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私を追い出した妹とその婚約者は没落し、今では牢に住んでいます。

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「この家は、彼と私の物よ。」

「お前は、邪魔じゃまだ。」

 わけあってうつり住んだ、この家。
 少し前に押しかけて来た妹とその婚約者によって、私はこの家を追い出されようとしている。

 何て、馬鹿ばかなことを…。
 この家は、私が居なくなったら終わりなのよ?
 今ある財産ざいさんは、すべ没収ぼっしゅうされてしまうわ。
 
 私が居なくなったら、どんどんまずしくなっていくでしょうね─。

※※※

「お姉様、探しました!どうか、あの家に戻って来て下さい。」 

「お前が居なくなった途端とたん、あの家の財産がみるみる減って行ったんだ!おまけに見知らぬ者たちが押しかけて来て、家具から何かまで全て持って行ってしまった。」

 そう言って、私に泣きつく妹とその婚約者。

「私は、もうあそこには戻りません。私はもうすぐ結婚し、ここに住むことになりますから。」

「結婚!? 誰とよ!」

「それは、私だ。」

「お前が、こいつの相手か。なぁ、俺たちに金を工面くめんしてくれよ。俺たち、家族みたいなものだろ?」

「そうよお姉様、可愛い妹が困ってるのよ?」

「何が家族よ、私を邪魔じゃまだと追い出したくせに。あの家は、元々はこの方が私にくれた物なのよ。家具から何まで、この方が買って下さったの。今まであの家に資金援助しきんえんじょをして下さったのは、この方なの。あの家に私が居ることを条件じょうけんに、ずっと良くして下さっていたのに。でもあなたたちは、私をあの家から追い出してしまった。だからこの方は、あなたたちからあの家を没収したのです。」

「何でお姉様が、そんなに大事だいじにされるのよ!?」

「私はこの地の領主りょうしゅだ。以前旅の途中で具合ぐあいが悪くなった私を、偶然ぐうぜん通りがかった彼女が介抱かいほうしてくれた。おかげで私は、無事ぶじ領地に戻ることができた。私は彼女に深く感謝かんしゃし、そのあかしとしてあの家をあたえたんだ。それなのに、家を追い出されたと言って、彼女が私をたよってきた時はおどろいたよ。お前たち、よくも私の大事な人を傷つけてくれたな。そもそも私は、お前たちがあの家に住むことをこころよく思っていなかった。」

 彼は、2人にある物を見せた。

「金遣いの荒いお前たちは、金に困ると勝手かってに家具や調度品ちょうどひんを持ち出し、金にえていたな。これには、換金屋かんきんやとのやり取りが書かれている。あの家にある物は、全て彼女の所有物しょゆうぶつだ。お前たちがやったことは、窃盗せっとうとみなす。…せっかくここまで来てもらったんだ、お前たちに似合にあいの家を用意よういしよう─。」

※※※

 こうして没落ぼつらくした2人は、今ではろうに住んでいます。
 新しく2人で住める家が見つかって、良かったわ─。
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