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聖女の妹が病弱な私を傍に置き離しません。そうする事で、より彼に愛されると思ったのでしょう─。

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「病弱なお姉様が心配なの…だから、聖女の私のそばに居てね!神官長も、それを許してくれるんだし─。」

 病弱な私は、妹が務めを果たす神殿に置いて貰って居る。

 面倒見の良い妹と、心の広い神官長が居て下さって、本当に良かった…。

 そんな妹の事を、周りの者たちは女神様の様だと言いあおしたう。
 
 迷惑をかけ申し訳ないと思う反面、実の妹がそんな評価を受け姉としては嬉しい…そう心からそう思っていた。

※※※

 そんなある日の事。
 
 私は偶々たまたま体の調子が良く、神殿の庭を散歩していた。

 するとそこには、見慣れぬ男が─。

「君は…!」

「わ、私はただの病人で…もしかして、聖女の妹にご用ですか?」

「俺は─」

「お姉様、こんな所に居たのね!」

丁度ちょうど良かった。今、そこに─」

 振り返れば、もうそこに彼の姿はなかった。

「誰も居ないじゃない!いいから、早くお部屋に戻って?」

 部屋に戻ってきた私は先程の男の事が気になり、ベッドに入っても眠れないでいた。

 すると、コツコツと窓を叩く音がし、見ればそこには先ほどの男が─。

「あなた…一体何者?私に何か用なの?」

「君に、ある事実を伝えなければと思ってね。」

 彼の話に、私は自分の耳を疑った─。

※※※

 全く…油断もすきもない。
 お姉様には、一生あの部屋に居て貰わないと困るの!

 あの部屋には、この神殿に聖なる力を送る為の術がかけてある。

 お姉様の生命力はこの神殿に…そして、私にとってなくてはならないものだ─。

「姉は見つかりましたか?」

「はい、神官長様!申し訳ありません、あのバカ女が。」

「見つかったなら良いんですよ。君は…実にいい獲物えものを連れて来てくれた。あの娘が居る事でこの神殿は…そして私の力も高まっている。おかげで私は、王に一目置かれる存在になった。」

「愛するあなたの為なら、私は姉さえも犠牲にします!力を吸われ続ける事で弱ろうが死のうが、私にはどうでもいい事です。」

 そう、私が姉を傍に置いて居るのは、愛する神官長により愛される為。
 だってこうでもしなきゃ、一介の聖女である私など気に留めて貰えないもの。

 だから悪く思わないで、お姉様─。

「やはり彼の言った事は本当だったのね…あなたは、自分の幸せの為に私を利用しただけだった。」

※※※

「お、お姉様!?」

「ここは神官長の部屋だ、勝手に─」

「いや、お前は今日をもって神官長を解任だ。」

「お前…何者だ!」

「俺は王に頼まれ、この神殿を調べていた。この神殿と神官長のお前が、突然強大な力を得た訳を知る為にな。調査の結果、その悪女の妹が一枚んでいたという事が分かった。」

 その言葉に、妹は真っ青な顔をして震えている。

「愛する男により愛される為、姉の命をも犠牲にするか。お前は悪魔に魂を売った女だ、もはや聖女とは言えない。今日をもって聖女の座は剥奪…後に王より厳しい罰を与えられる。」

「そんな…お姉様、謝るから王様に掛け合ってよ。だって私たち姉妹でしょう?お願い、助けてよ!」

「自分から姉妹のきずなを断ち切っておいて、都合が悪くなったら助けてはないでしょう?彼が言ったの…こんな事に利用されてなければ、私は本当はもっと元気で、あなたよりも優れた大聖女になるだろうって…だから、あなたが居なくなっても構わないそうよ。」

「ま、待ってくれ、私はもうこの女を愛していない!だからこの女がどうなっても構わんが、私を失う事は困るだろう?強大な力を持った神官長を失えば、この神殿はどうなる。いくらその女が大聖女になれるとしても、そんな新米だけでは─」

「それなら大丈夫だ。この神殿の新しい神官長は、俺が務める。俺はお前の様に、彼女の生命力に頼らなければならない程、力に困っている訳ではないからな。」
 
 確かに、彼の身体からは強い神気を感じるわ…。
 それは神官長も分かったらしく、言葉を返せないでいる。

 そして妹は…先程の神官長の言葉に強いショックを受けたのか、その場に崩れ落ちうつろな目をしていた。

 二人は駆けつけた兵に捕らえられ、すぐに牢へ入れられた。

 その後神官長は死罪に、妹は追放となった。

 妹は神官長の言葉で心が壊れたのか、ついに正気に戻らず…しかしその状態で、身一つで国の外へ放り出された。

 そんな妹に救いの手を差し出す者は、勿論もちろん居ない。
 
 かつて皆から女神の様だと愛された妹は、今では悪魔にかれた悪女だと、み嫌われる存在となってしまったのだから─。
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