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10.『黄色』
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「…あ、と…すこ…し…」
僕が前へ進むために伸ばした腕をリヒトが掴み、ゆっくりと立ち上がらせてくれた。
「オレに体を預けながらでいい。アルは、オレが守るから。」
その言葉に、ハッと意識が覚醒する。
ダメだ。これではまた僕は……
「いつまでも守られているわけには、いかないんです…」
「アル…!」
震える手に力を込めて、魔力を集中させる。
回復魔法以外で、僕が唯一使える魔法の魔術式を頭の中で組み立てる。
今、僕が出来る事は…、シークの足止めをし、リヒトの逃げる時間を作ること。
さっきのを見た感じ、リヒトは確かに強い。
それでも、シークの方が強いのは明確だ。
リヒトの一撃が不意打ちでなければ、シークにダメージが入ることは決してなかった。
「……出来た…」
ボソリと言葉を呟くと同時に大きく広げた手の中からシークめがけて、閃光を放出させた。
僕が唯一使える光魔法だ。
魔力量の消費が激しく、今まで数回しか試したことはなかったが…、成功出来てよかった。
これで、少しは時間を稼げる。
首から下げたペンダントの糸を引き千切り、リヒトの手の中に託す。
「リヒト、今すぐここから出て、その、赤い、結晶に…、レオ、ン、と叫びなさい…!きっと、彼は出てくれ、ますか、ら……!」
「…わかった。…そのレオンっていう奴をつれて、絶対戻るからな。
それまで、待ってろよ…!」
リヒトの返事に僕はホッとして、頷き返した。
もしもリヒトがここに残ると言ったら、僕がわざわざ目暗ましのために放った閃光が無駄になってしまう。
リヒトが階段を上っていく音が遠くなった頃、先程放った閃光の影は跡形もなく消えていた。
あの光が持つのはたったの40秒くらいだ。
「…うっ……!」
光の晴れた視界で、急にシークが床に膝をついた。
どうしたのか、と目を瞠る。
少しの間を開けて、シークが俯いていた顔を上げ、こちらに寄ってきた。
まだあまり動かすことの出来ない体が自然と強張る。
「痛っ…!」
細い指先が突然激痛が走った噛み痕から頬をなぞる。
シークのまとう雰囲気が、どこか懐かしいものへと変わった。
「久しぶり、白蓮、って…この姿じゃわからないよね…。
…華桜学園生徒会書記…悠木 璃黄。
そう名乗れば、白蓮も、思い出してくれるかな。」
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「アル…!」
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今、僕が出来る事は…、シークの足止めをし、リヒトの逃げる時間を作ること。
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「……出来た…」
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これで、少しは時間を稼げる。
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