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野心家な王は平和を愛する私を捨て義姉を選びましたが…そのせいで破滅してしまいました。
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「平和な世など…実につまらん。」
「お言葉ですが王様…それは、とても尊い事なのです。」
「フン、生温い事を!俺は、もっとこの国を大きくしたい。隣国は資源豊かな国と聞く。その土地が手に入れば、この国はもっと良くなるのに…。」
彼は、昔から野心家なところがあった。
だからこそ、平和を愛する聖女の私が、彼の妃候補に選ばれたのだ。
人々を虐げる乱暴で無道な…どうか、そんな暴君にだけはならないで欲しい─。
※※※
それが今から数ヶ月ほど前の事。
今、私は王によって聖女の座を剥奪、この国を追い出されようとしていた。
「もはや祈るだけの女は不要。これからは、この者に任せる!」
王子の横で微笑む娘、彼女は…何と私の義姉だった。
だとしたら、彼女の力はとても危険だわ─!
「私もあなた同様、聖女の力に目覚めたの。だから、王の野望が叶うように、私が力をお貸しします!」
「彼女は、俺の望みを何でも叶えてくれると言った。だから俺は彼女を引き連れ、隣国に戦いを挑む。」
「その戦いが終わったら、王は私を妃にしてくれるそうよ?」
「お待ち下さい、義姉は危険な存在で─」
「うるさい!お前のような平和ボケした聖女は、もう要らないんだ…さっさと消えろ!」
…あなたの欲望とその娘の力は、きっと破滅を呼ぶわ。
この先、どうなっても知りませんからね─。
※※※
「まずは金だ。武器を買うには金が要る。」
「すぐに用意致します。」
そして彼女の言う通り、一晩で大金が用意された。
「ならば次は兵だ!そうだな…多少の事では傷つかない頑丈な兵が欲しい、できるか?」
「ええ、簡単ですよ。」
そして彼女が祈った次の日には、数万の兵が用意されていた。
大量の武器も手に入ったし、これだけの兵が居れば隣国なんてすぐに攻め落とせる。
隣国が全て俺の物になったら、この大陸の侵略もあっという間だ。
「いよいよ明日、隣国に攻め入る─。」
そして、意気揚々と隣国へ向かおうとしたのだが…俺たちは、何故か自国に足止めされていた。
何と、俺の国を謎の結界が包み込み…今まさに、俺たちごと封印されようとしていたのだ。
「どういう事だ、何故俺の国がこんな事になる!?お前、何とかしろ!」
「これは…私には、どうする事も。」
「俺の望みを、何でも叶えてくれるんだろう?」
「じ、実は私…聖女ではなく、ただの黒魔術師なのです。対黒魔術ならまだしも、こんな強い聖なる力には、とても対抗できません!」
「お前…俺を騙したんだな!?」
その時、どこからともなく声が響いてきた─。
「王よ、あなたはもう他国へ攻め入る事は出来ません。私が結界で、あなたを苦の事封じ込めましたから。ただし…あなたがその野心を捨て、他国と歩み寄り生きて行こうとした時、この結界は開かれるでしょう。そうでない限り、あなたとその女は閉じ込められたままです。」
「この声は…元聖女か─!」
※※※
「…そうです。私はとある平和な国から、あなたたちの行いを見ていました。あなたの国の民は、平和を守る聖女の私がこの国を去ったことを恐れ、そのほとんどが他国へ逃れました。そこに残っているのは、あなたとその女と兵です。もっとも、金や兵は彼女が黒魔術で生み出したまやかしにすぎない。この聖なる結界の前では、じきに消えてなくなります。」
「じゃあ、俺の野望はどうなる!?」
「そんなもの、この私が絶対に叶えさせませんよ。そしてあなたは、私を捨て義姉を選んだ事で、自ら破滅の道を歩むのよ。」
「…お前、こんな事してタダで済むと思うなよ!?」
「お願い、私をここから出して~!」
二人はギャーギャーと喚いていたが、祭壇の光が消えたと同時に、その声は聞こえなくなった。
「終わったかい?」
「はい、王様。」
「良かったよ…これで無駄な争いを無くす事ができた。」
そう言って微笑むのは、今私が仕えている国の王だ。
この方は一切の争いを望まず、穏やかで優しい方だった。
あの国の王は、彼の事を腰抜けだと罵っていたが…皆が求めているのは、こういう王なのよ。
「彼は、改心してくれるだろうか?」
「…そうなってくれるよう、祈るだけです。」
「でもこれで、君の心を悩ませていた問題は片付いた。どうだろう…この前の返事をくれるかい?」
私は少し前に、彼に求婚されていた。
ただ前の国の事が気になって、王の動向がはっきりするまで返事を保留にしていたのだ。
でもこれで、漸く私は自身の未来に目を向る事ができる─。
「私はこの国に来て、あなたの人柄にとても惹かれました。あなたと一緒なら、きっと穏やかで平和な国を…そして世界を築けるでしょう。どうぞ、私をあなたのものに─。
私は彼の腕に抱かれながら…結界に閉じ込められたままの王と義姉に、心の中で静かに別れを告げた─。
「お言葉ですが王様…それは、とても尊い事なのです。」
「フン、生温い事を!俺は、もっとこの国を大きくしたい。隣国は資源豊かな国と聞く。その土地が手に入れば、この国はもっと良くなるのに…。」
彼は、昔から野心家なところがあった。
だからこそ、平和を愛する聖女の私が、彼の妃候補に選ばれたのだ。
人々を虐げる乱暴で無道な…どうか、そんな暴君にだけはならないで欲しい─。
※※※
それが今から数ヶ月ほど前の事。
今、私は王によって聖女の座を剥奪、この国を追い出されようとしていた。
「もはや祈るだけの女は不要。これからは、この者に任せる!」
王子の横で微笑む娘、彼女は…何と私の義姉だった。
だとしたら、彼女の力はとても危険だわ─!
「私もあなた同様、聖女の力に目覚めたの。だから、王の野望が叶うように、私が力をお貸しします!」
「彼女は、俺の望みを何でも叶えてくれると言った。だから俺は彼女を引き連れ、隣国に戦いを挑む。」
「その戦いが終わったら、王は私を妃にしてくれるそうよ?」
「お待ち下さい、義姉は危険な存在で─」
「うるさい!お前のような平和ボケした聖女は、もう要らないんだ…さっさと消えろ!」
…あなたの欲望とその娘の力は、きっと破滅を呼ぶわ。
この先、どうなっても知りませんからね─。
※※※
「まずは金だ。武器を買うには金が要る。」
「すぐに用意致します。」
そして彼女の言う通り、一晩で大金が用意された。
「ならば次は兵だ!そうだな…多少の事では傷つかない頑丈な兵が欲しい、できるか?」
「ええ、簡単ですよ。」
そして彼女が祈った次の日には、数万の兵が用意されていた。
大量の武器も手に入ったし、これだけの兵が居れば隣国なんてすぐに攻め落とせる。
隣国が全て俺の物になったら、この大陸の侵略もあっという間だ。
「いよいよ明日、隣国に攻め入る─。」
そして、意気揚々と隣国へ向かおうとしたのだが…俺たちは、何故か自国に足止めされていた。
何と、俺の国を謎の結界が包み込み…今まさに、俺たちごと封印されようとしていたのだ。
「どういう事だ、何故俺の国がこんな事になる!?お前、何とかしろ!」
「これは…私には、どうする事も。」
「俺の望みを、何でも叶えてくれるんだろう?」
「じ、実は私…聖女ではなく、ただの黒魔術師なのです。対黒魔術ならまだしも、こんな強い聖なる力には、とても対抗できません!」
「お前…俺を騙したんだな!?」
その時、どこからともなく声が響いてきた─。
「王よ、あなたはもう他国へ攻め入る事は出来ません。私が結界で、あなたを苦の事封じ込めましたから。ただし…あなたがその野心を捨て、他国と歩み寄り生きて行こうとした時、この結界は開かれるでしょう。そうでない限り、あなたとその女は閉じ込められたままです。」
「この声は…元聖女か─!」
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「…そうです。私はとある平和な国から、あなたたちの行いを見ていました。あなたの国の民は、平和を守る聖女の私がこの国を去ったことを恐れ、そのほとんどが他国へ逃れました。そこに残っているのは、あなたとその女と兵です。もっとも、金や兵は彼女が黒魔術で生み出したまやかしにすぎない。この聖なる結界の前では、じきに消えてなくなります。」
「じゃあ、俺の野望はどうなる!?」
「そんなもの、この私が絶対に叶えさせませんよ。そしてあなたは、私を捨て義姉を選んだ事で、自ら破滅の道を歩むのよ。」
「…お前、こんな事してタダで済むと思うなよ!?」
「お願い、私をここから出して~!」
二人はギャーギャーと喚いていたが、祭壇の光が消えたと同時に、その声は聞こえなくなった。
「終わったかい?」
「はい、王様。」
「良かったよ…これで無駄な争いを無くす事ができた。」
そう言って微笑むのは、今私が仕えている国の王だ。
この方は一切の争いを望まず、穏やかで優しい方だった。
あの国の王は、彼の事を腰抜けだと罵っていたが…皆が求めているのは、こういう王なのよ。
「彼は、改心してくれるだろうか?」
「…そうなってくれるよう、祈るだけです。」
「でもこれで、君の心を悩ませていた問題は片付いた。どうだろう…この前の返事をくれるかい?」
私は少し前に、彼に求婚されていた。
ただ前の国の事が気になって、王の動向がはっきりするまで返事を保留にしていたのだ。
でもこれで、漸く私は自身の未来に目を向る事ができる─。
「私はこの国に来て、あなたの人柄にとても惹かれました。あなたと一緒なら、きっと穏やかで平和な国を…そして世界を築けるでしょう。どうぞ、私をあなたのものに─。
私は彼の腕に抱かれながら…結界に閉じ込められたままの王と義姉に、心の中で静かに別れを告げた─。
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