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第二話 木(もく)の魔珠
2-05.ウィスタリア
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「え……どうして」
ウィスタリアが教室へ入って来て、クフェアやルナーティア以外に誰もまともな言葉を発していない。当然、ルナーティアの名前も出ていないのに、ウィスタリアはあっさりとルナーティアの名前を言い当てた。
「父さんが話してたからねー」
「父さんって……オウレン?」
エイクレッドを連れ帰ってもらおうと、リクリスが呼び出した竜。それが、エイクレッドの父オウレンだ。
「そ。エイクレッドの姿が見えないから、いないねーって言ってたの。そうしたら、人間界にいるって。その時に、ルナーティアとレシュウェルとリクリスの名前が出たのよ」
オウレンとは三人の人間が会っているが、その名前を全部出された。エイクレッドの姉、というのは本当のようだ。
関係ない竜に、オウレンがルナーティア達の名前を教えたりはしないだろう。
「あの、エイクレッドを迎えに来てくれたの?」
オウレンは「自力で戻れるようになるまで、そこにいろ」と言っていた。
だが、話を聞いた姉が迎えに来たのでは、とルナーティアは思ったのだ。幼い弟を放ってはおけない、と。
もしくは、少し時間が経ったので、そろそろ帰らせてもいい、とお許しが出たとか。
「え? まっさかぁ」
だが、ウィスタリアは笑いながら、ルナーティアの希望をいとも簡単に砕く。
「そんなことをしたら、私が父さんに叱られるじゃない。今度は私が父さんに魔力を抜かれて、こっちへ放り出されかねないわ。そんなの、やぁよ」
否定するにしても、もう少し言葉を選んで言ってもらいたい。
そう思ったのは、ルナーティアだけだろうか。
「それじゃあ、何しに……」
「まさかと思うけど、くたばってないかなって興味本位で」
そんなことをあっさり言われ、思わずルナーティアは立ち上がった。
「ウィスタリア! エイクレッドはあなたの弟でしょ。興味本位じゃなく、もっと心配したらどうなのっ」
平均よりわずかに小柄なルナーティア。対するウィスタリアは、モデル並のスタイルな上に、ピンヒールなのでさらに身長差ができてしまう。
美少女を間近で見上げるのは腰が引けるものがあるが、そんなことは気にならない程にルナーティアは怒っていた。
勝手なことをした罰として父親が子どもを置いて行くのは……あってほしくないが、ありかも知れない。
竜でも人間でも、その家庭によっての教育方針があるだろうから。第三者が口をはさむことではない。
だが、叱られた弟をからかいに、わざわざこんな所まで来る姉なんて、ルナーティアは「なし」だと思う。自宅で部屋に閉じ込められているのと、今の状況とでは訳が違うのだ。
自分のことではなくても、その言い方に腹が立つ。ウィスタリアの真意はともかく、今の言葉のチョイスは悪意を感じてしまう。
少なくとも「くたばる」なんて、使ってほしくなかった。エイクレッドの場合、最悪の状況だってありえたのだ。その言葉が、真実になってしまいかねない。
竜は生命力が強いと聞くし、これくらいで死ぬことはない、とわかっていて使ったのだろうか。
でも、それはそれ、だ。もっと違う言い方があるはず。
「大した力もないのに、ちょろちょろするからじゃない。ここまでちっちゃくなったら、戻るのは難しいんじゃない? もう帰るのは無理かもよ」
一方のウィスタリアは、ルナーティアに言い返されてもまるで気にしていない様子。人間の言葉など取るに足らない、とでも思われているのか。
「そ、そんなことないっ。ぼくは帰る!」
それまで黙って聞いていたエイクレッドが、今までにない大きな声で叫んだ。
「あら、口だけは元気ね。だけど、どれだけ魔力をなくしてると思ってるの。そんな様子じゃ、帰るにしたって五年や十年はかかるかもよ」
「そんなことないっ」
エイクレッドが言い返し、これって竜の姉弟ゲンカ? とクラスが少しざわつき始める。
「そうよ、そんなことないわよっ。これでも、魔果を食べたおかげか、こちらへ来た頃よりも一センチ近く身長が伸びたんだから。もっとおいしい魔果の作り方もわかったし、これからもっと順調にエイクレッドは戻るわ」
効果を確認するために、ルナーティアは魔果を食べる前からエイクレッドの体長や体重を測定していたのだ。
ちょっと大きくなったような気がして、昨夜計ってみたら本当に伸びていた。
身体が大きくなるということは、それだけ魔力が戻ったということ。
それを喜び、教室でもクラスメイト達に報告して喜んでいたところなのだ。
おいしいとは言えない魔果を数日食べただけでも効果があったのだから、これからの回復も十分期待ができる。
「へぇー」
そんなルナーティアの気持ちを知ってか知らずか、小バカにしたようなウィスタリアの相槌。
「ルナーティア達が、すっごくがんばってくれようとしてるんだ。もっと早く帰れるよっ」
魔珠鏡のことを言っているのだろう。
まだ始まってもいないし、そこはルナーティア達のがんばり如何によるのだが、エイクレッドはそう断言した。
「あら、そう」
ウィスタリアはそう言うと、少し挑戦的な目付きでルナーティアを見る。
「ねぇ、ルナーティア。あなた、エイクレッドがどれだけ魔力を失ってるか、わかってるのかしら?」
「それは……わかんない」
聞かれたルナーティアは、正直に言った。
そもそも、竜が持つ本来の力もわかっていないのだ。途方もない量だろう、というのはおぼろげながら推測はしているが、その程度。
女同士の口論に割って入れないでいるクフェアだって、たぶん正確なことは知らないだろう。
「それも知らないで、戻すって言ってる訳? 無知って、すごいわねぇ」
ルナーティアの答えに、ウィスタリアはくすくす笑う。
「ウィスタリア! ルナーティアにひどいこと言わないでっ」
「はいはい、ごめんなさーい」
口では謝っているが、全然謝罪の意思がこもってない。
それから改めて、ウィスタリアはルナーティアを見た。
「人間に竜の力が戻せるのか、お手並み拝見ね」
これだけの量を失っている、と半ば脅しのように伝えてくるかと思ったが、ウィスタリアは詳しいことを言うつもりはないようだ。
明確な数字を教えてもらえなくて、よかったような悪かったような。……いや、そんな必要はない。
「やってみせるわよっ」
ウィスタリアに言われるまでもなく、ルナーティアはエイクレッドの魔力を戻すつもりでいる。
それがどれだけ大変な量であっても、関係ない。魔法使い何千人、何万人分であろうとも。
「失礼、竜の姫」
異常な状況に傍観しかできなかったクフェアだが、ようやく口を挟めた。
「今、我々は授業中なんだ。勉強に戻りたいので、弟くんとの再会が終わったようなら、今はお引き取り願えるだろうか」
これ以上ヒートアップされたら、特にウィスタリアが変に興奮したらまずい。
今はルナーティアの言葉を軽く流しているが、もし地雷を踏んだら。こんな所で竜の力を発揮されたら、とんでもないことになってしまう。
ここは事務的に言う方が効果あり、とみた。
「授業?」
小首をかしげて聞き返す様子は、今までの挑発的な様子とは違ってかわいく見える。美少女って得だなぁ、とルナーティアは心のどこかで思った。
「ああ、人間ってたくさん集まって、みんなで勉強するんだっけ。そっか、ここがそうなのね。エイクレッドの気配だけをたどってたから、気付かなかったわ」
竜にとって、授業うんぬんの感覚などはないらしい。
エイクレッドのいる周辺にたまたま多くの人間がいた、という程度なのだろう。
「……ねぇ、どうしてみんな、肩にエイクレッドもどきみたいなのを乗せてるの?」
本物のエイクレッドは机の上にいるが、今朝クラスメイト達が魔法で作り出したエイクレッドっぽいものはそのまま。
ウィスタリアはエイクレッドの気配を読んでいたので惑わされることはなかったが、改めて妙な景色に気付いたのだ。
「それは……色々と事情があって。興味本位でエイクレッドに近付いて来て、傷付ける言葉を口にする人がいたりするから」
嘘ではないが、ルナーティアはさりげなく今のウィスタリアの態度に対して嫌みを言ったのだ。
「あーら、竜を傷付けようなんて、大胆な人間もいるのね」
やはり、ウィスタリアには通じていないようだ。
「これ以上、勉強の邪魔はしちゃダメね。帰るわ」
「ウィスタリア、邪魔したってわかってるなら、少しはみんなに謝れよ」
「えらっそーに、ちび竜ちゃん」
笑いながら赤く長い髪をなびかせ、ウィスタリアは扉ではなく、窓の方へと歩いて行く。
軽く飛んで窓の桟に立ち、中を振り返った。
「邪魔してごめんねー」
さっきよりはましだが、やはり謝罪の意思が薄いような口調だ。
それからまた、ルナーティアを見る。
「たぶん、また来るわ」
かわいい顔に挑戦的な笑みを浮かべ、ウィスタリアは窓の外へと身を躍らせた。
ここは二階だ、ということを遅まきながら思い出した人間達は「あっ」と声を出したが、赤い光がふわりと浮いて見ている間に遠くなる。
竜なら飛べて、そのままどこかへ移動するなり、元の世界へ戻るなりすることは簡単だろう。
とにかく、ちょっとした嵐が過ぎ去ったとわかり、誰もがほっとした途端、終業のベルが鳴った。
ウィスタリアが教室へ入って来て、クフェアやルナーティア以外に誰もまともな言葉を発していない。当然、ルナーティアの名前も出ていないのに、ウィスタリアはあっさりとルナーティアの名前を言い当てた。
「父さんが話してたからねー」
「父さんって……オウレン?」
エイクレッドを連れ帰ってもらおうと、リクリスが呼び出した竜。それが、エイクレッドの父オウレンだ。
「そ。エイクレッドの姿が見えないから、いないねーって言ってたの。そうしたら、人間界にいるって。その時に、ルナーティアとレシュウェルとリクリスの名前が出たのよ」
オウレンとは三人の人間が会っているが、その名前を全部出された。エイクレッドの姉、というのは本当のようだ。
関係ない竜に、オウレンがルナーティア達の名前を教えたりはしないだろう。
「あの、エイクレッドを迎えに来てくれたの?」
オウレンは「自力で戻れるようになるまで、そこにいろ」と言っていた。
だが、話を聞いた姉が迎えに来たのでは、とルナーティアは思ったのだ。幼い弟を放ってはおけない、と。
もしくは、少し時間が経ったので、そろそろ帰らせてもいい、とお許しが出たとか。
「え? まっさかぁ」
だが、ウィスタリアは笑いながら、ルナーティアの希望をいとも簡単に砕く。
「そんなことをしたら、私が父さんに叱られるじゃない。今度は私が父さんに魔力を抜かれて、こっちへ放り出されかねないわ。そんなの、やぁよ」
否定するにしても、もう少し言葉を選んで言ってもらいたい。
そう思ったのは、ルナーティアだけだろうか。
「それじゃあ、何しに……」
「まさかと思うけど、くたばってないかなって興味本位で」
そんなことをあっさり言われ、思わずルナーティアは立ち上がった。
「ウィスタリア! エイクレッドはあなたの弟でしょ。興味本位じゃなく、もっと心配したらどうなのっ」
平均よりわずかに小柄なルナーティア。対するウィスタリアは、モデル並のスタイルな上に、ピンヒールなのでさらに身長差ができてしまう。
美少女を間近で見上げるのは腰が引けるものがあるが、そんなことは気にならない程にルナーティアは怒っていた。
勝手なことをした罰として父親が子どもを置いて行くのは……あってほしくないが、ありかも知れない。
竜でも人間でも、その家庭によっての教育方針があるだろうから。第三者が口をはさむことではない。
だが、叱られた弟をからかいに、わざわざこんな所まで来る姉なんて、ルナーティアは「なし」だと思う。自宅で部屋に閉じ込められているのと、今の状況とでは訳が違うのだ。
自分のことではなくても、その言い方に腹が立つ。ウィスタリアの真意はともかく、今の言葉のチョイスは悪意を感じてしまう。
少なくとも「くたばる」なんて、使ってほしくなかった。エイクレッドの場合、最悪の状況だってありえたのだ。その言葉が、真実になってしまいかねない。
竜は生命力が強いと聞くし、これくらいで死ぬことはない、とわかっていて使ったのだろうか。
でも、それはそれ、だ。もっと違う言い方があるはず。
「大した力もないのに、ちょろちょろするからじゃない。ここまでちっちゃくなったら、戻るのは難しいんじゃない? もう帰るのは無理かもよ」
一方のウィスタリアは、ルナーティアに言い返されてもまるで気にしていない様子。人間の言葉など取るに足らない、とでも思われているのか。
「そ、そんなことないっ。ぼくは帰る!」
それまで黙って聞いていたエイクレッドが、今までにない大きな声で叫んだ。
「あら、口だけは元気ね。だけど、どれだけ魔力をなくしてると思ってるの。そんな様子じゃ、帰るにしたって五年や十年はかかるかもよ」
「そんなことないっ」
エイクレッドが言い返し、これって竜の姉弟ゲンカ? とクラスが少しざわつき始める。
「そうよ、そんなことないわよっ。これでも、魔果を食べたおかげか、こちらへ来た頃よりも一センチ近く身長が伸びたんだから。もっとおいしい魔果の作り方もわかったし、これからもっと順調にエイクレッドは戻るわ」
効果を確認するために、ルナーティアは魔果を食べる前からエイクレッドの体長や体重を測定していたのだ。
ちょっと大きくなったような気がして、昨夜計ってみたら本当に伸びていた。
身体が大きくなるということは、それだけ魔力が戻ったということ。
それを喜び、教室でもクラスメイト達に報告して喜んでいたところなのだ。
おいしいとは言えない魔果を数日食べただけでも効果があったのだから、これからの回復も十分期待ができる。
「へぇー」
そんなルナーティアの気持ちを知ってか知らずか、小バカにしたようなウィスタリアの相槌。
「ルナーティア達が、すっごくがんばってくれようとしてるんだ。もっと早く帰れるよっ」
魔珠鏡のことを言っているのだろう。
まだ始まってもいないし、そこはルナーティア達のがんばり如何によるのだが、エイクレッドはそう断言した。
「あら、そう」
ウィスタリアはそう言うと、少し挑戦的な目付きでルナーティアを見る。
「ねぇ、ルナーティア。あなた、エイクレッドがどれだけ魔力を失ってるか、わかってるのかしら?」
「それは……わかんない」
聞かれたルナーティアは、正直に言った。
そもそも、竜が持つ本来の力もわかっていないのだ。途方もない量だろう、というのはおぼろげながら推測はしているが、その程度。
女同士の口論に割って入れないでいるクフェアだって、たぶん正確なことは知らないだろう。
「それも知らないで、戻すって言ってる訳? 無知って、すごいわねぇ」
ルナーティアの答えに、ウィスタリアはくすくす笑う。
「ウィスタリア! ルナーティアにひどいこと言わないでっ」
「はいはい、ごめんなさーい」
口では謝っているが、全然謝罪の意思がこもってない。
それから改めて、ウィスタリアはルナーティアを見た。
「人間に竜の力が戻せるのか、お手並み拝見ね」
これだけの量を失っている、と半ば脅しのように伝えてくるかと思ったが、ウィスタリアは詳しいことを言うつもりはないようだ。
明確な数字を教えてもらえなくて、よかったような悪かったような。……いや、そんな必要はない。
「やってみせるわよっ」
ウィスタリアに言われるまでもなく、ルナーティアはエイクレッドの魔力を戻すつもりでいる。
それがどれだけ大変な量であっても、関係ない。魔法使い何千人、何万人分であろうとも。
「失礼、竜の姫」
異常な状況に傍観しかできなかったクフェアだが、ようやく口を挟めた。
「今、我々は授業中なんだ。勉強に戻りたいので、弟くんとの再会が終わったようなら、今はお引き取り願えるだろうか」
これ以上ヒートアップされたら、特にウィスタリアが変に興奮したらまずい。
今はルナーティアの言葉を軽く流しているが、もし地雷を踏んだら。こんな所で竜の力を発揮されたら、とんでもないことになってしまう。
ここは事務的に言う方が効果あり、とみた。
「授業?」
小首をかしげて聞き返す様子は、今までの挑発的な様子とは違ってかわいく見える。美少女って得だなぁ、とルナーティアは心のどこかで思った。
「ああ、人間ってたくさん集まって、みんなで勉強するんだっけ。そっか、ここがそうなのね。エイクレッドの気配だけをたどってたから、気付かなかったわ」
竜にとって、授業うんぬんの感覚などはないらしい。
エイクレッドのいる周辺にたまたま多くの人間がいた、という程度なのだろう。
「……ねぇ、どうしてみんな、肩にエイクレッドもどきみたいなのを乗せてるの?」
本物のエイクレッドは机の上にいるが、今朝クラスメイト達が魔法で作り出したエイクレッドっぽいものはそのまま。
ウィスタリアはエイクレッドの気配を読んでいたので惑わされることはなかったが、改めて妙な景色に気付いたのだ。
「それは……色々と事情があって。興味本位でエイクレッドに近付いて来て、傷付ける言葉を口にする人がいたりするから」
嘘ではないが、ルナーティアはさりげなく今のウィスタリアの態度に対して嫌みを言ったのだ。
「あーら、竜を傷付けようなんて、大胆な人間もいるのね」
やはり、ウィスタリアには通じていないようだ。
「これ以上、勉強の邪魔はしちゃダメね。帰るわ」
「ウィスタリア、邪魔したってわかってるなら、少しはみんなに謝れよ」
「えらっそーに、ちび竜ちゃん」
笑いながら赤く長い髪をなびかせ、ウィスタリアは扉ではなく、窓の方へと歩いて行く。
軽く飛んで窓の桟に立ち、中を振り返った。
「邪魔してごめんねー」
さっきよりはましだが、やはり謝罪の意思が薄いような口調だ。
それからまた、ルナーティアを見る。
「たぶん、また来るわ」
かわいい顔に挑戦的な笑みを浮かべ、ウィスタリアは窓の外へと身を躍らせた。
ここは二階だ、ということを遅まきながら思い出した人間達は「あっ」と声を出したが、赤い光がふわりと浮いて見ている間に遠くなる。
竜なら飛べて、そのままどこかへ移動するなり、元の世界へ戻るなりすることは簡単だろう。
とにかく、ちょっとした嵐が過ぎ去ったとわかり、誰もがほっとした途端、終業のベルが鳴った。
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