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出会い

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「あ、コンビニ寄らない?」
 話題を変えたくて、パッとコンビニを指さした。さっき、青い車が入っていったコンビニ。たっちゃんは困った顔をして、すぐに頷いた。
「でも僕、何にも買えないよ?財布持って来てないから」
「じゃあ、おごってあげる」
「いいの?」
「いいの」
 あたしはリュックから財布を出して、お小遣いの残高をチェックする。二人ぶんの肉まんぐらいなら買える。
「行こ、たっちゃん」
 あたしは、たっちゃんの手を取り言った。たっちゃんは半分呆れたように、あたしの手を握り返す。知ってる。断れないんだよね、たっちゃん。分かってるのに勘違いしてるって、めちゃくちゃ痛いね。だけど、楽しいよ。今だけ。
 両開きの自動ドアが開いて、ピンポーンと、コンビニ特有の電子音が鳴る。あたしはたっちゃんと手を繋いだまま、コンビニへと足を踏み入れようとした。
 が、止まる。
頭が真っ白になった。多分、たっちゃんも。何も言えないのに何か言おうとして、あたしの喉は変な声を出す。
「え……あ?」
 宇野が、目の前にいる。手にレジ袋をさげて、今ちょうどコンビニを出るように。
 何で、ここに。部活は。しばらくして、頭の中が落ち着いてからは逆に疑問が溢れてきた。宇野は今、部活してるはず。学校出る前に見たもん。宇野が校庭で走ってたの。この寒いのに陸上の服着て、汗だくになって短距離のトラック走ってたの、見たもん。でも、目の前の宇野は寒さで頬と鼻の頭を赤くして、ダウンジャケットを着て耳当てまでしている。何か違う。どうなってる?また、頭が真っ白になってきた。向こうはきょとんと、立ちすくむあたしを見ている。
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