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08.捜すあて
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「誠ちゃん、よく見てるわねぇ」
誠一郎の言葉に、琴音は苦笑する。琴音自身が「見られてる?」と気付いたのは、まさに今なのに。
「それは、俺も気付いてたよ」
遼太郎も、デューロウの視線がやけに琴音へ向けられていることに気付いていた。
年上の男二人に見据えられて怖いから、女性の方に向いてしまうのかな、と思っていたのだが……。
「先に言っとくけど、琴音はオレの恋人だからな。ちゃんと遼兄にも、許可をもらってあるんだ」
「はぁっ? 許可って……何よ、それ。二人して、そんな話してたの?」
「下手に隠れて付き合ってたら、見付かった時にどうして黙ってたんだってことになって、オレがボッコボコにされるだろ。だから、ちゃんと話しておいた」
「かわいい妹を託すんだぞ。変な奴に任せられるか。誠なら知りすぎるくらい知ってるから、いいだろうって思ったんだ。ただし、泣かせたらただで済むと思うな、とは言ってあるから」
「そんなことは絶対にしないって、言っといたからな」
もう……何言ってんのよ、この二人は。
琴音は頭を抱えたくなった。
自分の大好きな二人から愛され、大切にしてもらえるのはありがたいが、時々度を超してるんじゃ……と思う時がよくある。
今だって、人前で堂々と言っているのだから、こちらの方が恥ずかしい。
「そういうのって、普通は父親が言うものじゃないの? 娘を泣かせたら許さない、とか何とかって」
「家族なんだから、一緒だ」
「オレはおっちゃんより遼兄の方が、怒らせたら怖い」
「あの、デューロウ。この二人のことは、ぜーんぜん気にしなくていいからね」
「うん……。あの、ぼくは別に、コトネさんが好きだから見てたって訳じゃないんだ。レイリーンに似てるから」
「お前の妹に? って、琴音とお前、全然似てないぞ」
どこをどう見ても、姉弟と言うには無理がある。いとこ……というのも、かなり苦しい。
「ぼくとレイリーンは双子だけど、あんまり似てないんだ」
「二卵性ってことか。それはそうだよな、性別からして違うんだし。デューロウは何歳?」
「十四歳」
「それじゃ、中学生だった頃のことを捜す感じでいいんだな」
「コトネさんを見てると、レイリーンだけが大人になったような、不思議な感じがしたんだ」
デューロウの話では、レイリーンはプラチナブロンドで濃い青の瞳をしているらしい。髪は肩に届く琴音よりもう少し長く、胸辺りまである。
褐色の肌をしたデューロウとは違い、色白。目は大きく、顔立ちは少し幼い……と説明されても、写真がないので想像するしかない。
デューロウ達は十四歳ということだが、琴音達が知る中学生より少し小柄だ。とりあえず三人の頭には、琴音が幼くなったような子、という絵で落ち着く。
双子と呼ぶにはあまりにも似てない容姿のようだが、よその世界へ行くとねこになってしまうような人間だ。自分達の常識を当てはめない方がいいのだろう。
「さてと。俺達の準備はこれでいいとして……デューロウ、きみはどうやってレイリーンを捜すつもりでいるのかな。当てはある? 俺達は今まで、人捜しをした経験っていうのはないんだよ」
「う……うん……」
「他の人達が捜して見付からないのに、素人のオレ達が捜すなんて、かなり大変だと思うけど」
「自分達の足で捜すしかないじゃない」
一番アナログな方法だが、今はそれしかなさそうだ。
「……琴音、刑事ドラマの見過ぎじゃないか? それ、古いタイプの刑事が言うようなセリフだぜ。靴をはきつぶすまで歩け、とかさ」
「こと、知らない土地で歩き回るのは、ちょっと無謀だぞ。世界そのものが違うんだし」
しかも、有益な情報は一切ない。土地勘もないから、あの辺りが怪しいのでは、といった推測もできないのだ。
「ぼく……他の守扉者達が捜した所を、もう一度捜すつもりでいるんだ」
デューロウの言葉に、三人の視線が少年に集中する。
「どうしてだ? 何だって他の奴が捜してもいなかった場所へ、わざわざオレ達と行くんだよ」
「本当に捜してくれたのか、わからないから」
三人はお互いの顔を見た。
銀の王女は、金の王子であるデューロウと同じく、とても重要な人物のはず。そんな重要人物を本気で捜さない、なんてことがあるのだろうか。
「なーんか、さっきの話にはなかった事情が、ここで新しく出たんじゃないか?」
「そのようだ」
「デューロウ、もしかしてさっきの話は、まだ途中だったの?」
「途中って言うか……」
大まかな話はしたようだが、細かい部分で話していないことがあるようだ。
「あのな、デューロウ。どういう形であれ、お前はオレ達に人捜しを依頼してる訳だろ。だったら、隠してないで、知ってることを全部話しておけよ」
「隠してたつもりじゃないんだ」
デューロウは、慌てて首を横に振る。
「じゃあ、ちゃんと話せよ。でなきゃ、後になってそんな話は聞いてなかったってことになるだろ。知ってたら対処できたのにってことだって、あるかも知れないぜ。そうなったら、お互いが無駄足を踏むことになるだろ」
「あの……守扉者の中に……闇に囚われかけてる人がいるんだ」
またよくわからない説明をされた。
「囚われかけてる? 洗脳されかけてるって感じかな。デューロウには、それがわかるのかい?」
「その人の周りに、黒いもやが漂ってるように見えるんだ」
「それって、オーラってやつかしら」
「どっちかって言うと、悪霊憑きって感じだな」
他の人達は何も言わなかったので、どうやらその黒いもやはデューロウにしか見えていないらしい。デューロウも、最初はそれが何かよくわかっていなかった。
しかし、その黒いもやが見える人のそばにいると、何だかいやな気持ちになってしまう。ひどい言葉をかけられた訳ではないのに、一緒にいるともやもやしてくる。
ついこの間まで、仲よく話をしていた人なのに。
しかも、そんなことを感じてしまう人が……一人ではなく、何人もいる。
そして、気付いた。
扉から徐々に染み出している闇が、あまり心が強くない人間を自分の虜にしようとしているのだ。
黒いもやを漂わせている人達は、正気であって正気ではない。自分が闇に囚われかけていることにも、恐らく気付いていないはずだ。
そんな人達が銀の王女を捜したところで、ちゃんと見付かるはずがない。闇を封じてしまう力を持つ少女を、わざわざ連れ戻すとは思えなかった。
最初から捜すフリだけをしているのか、もしくは見付けても闇に目を濁らされてわからなくされているか、だ。
ここにはいなかった、と報告されれば、他の人達は違う場所を捜すことになる。本当ならすでに見付かっているのに、いなかったと思わされているのかも知れない。
だから「捜したが、いなかった」とされる場所をまず捜そう、というのがデューロウの考えだった。
「その……すごくいやーな話をするけど、その闇に囚われてる人が彼女の命を……ってことはないかな。闇にとって、レイリーンは自分を脅かす存在な訳だし」
遼太郎の質問に、デューロウは少し詰まった。しかし、それを否定する。
「まだ闇に、そこまで人をあやつれる力はないと思う。それだけの力を取り戻していたら、とっくに封印を破ってると思うんだ」
「なるほど。まだ望みは残ってる訳だ」
「けど、その闇は力を取り戻しつつあるんだろ。だったら、楽観してばかりもいられないよな。それに、デューロウが気付いてるってことに闇が気付いたら、次はお前もかなりやばいぞ。何かあったらって親切ごかしに言ってる奴が、実はもう闇の手先になってることだってある訳だし」
金の王子は部屋で待機しているように、と言われている。
デューロウが本当におとなしくしていれば危険は少ないかも知れないが、敵にすれば彼がどこにいるのかはっきりしている状態だ。何か仕掛けようと思えば、簡単にできる。
「ありがたくない可能性だな、それ。ということは、俺達はデューロウのボディガードも兼任するってことになるのか」
「ぼでぃ……?」
デューロウがわからない単語に、また首をかしげる。
「つまり、きみの身辺警護ってことだよ」
「普通のケンカなら、そう簡単に負ける気はしないけどさ……。闇にあやつられてる奴に変な術とか使われると、さすがにそれはまずいよなー」
その「結界を張る力」というのは、物理攻撃にも有効なのだろうか。だとしたら、例えば誠一郎が殴りかかろうとしても、完全に防御されてしまう。
「あのぉ、今更なんだけど……すごく基本的なこと、質問していいかしら」
琴音が、おずおずと手を上げた。
「闇って……何なの?」
さっきから、当たり前のように出てくる「闇」という言葉。悪しき力と言われても、いまいち抽象的でわからない。
「言われてみれば、何でもないように受け入れてたな。オレなりに勝手な想像してたけど……魔物の呼び名、とか?」
「ぼくも、よく知らないんだ」
「はぁ?」
デューロウのセリフに、三人は拍子抜けした。
「闇が封じられたのは……さっきも話したけど、ずっと前。もう何百年も昔なんだ。ぼくも話を聞いただけで、見たことはないし」
誠一郎の言葉に、琴音は苦笑する。琴音自身が「見られてる?」と気付いたのは、まさに今なのに。
「それは、俺も気付いてたよ」
遼太郎も、デューロウの視線がやけに琴音へ向けられていることに気付いていた。
年上の男二人に見据えられて怖いから、女性の方に向いてしまうのかな、と思っていたのだが……。
「先に言っとくけど、琴音はオレの恋人だからな。ちゃんと遼兄にも、許可をもらってあるんだ」
「はぁっ? 許可って……何よ、それ。二人して、そんな話してたの?」
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「そんなことは絶対にしないって、言っといたからな」
もう……何言ってんのよ、この二人は。
琴音は頭を抱えたくなった。
自分の大好きな二人から愛され、大切にしてもらえるのはありがたいが、時々度を超してるんじゃ……と思う時がよくある。
今だって、人前で堂々と言っているのだから、こちらの方が恥ずかしい。
「そういうのって、普通は父親が言うものじゃないの? 娘を泣かせたら許さない、とか何とかって」
「家族なんだから、一緒だ」
「オレはおっちゃんより遼兄の方が、怒らせたら怖い」
「あの、デューロウ。この二人のことは、ぜーんぜん気にしなくていいからね」
「うん……。あの、ぼくは別に、コトネさんが好きだから見てたって訳じゃないんだ。レイリーンに似てるから」
「お前の妹に? って、琴音とお前、全然似てないぞ」
どこをどう見ても、姉弟と言うには無理がある。いとこ……というのも、かなり苦しい。
「ぼくとレイリーンは双子だけど、あんまり似てないんだ」
「二卵性ってことか。それはそうだよな、性別からして違うんだし。デューロウは何歳?」
「十四歳」
「それじゃ、中学生だった頃のことを捜す感じでいいんだな」
「コトネさんを見てると、レイリーンだけが大人になったような、不思議な感じがしたんだ」
デューロウの話では、レイリーンはプラチナブロンドで濃い青の瞳をしているらしい。髪は肩に届く琴音よりもう少し長く、胸辺りまである。
褐色の肌をしたデューロウとは違い、色白。目は大きく、顔立ちは少し幼い……と説明されても、写真がないので想像するしかない。
デューロウ達は十四歳ということだが、琴音達が知る中学生より少し小柄だ。とりあえず三人の頭には、琴音が幼くなったような子、という絵で落ち着く。
双子と呼ぶにはあまりにも似てない容姿のようだが、よその世界へ行くとねこになってしまうような人間だ。自分達の常識を当てはめない方がいいのだろう。
「さてと。俺達の準備はこれでいいとして……デューロウ、きみはどうやってレイリーンを捜すつもりでいるのかな。当てはある? 俺達は今まで、人捜しをした経験っていうのはないんだよ」
「う……うん……」
「他の人達が捜して見付からないのに、素人のオレ達が捜すなんて、かなり大変だと思うけど」
「自分達の足で捜すしかないじゃない」
一番アナログな方法だが、今はそれしかなさそうだ。
「……琴音、刑事ドラマの見過ぎじゃないか? それ、古いタイプの刑事が言うようなセリフだぜ。靴をはきつぶすまで歩け、とかさ」
「こと、知らない土地で歩き回るのは、ちょっと無謀だぞ。世界そのものが違うんだし」
しかも、有益な情報は一切ない。土地勘もないから、あの辺りが怪しいのでは、といった推測もできないのだ。
「ぼく……他の守扉者達が捜した所を、もう一度捜すつもりでいるんだ」
デューロウの言葉に、三人の視線が少年に集中する。
「どうしてだ? 何だって他の奴が捜してもいなかった場所へ、わざわざオレ達と行くんだよ」
「本当に捜してくれたのか、わからないから」
三人はお互いの顔を見た。
銀の王女は、金の王子であるデューロウと同じく、とても重要な人物のはず。そんな重要人物を本気で捜さない、なんてことがあるのだろうか。
「なーんか、さっきの話にはなかった事情が、ここで新しく出たんじゃないか?」
「そのようだ」
「デューロウ、もしかしてさっきの話は、まだ途中だったの?」
「途中って言うか……」
大まかな話はしたようだが、細かい部分で話していないことがあるようだ。
「あのな、デューロウ。どういう形であれ、お前はオレ達に人捜しを依頼してる訳だろ。だったら、隠してないで、知ってることを全部話しておけよ」
「隠してたつもりじゃないんだ」
デューロウは、慌てて首を横に振る。
「じゃあ、ちゃんと話せよ。でなきゃ、後になってそんな話は聞いてなかったってことになるだろ。知ってたら対処できたのにってことだって、あるかも知れないぜ。そうなったら、お互いが無駄足を踏むことになるだろ」
「あの……守扉者の中に……闇に囚われかけてる人がいるんだ」
またよくわからない説明をされた。
「囚われかけてる? 洗脳されかけてるって感じかな。デューロウには、それがわかるのかい?」
「その人の周りに、黒いもやが漂ってるように見えるんだ」
「それって、オーラってやつかしら」
「どっちかって言うと、悪霊憑きって感じだな」
他の人達は何も言わなかったので、どうやらその黒いもやはデューロウにしか見えていないらしい。デューロウも、最初はそれが何かよくわかっていなかった。
しかし、その黒いもやが見える人のそばにいると、何だかいやな気持ちになってしまう。ひどい言葉をかけられた訳ではないのに、一緒にいるともやもやしてくる。
ついこの間まで、仲よく話をしていた人なのに。
しかも、そんなことを感じてしまう人が……一人ではなく、何人もいる。
そして、気付いた。
扉から徐々に染み出している闇が、あまり心が強くない人間を自分の虜にしようとしているのだ。
黒いもやを漂わせている人達は、正気であって正気ではない。自分が闇に囚われかけていることにも、恐らく気付いていないはずだ。
そんな人達が銀の王女を捜したところで、ちゃんと見付かるはずがない。闇を封じてしまう力を持つ少女を、わざわざ連れ戻すとは思えなかった。
最初から捜すフリだけをしているのか、もしくは見付けても闇に目を濁らされてわからなくされているか、だ。
ここにはいなかった、と報告されれば、他の人達は違う場所を捜すことになる。本当ならすでに見付かっているのに、いなかったと思わされているのかも知れない。
だから「捜したが、いなかった」とされる場所をまず捜そう、というのがデューロウの考えだった。
「その……すごくいやーな話をするけど、その闇に囚われてる人が彼女の命を……ってことはないかな。闇にとって、レイリーンは自分を脅かす存在な訳だし」
遼太郎の質問に、デューロウは少し詰まった。しかし、それを否定する。
「まだ闇に、そこまで人をあやつれる力はないと思う。それだけの力を取り戻していたら、とっくに封印を破ってると思うんだ」
「なるほど。まだ望みは残ってる訳だ」
「けど、その闇は力を取り戻しつつあるんだろ。だったら、楽観してばかりもいられないよな。それに、デューロウが気付いてるってことに闇が気付いたら、次はお前もかなりやばいぞ。何かあったらって親切ごかしに言ってる奴が、実はもう闇の手先になってることだってある訳だし」
金の王子は部屋で待機しているように、と言われている。
デューロウが本当におとなしくしていれば危険は少ないかも知れないが、敵にすれば彼がどこにいるのかはっきりしている状態だ。何か仕掛けようと思えば、簡単にできる。
「ありがたくない可能性だな、それ。ということは、俺達はデューロウのボディガードも兼任するってことになるのか」
「ぼでぃ……?」
デューロウがわからない単語に、また首をかしげる。
「つまり、きみの身辺警護ってことだよ」
「普通のケンカなら、そう簡単に負ける気はしないけどさ……。闇にあやつられてる奴に変な術とか使われると、さすがにそれはまずいよなー」
その「結界を張る力」というのは、物理攻撃にも有効なのだろうか。だとしたら、例えば誠一郎が殴りかかろうとしても、完全に防御されてしまう。
「あのぉ、今更なんだけど……すごく基本的なこと、質問していいかしら」
琴音が、おずおずと手を上げた。
「闇って……何なの?」
さっきから、当たり前のように出てくる「闇」という言葉。悪しき力と言われても、いまいち抽象的でわからない。
「言われてみれば、何でもないように受け入れてたな。オレなりに勝手な想像してたけど……魔物の呼び名、とか?」
「ぼくも、よく知らないんだ」
「はぁ?」
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