君が抱えているのは私等にとって大切な『材料』なのだよ。私等を邪魔する者は、排除しなきゃいけない。」

「だから、ルドルフも…殺したのか?」

「私はルドルフあれが、カンナ村にいたエルフの生き残りを匿ったから、それ相応の罰を与えてやったまでに過ぎない。私だって、なんの罪もない人間を殺すほど残虐な人間ではないのだよ。」

「裏切り者を殺して何が悪いんだよ。」

帝国魔導士帝国の犬は、馬と鹿の区別もつかない奴なのか?
と、……よかったな。今日は貴様等の片腕一つなくなるだけで済みそうだぞ。…………ミリア、ファルコ、今だ!!!!」

「「りょーかいっ!!」」

「?!?!まさかっ!!伏せろ、リュージンッ!!」

仲間たちの到着と共に響く爆発音。

黒煙に紛れて俺は駆け出し、小屋を出た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜

キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」 (いえ、ただの生存戦略です!!) 【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】 生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。 ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。 のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。 「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。 「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。 「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」 なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!? 勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。 捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!? 「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」 ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます! 元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています

八神紫音
BL
 魔道士はひ弱そうだからいらない。  そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。  そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、  ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

処理中です...