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本音

宇野の言ったこと

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「なに言ったの」
 できるだけトゲがないように気をつけて、尋ねた。宇野の目が泳いだ。
「ひどいことだよ。もう口にしたくない」
「言ってよ!」
 つい、声が大きくなってしまう。宇野はビクッとして、それから自分の口に右手の人差し指の腹を当てた。軽く噛むように、指を挟む唇をもぞもぞと動かす。その目は、あたしから完全にそらされていた。
「……キモいって」
 宇野の声は、その人差し指のせいで口の中にこもる。けれど、嫌にハッキリとあたしの中に届いた。宇野はまた言う。
「キモいって言ったんだ、森に。俺のこと好きだろ、って。オカマに好かれるなんてキモいからやめろって」
 あまり衝撃は受けない。正直、やっぱりそんなところか、なんて言葉が出てくる。
「本気で言ったの?」
「半分本気で、半分大嘘」
 宇野が歯で指を噛むのが見えた。
「森のこと、キモいなんて思ってねーもん。でも、俺を諦めてはほしかった」
「どうして」
「悟が、森のこと好きだって言ったから」
 その言葉に、一種の怒りの後、深い憐れみがわいてくる。哀れだ。たっちゃんにしたことは許せないけど、それ以上に宇野は哀れだ。
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